2-1-3 ゲーム概要

 この世界はゲームの中である。今後の対策のため私の知る情報をシリーと共有するため、ゲームの概要を書き出す。


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ゲーム名 ランドレースストーリー


ファルベス王立高等学院にヒロインが入学した時から始まり

卒業までの3年間でイケメンキャラを攻略する乙女ゲーム


ヒロインは、家名がランドレース、平民


攻略対象は10人

初期段階で、第一王子、第二王子、騎士団長の息子、枢機卿の孫、新任講師、大手商会の孫、公爵令息の7名が攻略可能

その後、他キャラの攻略状況により、隣国の王子、大公令嬢、保険医の3人が攻略可能となる


エンディングは25パターン、必ずこの何れかにたどり着く

各キャラ毎のハッピーエンドとバッドエンドで20パターン

他に、お友達エンド、旅立ちエンド、ハーレムエンド、征服エンド、破滅エンドの5パターン


攻略対象キャラと、学院入学時の公爵令嬢との関係

第一王子、政敵(第一王子派と第二王子派は対立している)

第二王子、婚約者

騎士団長の息子、騎士団長から護身術を一緒に習う

枢機卿の孫、公爵令嬢に秘密を握られている

新任講師、元家庭教師

大手商会の孫、ご用達商人

公爵令息、弟


隣国の王子、特に無し(隠しキャラ)

大公令嬢、ライバル

保険医、特に無し(相談、お助けキャラ)


そして何より重要なのは、ゲームキャラにはイベント強制力が働く

私は、ヒロインの邪魔をし、虐めるゲームキャラである

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「今の段階で分かっていることはこれくらい。何か意見が有るかしら」

 私は書き上げた紙をシリーに渡しながら尋ねる。

 シリーはその紙に丹念に目を通し尋ねてくる。


「攻略対象者の公爵令息って、お嬢様の弟ですか」

「そうね、レオンのことね」

「攻略対象者に大公令嬢がいるんですが、どういうことです」

「普通に考えれば百合エンドね」

「普通に考えれば、なんですか。私はそっち系の趣味は無いですよ」

「私もないわよ」

「しかし、どの攻略対象者を選んでも大抵悪役令嬢が絡んでくるんですね」

「そうね、学園入学時関係が無いのは、隣国の王子と保険医だけね」


「エンディングは必ず25パターンの何れかにたどり着くとのことですが、それぞれのエンディング時点でのお嬢様の状態を知ることはできませんか」

「えっ、それって未来予知ではないの」

「結果からみればその通りです。普通なら幾つにも分かれる未来を予測することは不可能ですが、今回は行き着く先が25に決まっています。その一つ一つの結末だけに集中してお嬢様が自分を鑑定すれば、その時のお嬢様の状況を知ることが出来るかもしれません」

「そう言われると出来そうな気がしてくるわね。試しにやってみるわ」

 私は自分に手を当て集中する。とりあえず第一王子のハッピーエンドでいいか。

「第一王子のハッピーエンドの時の私の状況『鑑定』・・・」

「お嬢様、どうでしたか」

 複雑な顔をする私にシリーが尋ねてくる。

「・・・MPが足りないみたい。鑑定自体は可能なようなのだけれど、ただ、情報を引き出すには恐ろしく沢山のMPが必要になるわ」

「どの位ですか」

「そうですね。1万MP位かな」

「1万ですか。凄いですね。でもそうすると、この周辺では1日200MP位自然回復しますから、1万MP溜めるのに50日、それを25回繰り返すと、1250日、3年以上掛かりますね」

「MPを早く溜める方法は無いの」

「MP回復薬を飲むか、魔素の多い所に行けば回復量は増えますが、MP回復薬は高価ですし不味いですよ。魔素の多い場所も限られますし」

 不味いのか。できればさけたいところだな。

「魔素の多い場所はどこなの」

「迷宮ですね。下層に行くほど魔素が濃くなります」

「ちょっと危険ね。他に無いの」

「後は、魔の森とか魔界でしょうか」

「どこも危険じゃない」

「気長に自然回復を待つしか無いようですね。それまでは地道に奉仕活動でもしてエンジェルポイントを溜めていきましょう」


「それで、エンディングでの状況を知ってどうするの」

「一番お嬢様の状態が良いエンディングに、悪事を働かずに進める様に裏工作します」

「そんなうまくいくかしら」

「そうですね。予めヒロインを鑑定できれば、攻略情報を引き出せるかもしれません」

「確かにそれは有効そうね。だけどヒロインが今どこにいるか分からないわよ」

「ヒロインについて分かっているのは家名と身分だけですか」

「貴族なら家名だけでも大分絞り込めたと思うけど」

「人手に頼ってでも探すしかありませんね。幸い時間はまだたっぷりあります」

「そうね。少しずつでも進めていきましょう」


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