38話 連続ボス戦
90階層を突破した俺たちは降りる所の階段で少し早めの昼飯を食っていた。
「もぐもぐ……、美味しいね」
「そりゃエルの作ったサンドイッチだからな。それより食事中に喋るんじゃない。行儀悪いだろう」
「お兄ちゃんだってそうじゃん!」
「ふっ、残念だったな。俺はもう食べ終わってる」
「お前らは子供か!」
俺と奏音が言い争ってると天谷が止めに入った。
俺はちゃんと口に入れてるときは喋ってなかったし、言われる筋合いはない。
だけど奏音は別だ。
お兄ちゃんはこんな子に育てた覚えはありません!
「みんな食べ終わった?じゃあゴミ片付けるから渡してね」
見ろ!あのエルをしっかり行儀もよく、周りも見れている。
奏音には見習ってほしいものだ。
「お兄ちゃん、何思ってるの?」
「いやー、奏音もエルを見習ってほしいなー……って!」
「ふーん。そうなんだ。お兄ちゃんって私のことそう思ってたんだ。私なんてエルさんみたいに行儀良くないよ!ふーんだ!」
……まずい。奏音が拗ねてしまった。
この状態の奏音を元に戻すって結構苦労するんだよな……。
「カノンちゃん。私だってそこまで礼儀良くないよ。それでもしっかりやっていこうよ。ご主人様を見返すために」
「エルちゃん……そうだね!このバカお兄ちゃんに私が良いって認めさせてやる!」
「おーおー、それじゃあ頑張ってくれよ。俺は妹に生半可な評価はしないからな。それよりもう行くぞ」
「「「はーい」」」
休憩を挟んだ俺たちは攻略を再開した。
91階層。
そこは真っ白な空間で一本の道のようなものだった。
中間ぐらいまで進むと、敵が現れた。
どうやら90階層からは雑魚敵は無く、ボスだけが登場するのだろう。
実際に今の敵もボスっぽいし。
今の敵というのは、ゴリラだった。
ただし、体長が30メートルは余裕で超えている巨大ゴリラだ。
「ゴラアアアアアアアッッ!!」
ゴリラは叫ぶ。
やっぱり、このダンジョンは俺を飽きさせてくれないぜ!
ゴリラは馬鹿の一つ覚えのように突進してくるが俺は難なく避ける。
そこで俺は一つ思い至ってしまった。
(あ、これエルたち避けられるのかな?)
俺はエルと一緒に歩いていた訳であり、俺の方向に突進する=エルたちにも突進していることになる。
こいつはデカイくせに以外と素早い。
まあ、俺からすればただの木偶の坊なんだけど、エルたちは違う。
俺は向こうを見ると、あの中で一番能力が高い天谷が二人を抱えて避けていた。
「僕のことは気にしないで、どんどん攻めて!」
「助かる!」
天谷ならこのスピードは逃げに徹すれば大丈夫なはずだ。
腐っても勇者。底力を期待してるぞ。
これで仲間のことを気にせずにできる。
とりあえず、ガルバドメスで撃ってみる。
「グルアアアアアアアアアアアッ!」
ゴリラが怒声を響かせる。
弾は血が吹き出で貫通したが貫通した箇所はすぐさま回復された。
「よし!」
これでようやく久しぶりのダーインスレイブが抜けるぜ!
え?キマイラの時になんで抜かなかったのか?
