2.同一人物。
「本当、ごめんなさい。結構デカイボリュームで話したんですけど、反応なくて、叩いちゃいました。」
あ。
そう言われて、初めて叩かれたことを知った。
泣くし、打たれるし、なんなんだ今日。
「僕もぶっていいですよ。」
音っつぁんが、右頰を出してきた。
「あ、いや、その、、、ま、トリップしてた私が悪いので、大丈夫です。」
「ああ、そうですか。」
あれ、なんか、寂しそう。
えむ?でも、えす?
よく聞く。究極のえむ。は、究極のえす。だと。
音っつぁんは、アルティメットなのかな?
「変なことしゃべっちゃいましたね。じゃあ、占いますか。」
完全に、趣旨を忘れていた。
そうそう。So so.
「まず、データを入力しますね。」
そうやって、音っつぁんら、スマホに手をかけた。
あの、最初に作業していた、外付けキーボード付きのパソコンは、なんなんだろう?あれ使えばいいのに。
「ここ、Wi-Fi使えないってわけじゃないんですが、慣れ親しんだ、アプリじゃないと。」
へー。コンパクト!
「出ました!奈々さんは、エロいし、プライドが高い。あと、賢いです。」
うぐっ。
えぐり取られた事はないけど、実際内臓をそうした時、こんな感覚に、なるのかな?
進一郎とは、本当に、セックスばかりしていた。
しているピークなんて、週8でヤッていた。
行きのホテル、帰りのホテル。
世界広しと言えども、ラブホテルをハシゴする、カップルは、そういないだろう。
ただ、それ以上に、彼が求めてきて、、、、。
という、婚前処女の妄想トリップを、頬を打たれる前に、中止した。
プライドは、ガッチガチのガチで高い。
下手すれば、エベレストより、高い。
私は、テストで、100点を、とっても、先生が、
B 子ちゃん!教科書に載ってない解法だね!と、
余分に5点追加し、105点を取ったのを、2秒前のことのように覚えている。
B子は、Bだけあり、ボーっとしている。
ただ、ブスではない。私には負けるがな!綺麗さは!
私と、B子が違う点は、私は、私、という存在が、絶対的にある。と、思い込んでいるが、B子は、そうじゃなかった。
「奈々ぁ。奈々がいるから、うちがいるのなぁ。」
よく、そう言っていた。
だんだんとわかってきたが、B子は、相対的なのだ。
私は、絶対的な私。が、存在し、それを見て聞いて、複数のトライブ、すなわち、部族を選びとっている。と。考え、生きていた。38年。
逆だ。
B子は、相対的なB子、が、複数の部族、トライブを取捨選択をした結果、たまたまB子という肉体を借り、集まっている。38年。
「うちなぁ。奈々がいるから、うちがいるんやよ。」
中学の時から、ずっと言っている。
最初は、嬉しかったが、だんだんと怖くなっていった。
だって、B子が、いようがいまいが、私は私。絶対的に存在する。下手したら、B子は、いなかったのかもしれない。
怖いなあ。
B子が、B子たらしめるものは、私の中にある、悔しさ、だけかもしれない。
一度だけ、B子に点数で勝った時がある。
B子は、裏面までテストが続いていることに気づかず、開始10分で寝ていた。
私は、裏面の立方体を斜めに切り取った図形の証明問題から、解いていった。その方が点数を多く稼げる。一から解くやつはバカがやること。
ただ、先生は、イジワルで、35人いるクラスで、解ける生徒は、私とB子だけしかいない。ということを承知で立方体を斜めに切り取っている。
めっちゃムズイし、めっちゃカタルシス。あと、謎の動きをする点P。なぜか、弟のたかしくんより、5分遅れて出発する、たかしくんより、歩く速度が、毎時2km早い兄。
「今日の数学、なんか、楽勝らったれ!」
そりゃそうだろ。半分しか解いてないからな!B子は!こっちは、Pも、たかしも、たかしの兄も身籠もる?見守ってきたんだ。40分は、解くのに集中し、残りの10分で、ケアレスミスを、ぶっ潰しましたとさ!
