107話 競争

『それでは今から競争を始めます!』


 そんな合図と共に、パンッといった破裂音が聞こえた。どうやら運営側が演出としてピストルを発砲したようだ。


『それではまずはこの最高級の美酒の競争を行います!』


 美酒か……俺まだ酒を飲める歳じゃないし、若くから飲むと急性アルコール中毒になりやすいって聞くしな。

 まあ飲む機会はほとんどないと思うから大丈夫だろうけど。


『それでは開始額は10万センからとさせてもらいます!』


 最初から10万セン……つまりは白金貨一枚分か。最高級が付くならそんぐらいはするんだろうな。


「15万セン!」


「20万!」


 次々と値段を告げていく。

 20万と告げた人から10秒が立つと、


『——どうやら手が上がらないようのなのでこれで打ち切りたいと思います!』


 どうやら美酒は開始額の倍に決定したようだ。……これっていいのか?俺にはよく分からん。


『それじゃあ次に行きましょう!——』


 そしてオークションは特に何事もなく進んでいく。

 そしてしばらくすると、俺の品の番になった。


『では次にエリクサーです!これは開始額は……おおっと!今までとは違う500万センからです!』


 ご、500万だと!?

 ていうことは虹金貨5枚だと!?

 一般家庭の収入が、白金貨3、4枚とは聞いたことがあるけど、開始額はそれの10倍以上。もう頭がおかしい値段の域だ。


「600万セン!」


「700万!」


「750万!」


 そしてどんどんと値段が積み上がり、


「1800万!」


 そして誰も手を上げなくなった。


『——それではエリクサーは1800万センということに決定しました!』


 おお……!あの死蔵入りのアイテムがまさかこれほどの価値となるとは……。

 予想外にもほどがある。俺的には300万もあれば十分だと思ったんだけどな。


『それでは次に竜の逆鱗50個セットです!これは1000万センから開始額とします!』


 1000万って……中々出せる値段じゃないな……。まあここは貴族の溜まり場だからそこまでむずかしくないのかもしれないけど。


「3000万!」


 手を上げたのはまさかの女王様だった。

 ……あの人何してんの?ここに来るなんて聞いてないんだけど……。


「あれ?トオル知らなかったの?お母様はお忍びでここのオークションに来ていたのよ?」


「……聞いてねぇよ……」


 普通お忍びで来てるのに3000万を軽く使う人はそうそういないと思うぞ。


『どうやらあげる人はいないようなので、竜の逆鱗50個セットは3000万と決まりました!』


 これで計4800万センの収入となった。

 二つだけでパネェ!


『それで話を次に竜の雫です!開始額は1200万センからです!』


 これまたパネェッス。


「6000万!」


 どこかの嗄れた老人が手を上げた。

 ……スゲェなあの爺ちゃん。


『どうやらこれも一回で決まったようです!竜の雫50個セットは6000万と決まりました!』


 更にお金が増えていくぅ!

 俺のテンションはハイテンションに変化していた。


『それでは最後の大トリ、新種のドラゴンの素材です!これは5000万センを開始額とします!』


「——5億!」


 始まった瞬間に、10倍の額を告げる者がいた。

 其の者は俺も知っているタルサ王国国王のギルバート=タルサだった。


『あっと!?大トリがまさかの最初で終わってしまっのか!?』


 司会者も驚きだった。

 そして俺もとても驚いていた。

 5億って……パネェすぎ!


『——どうやら誰も手が上がらないようだ!ということで新種のドラゴンは5億センとなりました!』


 もう一度言うが、パネェすぎ!

 そして俺の稼ぎ額は6億800万センとなった。

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