僕と彼女と2年間と

黒猫

第1話 残りの命

「残り2年が限界ですね…」

医師から唐突に余命を言い渡された。

今俺に親などは居ない。自分で稼ぎ自分で必要なモノを買っている。


「そうですか…」

医師は残りの2年間はしたい事をするといいと言い残し席を立った。


やりたい事などは無い。

5歳の頃だろう、両親が交通事故で死んだ。

俺は親戚の家に渡されたがそこでの扱いは奴隷と同等だった。


だが、5歳のクソガキが何をできるだろうか。何もできずただただ耐えていた。

日に日に増える暴力、悪い時には4日は食事を貰えない。

その時の担任が俺の異変に気がついたらしく服を脱がせ痣を見た時には俺を抱きしめ、ごめんな、ごめん…とずっと言っていた。


その日、担任に連れられ警察へ行った。

事情は全て担任が話し俺の痣を見せると血相を変え親戚の家に向かった。


親戚は、逮捕された。最後まで俺達じゃないと言っていたが痣と本人の証言があったため受け取って貰えなかった。


そこからは、その担任と一緒に生活をした。

まるで亡くなった親父の様だった。

だが、俺が中学に入学と同時に癌であの世へ旅立ってしまった。


大声を出して葬式で泣いた。

俺を闇から救ってくれた人が死んだ、何故俺の周りにばかり不幸な事が起こるのか…


この事を忘れるために、株、小説、絵色々な事をやり金を稼いだ。

仕事をしている時は嫌な事を全て忘れられた。


気が付けば俺の貯金は家族1世帯を養える程にまで溜まっていた。


「やりたい事などない、家にいても仕事しかしないし学校へ行くか…」

どうせ2年なら卒業した後だ、なら誰かに会うわけでもないから言わなくていいだろう。


病院からタクシーで自宅へ帰った俺はパソコンを立ち上げ締め切り間近の原稿に取り掛かった。



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