「act04 戦いは世界中で」
——とある山——
山にある洞窟の入口にて顔の上半分を包帯で覆い隠している男が立っていた。その眼前には数十もの厄災の子が展開している。
「ふん、ここにも来たか。よほどコレの向こうに行きたいらしいな。ま、当初の目的だったからそうなんだろうが」
男は包帯を取り、その瞳に標的を捉える。
「だがココは通さん。今はまだ時ではないからな。是が非でも通りたいというのであれば死力を尽くしてこい! 閃光のマキナと呼ばれた男が貴様らを屠るであろう!」
——とある山の麓にある町——
特徴的な禍々しい紫毒色の瞳を持つ少年と薄ピンクの長髪を持つ少女は町のはずれにて歩みを進める厄災の子を一つ一つ丁寧に消滅させている。町から援軍が来ることはない。彼らは危機が迫っているのを知らないからだ。町にいる人間が厄災の子の接近に気付かずにいつもと変わらない平穏な日々を過ごせているのは二人の戦士のおかげである。
「——早くしないと厄災戦に間に合わない。これ以上この町に捨てられたキミにはここを守るメリットはないはずだけど」
「そうっだけどっ! だけど! それでも私が生まれた場所で、お姉ちゃん達が帰ってくる場所なの。乙女心が理解できてないなぁ。大丈夫、あらかた安全を確認したらすぐに行くから。先に行ってていいよ」
「乙女心どころか人間の心もわからないけどね。……はあ。キミが居てくれないとボクが困る。手伝うから早く片付けよう」
「——っ。ありがとう。やっぱり良い人だねっ!」
「良い人ではないし、仮にそうだとしてもキミには及ばないよ」
——ウルティーナ村——
「……ここか。妹が依頼で来た村は」
一人の青年が腐臭が漂うこの捨てられた村へと向かうとそこには——
「何か手がかりがあるかもしれないと来てみれば厄災の子ってヤツか、これ。鬼剣の仕事を邪魔をするやつは何であれ、消させてもらうぞ!」
——大都市サランバーナ——
「根性だ! 根性根性! 厄災の子、なんの因縁か知らんがこの世界でも戦うことになるとは。この町は俺が守る! 根性のないやつらがここを通れると思うなよォ!」
女熾天使いと戦った時に負った傷はとうの昔に完治している。正直に言えばここでなく、厄災獣と戦いたかったが、自分の中の譲れないもののために青年はこの都市を守護する。
「手の届く範囲にいる人はなんであれ必ず助ける! そして俺一人の手ならこの都市全土には手が届く! 必ず! 助ける! 本丸で戦っている根性のあるやつらが心置きなく戦えるように! これだって立派に厄災戦だぁぁ!! 根性!」
——名の無い村——
その村にはまともに戦える人間は数少ない。そんな中孤立無援、たった一人で戦う母の姿があった。
「あぁもう、数にキリがない! 流石に私一人じゃ全部捌くのは辛いんだゾ……」
——ってやばっ!? いつの間に後ろに敵が——
カナメと少しだけでも渡り合えた実力者だったが、それは
だがそれは先程も述べた通り
「——え? お、おかあさん……?」
「わ、私だって、この村を守るわ!」
孤立無援? いいや、違う。彼女の戦っている姿に心を動かされた人が一人、また一人と立ち上がる。個々の力は小さくとも、それらを合わせれば大きな力にだって対抗できるはず。
「——みんな……。っ、リティーが守ってくれたこの村を今度は私達が守る番よ!」
——アトランティス——
「——素直に戻らなくって正解だったかもしれないわね、これ。この町、観光目的の一般人ばかりだから厄災の子を想定した戦力なんてないのも当然といえば当然よねぇ」
ある日突然ガイナ達の前から姿を消したラスティーナは蠱惑の表情で厄災の子を見つめる。曰く彼女は愛の持たない獣に対抗する術を持たない。故に厄災戦に参加できないと言っていたが、少し事情が変わったらしい。
「愛を持たない獣、じゃなくって愛を忘れた獣だったのね。まあ、私にとってはあまり変わらないけれど」
本来ならば彼女はこの本軸には関わることのない人物。それが何の因果かここまで残るに至った。
「それもこれも、あの人のせいね。ったくもう……」
などとため息を一つついてはみたものの、彼女は自分が思っているより楽しそうにしていることに気付いてはいない。
「私はあの時、彼の力を奪った子の力を少し
彼女を取り囲む厄災の子は赤い炎に飲まれると灰となり風に消える。
「『
ここだけではない。世界中で厄災の子が出現しているが、それに対抗しようと皆が戦っている。なにも前線に立つことだけが戦うことではない。物資の補給や避難指示、それぞれがそれぞれのできることを生きるために全力で行動している。
「だから余計なことに思考を回すな。ソイツらのことを思うってンならさっさとそこのデカブツを倒してこいよ
カナメはそうだけ言うと瞬きの間に姿を消す。おそらく彼もここではないどこかで戦う人間なのだろう。
と今まで動きの無かった獣が吠える飛翔する。逃げるのか、とも思ったがそんなことはないと次の瞬間に思い知らされた。
「————おい、ありゃあ、なんだ?」
「アタシに聞かナイでヨ……!」
それは——
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