第199話 久しぶりの一人の時間


 あれから僕は休日を貰うことになった。といってもそれは、長期休暇ではなく二日だけだ。でも流石にここ最近は黄昏に出たりと、休む暇などなかった。


 厳密に言えば、僕は黄昏に追放されてしまってから忙殺され続けていた。しかし今は、僕たちの尽力もあってかかなり落ち着いたように思える。


 未だに犠牲になった人のことは脳裏に焼き付いている。


 でもだからこそ、きっと進んでいけるのだろう。


「ふぅ……」


 外に向かう。第一結界都市。復興はかなり進んでいて、こうして街の中央へとやってくるのは本当に久しぶりだった。


 今日は休日ということで街もそれなりに活気付いていた。僕は今はある意味有名な存在になってしまっているので、帽子を被って外に出てきている。これだけでもかなり違うようで、声をかけられることは今のところはない。


「ありがとうございますー!」

「いえ。こちらこそ、どうもです」


 露天で食事を買う。今回選択したのは、サンドイッチだった。それも持って僕は公園へとやってくる。この結界都市の中にある小さな公園。遊具などは特になく、芝生とベンチがそこにあるだけ。


 でも僕はそんなシンプルな場所が好きだった。


 一人で空を見上げながら、僕はサンドイッチを食べる。


「うん。美味しいや」


 タマゴサンドを選んだがそれはやはり、とても美味しいものだった。こうして外でゆっくりと食事を取ることは本当に久しぶりだったので心が妙に落ち着くような気がした。


「……」


 サンドイッチを食べ終わると、ただぼーっと空を見上げる。今日もいつものように、黄昏に染まり切っている空だった。この空の果てには、本当に青空などあるのだろうか。


 僕たちの進む先には、求めるべき青い世界が待っているのだろうか。


 と、ふとそんなことを考えてしまう。青空を求めているといっても、それは伝聞でしか知らない情報だ。


 真偽の程を確かめる手段などは、僕らにはない。でもきっとだからこそ、そんな目標があるからこそ進めるのかもしれない。


「戻ろうかな」


 立ち上がる。ぐっと背筋を伸ばして、僕は公園を後にする。その後は本を一冊だけ購入して自室へと戻っていった。


 ほとんど誰とも会うことなく一日を終えたのは何気に初めてのような気がする。


 今日買った本は特に理由もなく目の前にあるものを選んでみた。読んでみるとそれはファンタジーものだった。嫌いではないのでスルスルと読み進めていく。そして気がつけば、一冊の本をぶっ通しで読んでしまっていた。


「……寝ようか」


 本を読み終わったので、明かりを落とす。明日からきっとまた別の任務に取り組むことになるのだろう。いつも通り、淡々とこなしていけばいい。それが僕ら対魔師に課せられた使命なのだから。


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