木漏れ日

雨世界

1 ……あなたの笑顔は嘘じゃなかった。

 木漏れ日

 

 登場人物


 牧野文まきのふみ 短めの三つ編みの少女 十六歳


 奥山加奈おくやまかな ストレートな黒髪の少女 十六歳


 本編


 ……あなたの笑顔は嘘じゃなかった。


 牧野文と奥山加奈は幼いころからの友達で、仲の良い幼馴染だった。

 二人はいつも一緒にいて、幼稚園、小学校と同じ学校に通って、クラスも毎年、同じクラスになった。

 二人はずっと一緒だった。

 もちろん、このまま生涯の友人として、二人はずっと一緒に過ごしていくのだと思っていた。

 でも、別れは突然に訪れた。

 それは小学校六年生のときだった。

 二人が十二歳になった年、加奈の家族は遠くの街に引っ越すことになった。その話を加奈から聞いたときは本当にショックだった。

 文は泣いていたが、加奈も泣いていた。

 二人は「手紙を書くよ。交換で手紙を書いて、過ごそうね」とそんな約束をした。

 加奈が引越しをしたのは三月の、小学校の卒業式と同じころだった。加奈はみんなと一緒に卒業しに出席して、そしてそのまま、文の暮らしている東京からいなくなってしまった。


 そして年度が変わって、四月になった。

 文は私立の女子中学校に入学した。本当なら、その女子学園に加奈も入学するはずだった。

 文は初めて一人になった。

 友達はすぐにできたけど、なんだかこの場所に加奈がいないことにすごく、強い違和感を感じた。

 文は約束通りに加奈に手紙を書いた。

 そしてその手紙をポストに投函した。

 一番最初の私たちの手紙。

 この手紙を読んで、加奈はどんなことを思うんだろうと考えると凄くどきどきした。その日、文はなかなか眠りにつくことが、そのせいでできなかったくらいだった。

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