イエイヌ逃亡記録〜 from ジャパリパーク 〜
はいいろわんこ
ジャパリパーク脱出編
逃亡のはじまり~ at パークセントラル ~
研究所にて
こうして全国各地から雑種犬の体毛サンプルが送られて来た。
犬のフレンズを作る行程は非常に単純で、サンドスターを犬の体毛に当てる。これだけだ。
フレンズ化した体毛を用いて実験を行い、実験終了後にはサンドスター・ローにサンドスターを吸収させて体毛に戻す。簡単な作業だ。
今回の雑種犬の実験ではフレンズ化後、計測し、写真をとってすぐ体毛に戻す。測定値と写真を解析し、もっとも展示品としてふさわしい「イエイヌ」を見つけるのが目的である。
この実験が始まり1ヵ月。
この日、ジャパリパークの所長がイエイヌ研究グループに見学することになっていた。
白衣の研究者が二人で話している。
「どうやって研究内容をみせる?」
「普段やっているままで良いんじゃないの?」
「よくわからん雑種犬のフレンズばかり見せられても、所長は困るんじゃないか?純血のフレンズと見比べてもらおう。」
「わかった。秋田犬とゴールデンレトリバーを飼育場から出して、検体番号814から816をフレンズ化させておくわ。」
普段はすぐに体毛に戻される雑種犬フレンズ達もこの日は半日フレンズの姿を維持される予定である。
一通りの検査と測定を終えた雑種犬フレンズたちは檻の中に入れられた。
フレンズ達が3匹ともども薄暗い檻の中でじっとしていると、ブロンドの髪をなびかせた大柄のフレンズと、栗色の髪で短髪のフレンズが入ってきた。
大柄の方は入るや否や挨拶をしてきた。
「みんなこんにちは。今日はよろしくね。」
頭を垂れてお辞儀をする様子は凛として美しい。
「あなたたちお名前は?」
「わかりません。でも、白い人から815番て呼ばれたので、たぶん815番なんだと思います。」
白髪の雑種犬フレンズは落ち着いて答えた。
「私も814番って呼ばれたから814番かな。」
茶髪の雑種犬フレンズはそれに続けて適当に答えた。
「そうなの。私はゴールデンレトリバー。レトリバーって呼んでね。こっちは秋田犬よ。よろしくね。」
レトリバーは笑顔で自己紹介した。
秋田犬と呼ばれたフレンズはムスッとした顔で2匹の新入りに軽く会釈をした。レトリバーは2匹の他にもう一匹フレンズが、檻の端で縮こまっていることに気づき、優しく声をかけた。
「あなたは?名前は?」
「あの...はいいろ...です...」
その雑種犬フレンズは力なく答えた。
「うそでしょ!あんたは816番て呼ばれたから816番でしょ!」
814番は言った。
「...違います!はいいろって...呼ばれていたんです!ここに来る前は...確かに!!」
「ここに来る前って!私たちはここで産まれたんじゃない!」
「そんなことないです!!私には確かに...帰るおうちがあるんです!!」
814番と816番のケンカが始まりそうだ。温厚なレトリバーはすぐさま仲裁に入る。
「まあまあ、フレンズ化する前の記憶が残っている子がいるって話を聞いたことある
し、はいいろちゃんもそんな感じなんじゃないかな?はいいろちゃんのおうちってどんななのかな?私、興味あるな。」
諭された2匹は平静を取り戻した。
はいいろはちょっとうつむいて、レトリバーの質問に答えようとした。
「あの...なんか茶色くて...大きくて...えっと...」
はいいろは言葉を詰まらせてしまった。
814番はこれを見逃さなかった。
「ほらー!答えられないんじゃない!やっぱりあなたは816番なのよ!」
「ち...違います!私ははいいろなんです!!」
そのとき、先ほどまでつまらなそうに床を見ていた秋田犬が突然声をあげた。
「あ!所長が来た!!」
秋田犬は立ち上がると、満面の笑みでしっぽを大きく振らしながら、檻の近くに来た人影に走りよって行った。
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