第168話 結局のところ


「で、ユリア。残りはどうするの?」

「うーん……どうしましょうか? 先輩はどう思います」


 現在は三人で食堂にいる形となっている。


 僕と、先輩と、キャサリンの三人で席についている。


「特級対魔師を連れて行くのもね……ちょっとこれ以上は戦力の偏りが出るから……それに、ユリアと私がいればバランスはいいはずだしね」

「まぁ……そうですね」

「ということは、残りは特級対魔師以外から選んだほうがいいと思うけど……でもこういうのは普通上が考えるもんじゃない?」

「でもリアーヌ王女がそっちでも探してくれっていってましたから。一応動いている感じですね」

「なるほど。まぁいいわ。とりあえずリアーヌ所に行きましょう」

「え……いいんですか?」

「いいわよ。ちょっと話もあるし」


 ということで僕たち三人はリアーヌ王女の元に改めて向かう。


 現在彼女は、先ほどと同じ会議室にいるらしいという話を聞いた。そうして三人で改めて歩いていると、キャサリンが僕の顔をじっと見つめてくる。


「……どうかした?」

「いや別に。でもユリアって、なんだか不思議ね」

「……? えっとその……何が……?」

「まぁわからないと思うからいいけどね〜」

「そう?」


 とそんなことを言いながら、僕らは会議室に戻ってきた。


「あぁ。やっぱりそうなりましたね」

「あんた……分かってたのね」

「ふふ……まぁ、お節介でしたか?」

「いや別に……まぁいいけどさ……ちょっと見透かされたようでムカつくけど。ということは、そうなのね?」

「えぇ。実は初めから人選は決まっていました」


 先輩とリアーヌ王女がそう話し始めて、僕は最後に聞いた言葉にポカンとなってしまう。


「え? その……僕に探して来いっていうのは……?」

「実は初めからこうなると分かっていたのです。きっとエイラを連れてくるって……」

「ということは……」

「はい。ここにいる四人で向かうことになります」


 にこりと微笑むリアーヌ王女は、何も悪びれることなく、これが当然だと言わんばかりにそういった。


 えっと……僕の苦労は?


 いや実際にほぼ苦労はしていないが……一体どういうことだったのだろう……。


「まぁメンバーに関してはいいけど……あんたも行っていいの?」

「まぁ指揮官というか、話せる人間はいると思いますので。お二人は実際には私の護衛という意味合いが強いですね。実際にサキュバスの国では、私が交渉などをしますので、心配しなくても大丈夫ですよ」

「……それは助かるけど、王族が出てもいいの?」

「私はまぁ……もう色々とこちらに関わっていますから。それに、ベルのためにも……私はできることはなんでもやりたいと、そう思うのです」



 その言葉を聞いて、僕は自分の胸が熱くなるのを感じた。


 ベルさんが亡くなってから、まだ時間はそれほど経っていない。人の死は、時間がいつか癒してくれる。初めは心を抉られるように残る傷も、やがて風化して行き……思い出となって行く。


 でも僕らの心はまだ、完全には言えていない。


 そんな中でも、リアーヌ王女は……一番辛いはずなのに、こうして気丈に振る舞い、前に進もうとしている。


 僕はあの日、自分が彼女にしたことを思い出した。


 そしてリアーヌ王女が自分を見失うことなく、前に進むことができていると知って……とても嬉しかった。


「では、私たちで向かうことにします。出発は明後日。各自、準備をしていてください」

「「了解!」」



 こうして、僕ら三人はキャサリンを連れてサキュバスの国へと向かうことになるのだった。

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