3-2-1 神のいない世界

 シリーのせいで、学院で嫌な思いをしたけれど、なんとか屋敷に帰ってきた。

 部屋で一服すると、気がかりだった、枢機卿の孫、ラン司祭のことを思い出す。


「ねえシリーちょっとお願いしたい事が有るのだけれど」

「何でしょうお嬢様」


「この世界の神様に連絡を取ることは出来る?」

「この世界に神はいません」

「えっ、神様が居ないの」

 私は驚いて目を丸くします。ぜんぜん丸くないって。言葉の綾です。


「前に加護について聞いたとき、この世界を作った神がいるようなこと言ってなかった」

「創造した神はいました。ですが、この世界は既に放置され、所謂メンテナンスも更新も行われていません。神が管理していないんです。ですからこの世界に神はいないんです」


「そんなはずは無いわ。司祭は神託を使って神の声を聞いてるのよ」

「それはプログラムです」

「プログラム?」


「その司祭が聞いているのは、神の声ではなくプログラムからの情報です」

 どういうこと?私は首を傾げます。


「人工知能からの声と言った方が分かりやすいでしょうか」


「その人工知能、この場合、神工知能かな?は神では無いということ?」

「そうです。神が作り、一見神の様に振る舞まっていても、作られた物は神ではありません。前世でも、人が作った人工知能は人ではなかったでしょ」

「まあ、そう言われればそうなのかな」

 あまり納得はいかないけれど、知りたいのはそこではないので話を進める。


「そうすると、そのプログラムやら人工知能と連絡を取ることは出来ない」

「現状の私では無理です。例えば神託のように、何らかの方法があるかも知れませんが、現段階で、私はその方法を知りません」

 んー。シリーでも知らないか。


「何か神に確かめなければならない事が有ったのですか」

「いや、大したことでは無いのだけれど、司祭はこの世界の事実をどこまで知っているのかと思って」

「そうですか」


 シリーが知らないなら仕方ないか。そういえば、ここを創造した神はどこで何をしているのだろう。

「シリー、ここを創造した神とは連絡取れないの」

「行方知らずです」

「え」

「どこにいるか分かりません」


 さいですか。

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