だってあの叫び声でもし破壊とかされちゃったら嫌じゃん。
「ハアッッ!」
俺はとりあえず両方の剣で斬りつける。
お!やっぱりこれならスパッと切れるな。
……やっぱり切れ味が尋常じゃないぞこれ。
そう思いながらもどんどん斬りつけていく俺。
「ガアッッ!」
ゴリラが怒り狂ったように周りを叩きつける。
俺はそれを避けながらこいつの倒し方を考える。
(こいつ、硬くない割には再生能力が早すぎる!並大抵の攻撃じゃあすぐに回復されちまう)
これは一気に決めに行かなくては。
メテオでは多分こいつには勝てないと思う。
この再生能力だったら多分どんだけ受けても即座に回復されちまう。
痛みだけを与えるんだったら効果的だと思うが、今の目的は倒すことだ。
なら心臓を貫くか頭を吹っ飛ばすしかない。
前やった擬似水蒸気爆発は今は無理だ。手間がかかりすぎる。
やっぱり全力投擲しかない……か。
これだったら皮膚も貫通する。
俺の力だったらトルリオン自体も力負けしないはず。
というわけで俺はゴリラの全容が見える位置に移動する。
「そりゃあああああぁぁぁぁぁぁああ!!」
そしてゴリラに向け、俺の渾身の一投(トルリオン)を放った。
両手だと投げづらいからね。
トルリオンは一直線に空を切り、例えるなら零戦の最高速ど並みのスピードでのゴリラの胸元まで飛んで行った。
……あんなスピードで行ってよく壊れないな。もうトルリオンって壊れることないんじゃないか?
そうしてトルリオンがゴリラにたどり着いた時、ゴリラにトルリオンの数十倍の大きさの穴が空いた。
「ゴラアアアアアア……アアア…………ア…………」
こうしてゴリラは俺たちとの激戦の末にお亡くなりになった。
「……どうだった?」
「思ったより強かったな。多分この後もボス部屋が続くと思うから、少なくとも一筋縄では行かないだろうな」
「……だよね。僕たちの出番はもう終わりかー」
「いや、そんなことないぞ。少なくとも天谷は今回良くやってくれた。あの短時間でよく行動できたな」
「あの時はとっさに動かなくちゃ、って思ったんだよ」
「そうか」
そういうセンスは後にいろんな役にたつだろう。直感は大事だからな。
「じゃあ次行くか」
こうしてゴリラを倒し、91階層をクリアした。
92階層。
案の定、さっきと同じ作りだった。
そして今回はイノシシである。
「ブモオオオオオオオッッ!」
イノシシは初回から全力でこっちに突ってきた。
しかし今回はあのゴリラほど体長がデカイわけではない。
普通のイノシシよりちょっと大きくなったレベルだ。
それが92階層の番人をしているということはよっぽどな力を秘めているんだろう。
というわけで。
「先手必勝ッッ!」
俺はそう叫び、突っ込んできたイノシシの顔面にトルリオンで斬り、後は突進してきた勢いだけで真っ二つになった。
「ふぅ」
イノシシの切り身完成!
イノシシだったものはつけすぎた勢いで吹っ飛び、遠くの壁にぶち当たった。
そして柱は崩壊する。
どんだけ威力強いんだよ……。
あの柱折るって相当だぞ。
「お疲れー。今回は?」
「今回は向こうから来てくれたおかげでそんなに苦戦しなかったな」
「じゃあ次も頑張ってね」
「おう」
もちろんアイテムは回収して92階層を後にした。
93階層。
敵はリザードマンの大群だった。
「くそっ!こいつらそこまで強くなくても数が多すぎる!」
これは殲滅魔法使うか?
いや、それはエルたちも巻き込みかねない。やるんだったらもっと安全で高火力なやつ。
それを俺はガルバドメスを撃ちながら考えていた。
「〈重力魔法〉、〈飛翔〉」
俺は一旦、みんなを連れて、空に避難した。
リザードマンが水を撃ってくるが、服にもう一度かけておいたファイアバリアが水を弾いていく。
俺たちは空を移動していると、リザードマンの発生源とされている穴を見つけた。
よし!これなら擬似のアレがいけるかも!
そう思った俺は水が満杯に入っている穴を土魔法で厳重に塞いだ。
そして俺たちは避難しながら、あそこの中にインフェルノを発生させる。
すると、
ドゴゴゴゴゴオォォォォォォンッッ!!
という巨大な爆発音が響き、水蒸気爆発が発生した。
「〈水魔法〉ビッグフラッド!」
爆発がぶつかる10メートル手前に俺はこの魔法を発動した。
すると、この滝のように落ちてくる水が、俺たちを爆発から守った。
そして爆発が終わり、解除するとリザードマンの巣は崩壊し、大半はもう死にかけの状態だった。
そして俺たちはその大半を殲滅していく。
こうして93階層は突飛な手段で敵を殲滅するのだった。
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