返却。
「奈々ぁ。言ってくれいやぁ!うち顔から火ぃ出そうがぁや!」
私がケアレスミスをプチプチ潰している時間で、表面の50点を取得し、私が血眼になって解いている時間に、B子は寝ていた。
私は、99点だった。先生曰く、なんでも、Xが、><大なり小なりに見えたらしく、一箇所だけ、難癖をつけられた。
先生なりに、100点をやるのが、悔しいのだろう。
そりゃ一学期の中期、期末、二学期の中期、期末と、私とB子が、100点を取るのが恒例行事になっていったからだ。
今考えれば、三学期の期末だけ、裏面までテストが印字されていた。二学期の期末に、B子は、105点を取った。
おかしいなぁ。全然勝った気がしない。
こっちは、ガッチガチに手にテーピングして、グローブはめて、相手のボディにジャブを入れたつもりが、
えっ?私、やなぎですけど何か?
と、しんなりと、やわやわとリングに立ってない感じ。B子がグローブを投げ捨て、試合会場から、映画館へはんなりと枝垂がかって悠々と泳ぐメダカのようだった。
高校は、別だった。
まだ、LINEやら、ネットの類いは、なかったため、お互いに、年賀状のやり取りだけをしていた。いた。と過去形なのは、今年のB子からの年賀状に、
「新元号故、年賀状辞する」
とだけ書かれたのが届いたからである。
あぁ。令和。
そうやって変わっていくのね。
「で、彼が忘れられない。と。」
あーそうだったわー。
完全なる忘れてた。
「あ、はい。」
「忘れて、何がしたいですか?」
側と気づかされる。
ワスレテナニガシタイデスカ。
ラーメンマシマシニンニクアブラカラメ。
完全なる同一人物説。ほぼ同音異義語。
「いや、忘れたいから。忘れる。ん?なんだ?」
「そうなんですよ。忘れることが目的になって、彼を、見てないんです。」
ほー。言ってくれるねぇー。
「忘れる。ことを、忘れろ。」
急な哲学。ソクラテスもプラトンもビックリ。
「もう、答えは出てるんだと、僕は考えます。」
えっ、音っつぁん、私、まだまだ分からない。
「彼に縛られてますよ。7年間、ずっと。だって、あなた全然悲しんでない。忘れる。ことが目的で、忘れられない。言い方は悪いかもしれません。しかし、奈々さん、これは、あなたの問題なんだ。生きていた進一郎さんを、あなたがしているレザーのブレスレットと、同じような感覚で、捉えていませんか。あなたにとって、ブレスレットも進一郎さんも、そして、僕、音歌のことも、あなたの劇場の一脇役でしかない。あなたは、ずっとずっと、あなた劇場の主人公、看板女優だ。相手役が、進一郎さんだとしよう。あなたは、キスシーンの直前で死なれた王妃なんだ。ロミオとジュリエットだったら、ロミオが死ぬ。白雪姫だったら、あなたが王子だ。姫進一郎は、眠ったまま。シンデレラだったら、、、。」
「もういい!!!!」
説教、説法を聞きに来たわけじゃない。
私はただ、たった一人、愛した人を忘れたいだけだ。
「帰ります!」
「ちょっと待ってください。」
お金?あるだけ、おいてやりぁ!
「ゲームをしませんか?」
は?
あまりに唐突に来たもんだから、拍子抜けした。
「僕の名刺を使ったゲームです。」
訝しげに、音っつぁんを見る。
「このゲームに、あなたが勝ったら、彼を忘れさせてあげます。」
「ま、負けたら?」
音っつぁんが眉ひとつ動かさず、冷淡に言った。
「あなたの劇場から、あなたを降板させます。」
「あん?」
「ですから、あなたの人生を、降りていただきます。」
「あ!!?あれ?!あれなの?私とヤリたいわけ?そうやって口車に乗せようたって、そうはさせないよ!」
「ゲーム、を、やりたいです。」
「だから、なんなの?何が目的⁈」
「このゲームは、必ず、あなたを救います。」
私はしぶしぶ、ゲームの話を聞くことにした。
「MARIA & JOKER、これは、あなたと、僕の、たったひとつの蜘蛛の糸です。」
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