106話 ダンジョン品

『ではお次にこの56カラットのダイヤモンドです!」


 係員がケースに入れた大粒のダイヤモンドを運んできた。

 56カラットというのは1カラット0.2g×56だから11.2gのダイヤモンドになる。

 ……そう言われてもよく分からないけど、一般に比べて結構大きいのはよくわかる。そうじゃなきゃ、目玉商品には並べららないからな。

 このダイヤモンドは俺が適当に加工したものを出した感じだ。

 原石が宝箱には入ってたんだけど、その原石が50センチずつの正方形のような形をしているから、とても余ってるんだよなぁ……。


『更にこのダイヤモンドは傷や内容物が全く確認されておらず、最高品質のダイヤモンドとなっております!』


 司会者が熱烈に解説する。

 俺の感性では綺麗だなぁ……としか感じることができない。分かる人には理解できるんだけど、俺はそこまで深くないから。


『ではお次にドラゴンの逆鱗50個セットです!』


 あれ?ここで逆鱗がくるのか?しかも50個セットで。

 逆鱗の用途がよく分からなかったので俺は〈叡智〉先輩に聞くことにした。

 先輩を取り出し開くと、


〈龍の逆鱗——龍から取れる最も希少な部分。それはすり潰すとエリクサーの代用品となり、武器に使うと攻撃力が最低でも50倍にもなる優れ物〉


 あ、これはパネェヤツっすな。

 ……まだ余ってるから他の使いそうな武器と混ぜとこうかな?


『そしてお次が龍の雫!これも逆鱗と同じく50個セットだ!』


 龍の雫……これも先輩の力を借りますか。


〈龍の雫——龍と互いに了承が取れた場合に採取が可能で別名龍の涙とも言われる。了承が取れていなかったら効果はない。ステータスの大幅増加の効果がある〉


 へぅ……やっぱり結構良い品なんだな。出してる俺がいうことでもないと思うが。

 これもまた驚きが広がっていく。

 最初より驚きが少なくなっているのは流石に慣れたからか。


『そして最後は新種のドラゴンの素材です!これは普通のドラゴンの10倍以上の強さを誇ると考えられるドラゴンです!なので当然素材の質も高くなるものです!全ての効能が10倍以上あるのです!』


 これは余っていたファフニールの分身体の死骸を適当に取り出したものである。

 ……まあ強さもそれぐらいあったから素材の質も高いんだけど。だってこれでバーベキューとかしたら最高だし!


『さて!全ての紹介が終わりました!次は競争です!』


 ようやく紹介がおわり、落札タイムへと入る。

 すると、参加者は全員何かコインのようなものを取り出した。


『皆さま、お手元にあるコインは準備しておりますか?無い方は最終確認として係員がそちらは行きますのでしばしお待ちを』


 ……そんなコインがあるだなんて知らなかったんだけど……。皆さんはいつの間に交換してたんですか?

 そう思ってると、コンコンとノックすると音が聞こえた。


「失礼します。コインの交換はお済みですか?」


「大丈夫です」


 俺はそう言って断っておいた。

 今回は様子見ということで、どんな感じなのか見学することにする。

 特に欲しいものもなかったしな。


「よかったの?」


「いいんだ。それか何か欲しいものでもあったか?」


「いや……そうじゃないんだけど、何か欲しいものがあったのかなぁ……って思って」


「今回は様子見だ」


「そう」


 そんな会話をしているうちに競争が始まろうとしていた。

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