第201話 同じ想い
「シェリーさん」
「リアーヌ王女……いかが致しましたか?」
いつものように朝の鍛錬を終えると、近寄ってくるのはリアーヌだった。その麗しい容姿は同じ女性であっても見惚れてしまうほどだ。
そして美しい髪を後ろに軽く流しながら、リアーヌはシェリーに話しかけに向かう。
「少し、お時間ありますか?」
「はい。今日は特に任務もありませんので」
一応リアーヌはそう尋ねるが、彼女はシェリーに任務がないことはすでに把握していた。
二人は一緒に朝食でも取ろうかという話になり、そのまま食堂へと向かう。
「それで、私に何か用でしょうか?」
周りには他の軍人もいるということで、敬語で話しかける。リアーヌはにこりと微笑むと、会話を始める。
「最近、ものすごく頑張っているようですね」
「それは、そうですね。私には果たすべき使命がありますから」
果たすべき使命。
それは復讐である。
だがリアーヌは決してその復讐を止めることはない。むしろ自分に力があれば、自身の手でベルを殺した魔人を殺してしまいたい……そう思うほどには、彼女にもまた明確な殺意が宿っている。
一見すれば麗しい一国の王女に見える。だがしかし、彼女はただ美しいだけではない。もうこの世界の醜さや残酷さも、嫌になるというほど味わっているのだから。
「……ベルの件ですが、私ははっきり言って心配しています」
「私には先生の復讐は果たせないと?」
「いえ。むしろ──」
この場の雰囲気が張り詰めたものになる。シェリーも意識しているわけではないが、間違いなく殺気が漏れていた。
その殺気に当てられながらも、リアーヌはその双眸でじっと彼女のことを射抜く。
「私が心配しているのは、シェリーさんが先に潰れてしまうかもしれない……ということです」
「……無理をしすぎでしょうか?」
「側から見ている限りは、そう見えますね。昔のベルを思い出します」
「先生を?」
「はい」
その話題をリアーヌの方から出してくるのは意外だった。シェリーはまだベルのことに関しては整理がついていないと思っていたからだ。
「ベルはずっとそうでした。私のためにだけではなく、人類のためにいつも努力に努力を重ねていました。きっと彼女が立ち止まるのは死ぬ時かもしれない。そんな予感もありましたが……それは現実となってしまいました」
「それは……」
「努力しているシェリーさんに文句を言いたいわけではないのです」
そういうとリアーヌはギュッとシェリーの手を優しく包み込むのだった。
「ただ私は、大切な人をまた失いたくないのです。シェリーさん、あなたが帰ってくるのを私は待っています」
「……リアーヌ王女」
目を見開く。
周囲から距離を取られ、そのことはどうでもいいと思っていた。ただその復讐を果たすことができれば、この命すら惜しくはない……そう思っていたシェリーの危うさをリアーヌは分かっていたのだ。
「分かりました。絶対に帰ってきます」
「はい。あなたなら成し遂げることができると、信じていますから」
◇
最後にお知らせがあります。
今回、本作【追放された落ちこぼれ、辺境で生き抜いてSランク対魔師に成り上がる】(旧タイトル:黄昏を切り裂く光になる〜追放された無能な少年は世界最強の対魔師に至る〜)がホビージャパン様の【HJ文庫】より、9月1日に書籍版第1巻が発売決定しました!
発売日は9月1日になります。是非とも、書籍版もよろしくお願いしますー!
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