第188話 謁見の時


「揃いましたね。特級対魔師の方々」


 女王の前に並ぶ特級対魔師。


 僕らはその場で全員が膝をつき、女王との謁見を果たす。今までと変わりなく、その姿はこの世のものとは思えなかった。


 それはまるで誰かが人為的に作り出したかのような美。


 精巧な顔の作りに、バランスが整っている四肢。その全てが、完璧と形容するしかないのが僕たちの女王だった。


 そして、僕らは新しい任務を課されるということでこの場に召集されていた。


「それでは、リアーヌより説明がございます」


 どうやら今回は、リアーヌ王女から何か説明があるようだった。


「顔をあげてください。まずは、現状を説明いたしましょう」


 そこから先の話は、おおよそ知っているものばかりだった。しかし、現状を改めて整理するという意味ではとてもいい機会だった。


 取り戻した黄昏の地は、完全にこちらの領地として運営できているらしい。第一結界としのように栄えることはないが、対魔師が常駐してその地を守っている。


 しかしそれは、危険区域のレベルでいえばレベル5まではの話だ。


 つまり、ここから先……課される任務とは──。


「単刀直入にいいます。私たちは、黄昏危険区域レベル5の先に進行します」


 瞬間。この場に緊張感が走る。


 僕らは直近の戦いで多くのものを失った。それは、特級対魔師であるベルさんだけでなく、他の対魔師の人たちも失っている。


 だが、現状維持をするのではなく、進行する。


 その意味を全員が理解していた。


「異論のある者は?」


 女王がそのように言葉にするが、誰も声をあげない。


 分かっているのだ。ここまで来てしまえば、もはや止まることなど叶わないのだ。


 僕らが立ち止まっていいうのは、この世界に青空を取り戻したその瞬間。


 それまでは、仲間たちの死を、意志を背負って進み続けないとけないのだ。


「どうやらいないようですね。リアーヌ。次の作戦について説明を」

「はい」


 そうして告げられる任務の内容。


 まずは黄昏危険区域への特級対魔師の派遣。今回選ばれたのは、僕とシェリー、それにギルさんの三人だった。


 特級対魔師の上位三人を抜擢したその采配は、本気度合いが窺える。


 その一方で、僕はこのことを予期していた。黄昏危険区域レベル5より先は、おそらく僕しか行ったことがないだろう。


 そして、それをサポートするのは次点である特級対魔師。正直いって、レベル5以降は魔物のレベルが跳ね上がる。


 それこそ、本当に同じ魔物なのかと思えないほどに。


 僕はそのことをレポートにして伝えているが、流石に上層部者そのことを理解している様子だ。


「それでは、検討を祈ります。この世界に、青空を取り戻しましょう」


 短い時間だったが、今回の召集は終了。


 こうして僕たちは、新しい任務のために再び黄昏に向かうことになるのだった。

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