2-2-1 孤児

 洗礼を受けて1年、私は6歳になった。

 この1年間、鑑定に必要なMPが溜まるのを待つ間、地道にエンジェルポイントを集めていた。

 しかし成果は余り芳しくない。


 とりあえず、顔を合わせただけで怯えられることは少なくなり、人との会話も成立するようになってきた。

 しかし、屋敷の中で手伝いをしようとすれば、「お嬢様がそんなことをしてはいけません」と使用人たちに止められ、街に出ても幼女に出来る仕事など無いに等しい。


 そんな中で、数少ないエンジェルポイント獲得の機会が教会での奉仕活動である。

 教会の掃除や孤児院での小さい子の世話、時々は怖がられることも有るけど、それでも、少しずつであるが着実にポイントが増えていった。

 それにしても、魔眼の効果は抑えられているはずなのに、なぜ怖がられるのだろう。見た目が怖いのか、そうなのか、目だけに。


 冗談はさておき、他に問題がないわけではなかった。いや、むしろ大きな問題があった。

 いたのである。そう、攻略対象者の一人ラン=マホンが。


 この頃の彼は孤児の一人に過ぎなかった。そう、洗礼の時に会った男の子である。

 ゲーム上は枢機卿の孫となっているから、何れかの時点で養子にでもなるのだろう。もしかするとそれが、学院入学時に私が掴んでいる秘密なのかもしれない。


 兎に角、この子の性格が悪すぎる。陰険、根暗、S気質。それでいて大人には媚を売る。猫被りである。


 神と話しが出来ると言い張るから、せっせと溜めている貴重なMPを消費して鑑定してみた。その結果、彼が攻略対象キャラだと判明、魔法も『神託』を覚えていた。

 しかもこれ、支援系魔法なのだって。支援をする魔法でなく、支援を受ける魔法ってそれ有りなのかな。それに防御支援も覚えているみたいで、それで初めて会った時も魔眼に怯えず普通にしていたみたい。


 この信託だけれど、色々厄介そうである。こちらが転生者だってことがばれていた。神様、勝手に個人情報を広めないで下さい。

 ということで、彼とはできる限り関わらないことにした。

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