2-6-1 作戦会議

 この国では、13歳は一つの節目の年になる。


 初等学校を卒業し、早い者は見習いとして働き始める。勿論中等学校へ進む者も多いが、放課後や休日にアルバイトをすることが許されるのもこの歳からである。

 初等学校までは、お手伝いは構わないが、アルバイトは許可されていない。一人前とはいかないが、半人前として社会的に認められることになる。


 貴族においても同じことで、この歳、王宮で国王への謁見を賜わることになる。その後行われるパーティーが社交界デビューとなる。


 ということで、久方ぶりに王都にやって来た。今回は父を伴わず、お供はシリーだけである。


 前回来たのは大公令嬢の誕生パーティーだったので、実に三年ぶりだ。

 この三年間、攻撃力強化のため、身体を鍛え、魔法カードを開発する一方で、エリクサーを作るために、薬草を栽培し、調合の研究をしてきた。


 今回のパーティーでは、第二王子を避け、第一王子に近づかなければならない。

 これらは全て、将来、魔王になり、生き延びるため必要なことである。



 現在、王都別邸の私の部屋でシリーと作戦会議中である。

「いよいよ明日、王宮にのりこむにあたり、第二王子を避け、第一王子に近づくための作戦会議を始めます」

「随分と気合がお入りですね。お嬢様はなにか考えがお有りですか」


「まず第二王子には近づかない。近づいて来たら逃げる」

 私が自信満々に作戦を述べると、シリーがあきれたように返してくる。


「それは結構な作戦ですね。で、それでも近づいて来たり、間違って鉢合わせしたらどうなさるつもりですか」

「とりあえず睨みつけ、動きが止まったところで逃げるわ」

「はー。不敬罪に問われなければよろしいのですが」

 シリーが溜息とともに肩を落とします。


「不敬罪にならない程度に睨むわよ」

 私は胸を張ります。


「睨みつけるのは決定事項なのですね。第二王子についてはわかりました。それで、第一王子はどうされますか。そもそも、今回、第一王子は出席されるのですか」

 シリーは諦めたように次の問題に移ります。


「国王との謁見の席では、王族としてご隣席されるようね、パーティーには出席されない予定みたい」

「それでは、今回は、第一王子は諦めるということですか」


「いえ。第一王子と接触できる折角の機会だから、パーティーを抜け出し、王宮の中を探すわ」

「王宮内は広いですよ。それに勝手に捜し回って怒られますよ」


「王宮に鑑定魔法を掛けて、第一王子と見張りの居場所を把握するわ」

「もう鑑定というより、マップか索敵魔法ですね」

 シリーが呆れています。


「同じ知覚系だから似たようなものよ」

「それで、第一王子を見つけられたとして、お嬢様に第一王子が落とせるのですか」


「別に落とす必要はないわ。聖剣を貰える程度に仲良くなれればいいのよ」

「はー。さようですか。聖剣を下賜されるのは余程の仲だと思いますが」

 シリーの呆れ度が三ポイント上がった。


「そんな心配しなくても、私が熱い視線を送ればいちころよ」

「確かに、お嬢様の視線を浴びれば、ある意味イチコロになる可能性がありますが」

 シリーが失礼なことを言ってくる。確かに前世を含め彼氏などいたためしがないが、その気になれば私だって彼氏の一人や二人直ぐできるのよ。


「なによその言い草は、大丈夫よ、兎に角任せておいて」

「わかりました。では頑張ってください」


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