第165話 情報整理
「……ねぇ」
「なにキャサリン」
「あんたって苦労してるのね」
「え? なんのこと?」
「わからないのならいいのよ……」
と、なぜかキャサリンに同情されたまま僕らは先輩の後ろをついていく。今は少しだけ先輩とは距離が離れているので、僕たちの会話も聞こえないだろう。
というか、先輩が妙に早足で進むので僕たちはそれに追いつくので精一杯だった。
そして僕らは基地内の会議室にたどり着くと、そのまま先輩は怒りを露わにしながらどこかへ行ってしまった。
「エイラって怒ると怖いのね……」
「まぁそうだね。僕も今後は怒らせないようにするよ」
「それが懸命ね……」
「うん……」
と、二人でそう誓うと……そのまま中に入っていく。
「失礼します」
「あぁ。二人ともよく来てくれましたね」
室内に入ると、眼鏡をかけて書類を整理しているリアーヌ王女がそこにいた。今日は珍しく眼鏡をかけている上に、髪の毛をアップにまとめている。いつもと違って知的な雰囲気が前面に押し出されていて、とても美しいと思った。
「二人とも席についてください」
「失礼します」
「……座ればいいのね。わかったわ」
二人で隣り合わせで席に着く。すると目の前に着席したリアーヌ王女が書類をめくりながら、話を始める。
「さて、お話を始めましょう。キャサリンさんの処遇ですが……サキュバスの国へと返しても構いません」
「え!? 本当に!!?」
ガタッとその場から立ち上がるキャサリン。よほど興奮しているのか、ちらっと横顔を見るとほおが赤くなっているのがよく分かった。
「はい。でも、条件があります」
「じょ、条件……?」
「視察ということで、こちらから人間を派遣します」
「人間がうちの国に来るのか……?」
「えぇ。まずいですか?」
「うーん……別に敵対していないし、いいと思うけどなぁ……」
「どうかしましたか?」
「きっと私は怒られるだろうなぁ……」
「なるほど。それはまぁ……仕方ないですね」
「え……!? ふぉ、フォローとかないのか?」
「ないですね。そちらはご自分でどうにかしてください」
「ふえぇ……」
まぁこればかりは仕方ないよね。
というよりも視察か……サキュバスの国に行くのはいいだろう。でもこの場に僕が呼ばれたということは……つまり……。
「それではユリアさん。あなたが主導になって、かの国に行ってもらいます」
「まぁ……そうなるとは思っていましたが……いいんですか? 男性だと問題がるのでは……」
「そこはまぁ……あなたの干渉力なら大丈夫でしょう。キャサリンの魔法も聞かないようですし。しかし派遣するメンバーはあなた以外は女性で構成したほうがいいでしょうね」
「なるほど」
「では、ユリアさんが中心になってメンバーを選んでください」
「え!? 誰でもいいんですか……?」
「あまり特級対魔師を連れて行かれると困りますが……そこはお任せします。ただこちらでも一応当たってはみるので」
「りょ、了解しました……」
ということで、僕はメンバーを集めてサキュバスの国へと向かうことになるのだった。
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