第四幕「熾天使いの苦悩」

「act01 大都市サランバーナ」

 ウルティーナ村での一件から二週間と少し経った頃、ガイナ、ガブリエラ、エドガー、ツヴァイスの四人はようやくサランバーナという大型先進都市へと辿り着いた。大型先進都市だけあって人が多く賑わっている。


 この町はセキドナ・バーニアスという初老の男が統治している。その男は魔法に心得があるらしく、外から魔法使いを集めては日夜人々の生活が豊かになるようにと道具の研究などに自ら勤しんでいると聞いたことがある。


 そのおかげかかなり人々からの評判は非常に高い、とのガブリエラからの情報。


 一行は着くなり魔法協会へと向かい熾天使いの義務でもある活動報告書を提出、休憩もかねてレストランで食事をとっているところだ。


「さて、報告書は出したしこれからどうする。初めの目的通り図書館にでも向かうか?」

「アナタは出してないでしょうが」

「オレは行方不明扱いにしておいた方が都合が良いのさ」

「図書館か。俺は文字をあんまり読めないから今回は出番なさそうだな」

「じゃあ私と一緒に勉強がてら資料を探そ。外の世界に出たならやっぱり文字くらい読めるようにはなっておかないとね」


 バツが悪そうなガイナに顔を輝かせながらそう言うツヴァイス。青春だね、とニヤニヤしているのはガブリエラで、そんなことには目もくれずテーブルの上の肉にフォークをたてるエドガー。


 しっかし、


「元々賑やかな町だったけれど、今日は一段と人が多い気がするわね。何かあるのかしら」

「おっと嬢ちゃん知らねぇのかい。今日は一年に一回、一週間開かれる感謝祭だよ」


 声のする方を向けばそこにはエドガーより少し年上に見える男がグラスを片手に立っていた。

 あれだよあれ、と指さされた先にあったのは一枚の紙。


 男の言った感謝祭の内容はこうだ。


 一年に一度、都市の益々の発展を祈って感謝祭が行われる。その中でも一番大きなイベントが毎年行われる武闘大会。最初にクイズ形式の予選があり、本格的な試合形式の決勝トーナメントが行われる。


 町に住む人だけでなく外からの旅人なども参加できるとあって毎年かなり盛り上がるらしい。


 ふと、ガブリエラが気になったのはその武闘大会での報酬。セキドナ・バーニアスが望みを叶えてくれるらしい。勿論無茶なものは無理としてもできる限りその望みが果たされるよう善処してくれるのだという。


 これはいいかもしれないと思った。何故なら熾天使いといえど情報を集めるのには少々骨が折れる。そこで権力者の助けを得られるなら望むものも案外早く手に入るかもしれないと思ったのだ。


 それに他のメンバーの息抜きには丁度良い。これに出るとなれば否が応でも休息を取らざるを得ないからだ。それは何故か。


「俺はクイズがまずダメだ。知識がなさすぎる」

「ガイナちゃんに同じく」

「オレは無暗に目立ちたくねぇ。これでも行方不明を謳っている身だからな」


 これである。以上の理由により出るならばガブリエラ一人になることはわかっていた。


 兎に角、今は少しでも多くの情報が欲しい。このチャンスを逃す手はないだろう。


 ――決まり、でいいかしらね。


「よし、ワタシが出て必ず情報を掴んでくるから大船に乗ったつもりで待ってらっしゃい!」

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