第166話 仲間を集めよう


「さて……どうしたものか……」


 僕の一存で集めていいという話だったが……。


 正直って、僕が集めるという話自体大丈夫なのか……? と思ったりもする。でもリアーヌ王女も探してくれるというが……。


「うーん……」

「どうするの、ユリア?」


 キャサリンが僕の方を見上げて、そう尋ねてくる。


 今は外に出て来ているので、彼女はフードを被っている状態だ。


「どうしようか……」

「いや私に聞かないでよ」

「でもなぁ……」

「エイラはどうなの?」

「先輩怒ってたじゃん」

「でも誘わないともっと怒るかもよ?」

「え……なんで?」

「はぁ……」


 大きなため息をつくと、キャサリンは僕に向かってこう告げた。


「いい!? 女っていうのはね……構って欲しい生き物なのよ!」

「それって種族を超えてそうなの? 人間とサキュバスだと違いがあったりしない?」

「女は全て女よ。私にはよーくわかるの。エイラがやきもきするのも……よーくね」

「す……すごいじゃないか! ぜ、是非とも僕にそれを教えて欲しい……!」



 ぶっちゃけ、いつもはアホそうに思えるキャサリンも今は輝いて見えた。やはり、同じ女性という共通点はあるからか……彼女は饒舌に語る。それに今よりも昔は種族が違っても恋に落ちて、子どもを作っていたこともある。その中には、人間とサキュバスの掛け合いもあったはずだ。


 だからこそ……キャサリンの主張には僕も頷くところがあった。


 幼いとはいえ、彼女もまた女性の一人。僕よりもきっと、先輩の気持ちはわかっているに違いない。



「まぁ……これは当人の問題だから詳しくは言えないけど……絶対にエイラは誘うべきねっ!」

「そ、そういうもの?」

「えぇ。女性が構わないでって言ったり、態度でしますのは、構って欲しいアピールなのよ。天邪鬼あまのじゃくよ、天邪鬼」

「な……なるほど!!」


 

 確かに先輩は口ではそう言いつつも、本心ではそう思っていなことがある。今回もそのパターンだったのか。


 危うく僕は間違えるところだった。


 さすがはキャサリン!


「ありがとうキャサリン。とりあえず、先輩を誘うことにするよ」

「それがいいわ」



 ということで、基地内に入る先輩を探して入ると……ちょうど食堂にその姿を見つけた。


 一人でつまらなさそうに食事をとっているが、僕は意を決して話しかけることにした。



「先輩」

「……なによ、ユリア」



 間違いなく怒っている。


 それはこの態度というか……声でわかってしまう。しかしここで引くわけにはいかない! キャサリンも応援してくれているし!



「その……実はキャサリンの件ですけど……サキュバスの国に行くことになりまして……」

「ふーん。で?」

「その先輩も一緒にどうですか? 特級対魔師はあまり派遣できませんが、二人程度なら……」

「なんで私なの?」

「先輩は能力も高いですし、それにやはりサキュバスの国ならば女性がいた方がいいでしょう」

「それだけ?」

「いえその……先輩は頼りになるというか。僕も知り合いの女性の中では一番仲がいいと思うので!」



 キャサリンに言われたセリフをなんとか自然に言ってみる。「いいこと、相手が一番ということを伝えるのよ。くれぐれも自然にね!」とのことだった。



「ふ……ふーん?」



 先輩はそう言いながら、髪の毛をくるくると指先に巻きつける。


 こ、この兆候は……機嫌がいい時のそれだ!!


 さらに僕はたたみ掛けることにした。



「先輩じゃないと、ダメなんです。僕には先輩が必要ですっ!」

「……そ、そこまでいうなら……付き合ってもいいけど? 特別よ、特別?」

「はいっ! よろしくお願いします!」


 頭を下げる際に、チラッとキャサリンの方を見るとグッと親指を立てていた。僕も先輩に見えないように、グッと同じように返す。


 こうしてとりあえず、先輩を確保することに成功するのだった。


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