エラン・ヴィタール:一日経過レベルダウン

神島しとう

第1話 エラン・ヴィタール―1

 少女は逃げていた。

 背中に巨大な筒を背負いながら。

 とにかく逃げることだけを考えた全速力。

 背後から鉛玉が乱れ飛んでくる。

 土砂降りの雨が降る森の中を必死に、息を荒くしながら走る。

 後ろから、泥をはね飛ばしながら乱暴に追いかける者がいた。

 少なくとも一人ではなかった。

 木々の間を器用に抜けていくが、やがて地表の根っこに足を引っかけてしまう。

 当然、前のめりに倒れた。

 しかも巨大な筒のせいで、圧し潰される形となった。

 少女は両腕に力を入れようとするが、筒が重すぎて起き上がれない。

 死神を思わせる足音ばかりが聞こえてくる。

 起き上がろうと、肘を伸ばす。

 膝にも力を入れて、何とか曲げることに成功した。

 地面で挫折している体勢から抜け出そうと、更に踏ん張る。

 それを阻止しようと、足元に銃弾が撃ち込まれ、全身を地面に打ち付けた。

 元通りの状態である。

 少女は手当たり次第、草木を掴むが一向に進まなかった。

 そうこうしているうちに、背後に人が立っていた。

 黒を基調とした迷彩服に、ヘルメットを装着した男だ。

 そして、四方にも銃を構えた男が現れる。



「は、はやく……」



 少女は焦った声で小さく叫ぶ。

 片手で背中の巨大な筒を叩く。

 まるで寝ている人を起こすように。

 植物を踏みつける足音が近づいてきた。

 その足音は人数分ある。

 少女と違って焦りを感じさせない響きだ。

 男たちは少女にある程度、接近したところで手に持っている突撃銃で狙いを定める。

 銃口の先を、頭部と繋ぐように向けた。

 少女の背後に立つ男は重々しい無愛想な銃ではなく、腰に差していたナイフを抜き放った。

 黒色の刃が特徴的なナイフだ。

 ねっとりと逆手に持ち替えると、峰から赤い筋が姿を見せ、切先へ伸びていく。

 男は右手でナイフを構え、左手で少女の首を掴むため回り込む。

 動作は遅くとも、迷いはない。

 いよいよ少女の首に手が差し掛かった、その時。



 筒から、電子音が鳴り。

 次の瞬間、筒を中心に爆発が起きた。

 中身の液体と破片が、四方八方に吹っ飛んでいく。

 少女は頭を覆いながら俯き。

 ナイフを持った男は、弾けた筒に目を奪われる。

 爆発したから目を奪われたのではない。

 筒の外に、一人の男が立っていたからだ。

 半裸で筋肉質な成人だ。

 兵士は少女に向けていた銃口を、今度は半裸の男に突きつけようと動く。

 その隙に半裸の男は消え、銃口を突き付けられた時には、もういなかった。

 一秒後、ナイフを持った兵士は吹き飛んでいた。

 男が鳩尾に拳を放ったからだ。

 残った兵士は吹き飛んだ仲間に目もくれず、引き金に手をかける。

 あまりにも人間味の欠けた動作で、銃に火を噴かせた。

 ただ男に動じた様子はなく、一歩を刻んでいく。

 全員、男めがけて一斉掃射しているが、受け止めた弾丸は破裂していった。

 弾丸を破裂させる皮膚に、傷は全くない。

 男は一人ずつ、確実に仕留めていった。

 激しい雨の音以外なくなっていたことに気付いた少女が頭を上げる。

 周りには、兵士の死体が散乱している。

 凶悪な兵士を一瞬で倒した男は、両手をまざまざと眺めながら佇んでいた。



「これが、神の力……さすがね」



 少女は力なく呟いた。







 俺は、今……この手で倒したのか。

 目を覚ました時には、辺りに人が倒れていた。

 地面にうつ伏せの人物から、生気は感じられない。

 人を殺したという事実を認識しても、特に思うことはなかった。

 なんだか日常的な……意識するまでもないことだった。

 濡れた髪を、中央で分ける。

 履いているカーゴパンツ以外に、何も身に着けていないことを確認する。

 そして、後ろから音が聞こえる。

 誰かが立ち上がって、服についた泥を払っている音だ。

 おずおずと振り返ると、全くその通りで泥を丁寧に払っていた。

 体に括り付けていた筒を落とす。

 頭を振って、銀髪に付いた水を飛ばしている。

 正面に立っていたのは、少女だ。

 だが、少女と表現したが大人の魅力も感じさせる。

 成年に達するか達しないかの境目。

 俺は外見から、そう判断した。

 同時に、声をかける。



「あの、大丈夫?」



 少女は俺に顔を向けて、ピースサインを掲げた。



「大丈夫、助かったよ」



 さて、この子に近付くべきだろうか。

 見知らぬ相手だ、慎重に考えなくては。

 と頭を悩ませていたら、少女の方から近づいてきた。



「私は、レイス・デートル」

「お、俺は……」



 なぜだ。

 名前を思い出そうとすると、脳が拒否するように真っ白になる。

 くそ、名前が出てこないとはな。

 思い起こそうと頭を回していると、レイスが俺の目を見つめ。



「あなたは……エラン・ヴィタール。よろしく、エラン」

「あぁ……よろしく。なぜ、俺の名前を?」



 レイスに質問をぶつけた途端、唇に人差し指を当てられた。

 静かに、ということらしい。

 遠くから足音が聞こえてくる。

 タイミングが悪いな、まったく。

 レイスは、手のひらを下に向けて下ろすジェスチャーを繰り返す。

 今度は屈め、と訴えてきた。

 大人しく従うが、内心苛立ちが収まらなかった。

 起きて早々、何が起こっているんだ。

 説明してくれ、と叫びたい。

 レイスも屈んで、ゆっくりと樹木の後ろまで歩く。

 手で招くジェスチャーを見せつけられ、レイスに付いていく。

 樹木の裏に隠れると、さっきまでいた場所が兵士で溢れていた。

 突撃銃の側面に接着しているライトを、銃口と一緒にあちこちに向けている。



「エラン、レベルを確認して」

「レベル?」



 突然の指示に戸惑っていると、顔を近づけて。



「あなたのレベルが知りたいの。『ステータス』って言うの」

「ああ……わかったよ、レベルだなレベル。えぇと、『ステータス』」



 そう呟くと、眼に自分の名前が浮かび上がった。

 エラン・ヴィタール、と表示されている。

 その下に、レベルが表示されていた。

 レベル……100。

 いや、少し脳内を整理させてくれ。

 この世界において、人や魔物の強さの段階を表す数値だ。

 魔物を倒すことで得る経験値の累積によって、レベルは上昇する。

 基本的に、レベルが高ければ高いほど強いということになるが。

 レベル100というのは、常識的に考えられない。

 どれほどの猛者が一生をかけても辿り着けない数値だ。

 レベル:100と表示された下には力値、魔力値……。



「ねぇ、どうだった?」

「ああ、レベル……100だったよ」



 当然、驚愕の表情を浮かべるだろうと予想したが大いに外れた。

 聞く前から分かっていた表情、それでいて自信満々というべき態度だ。



「そう、よかった。じゃなきゃ、彼らが報われない」

「俺のことを知っているような口振りだな。俺は何者なんだ? どうして、こんなことになってるんだ? なあ、答えてく」



 不意に、震え上がるほどの金属音に見舞われた。

 両耳を塞いでも鳴り止むことはなく、脳が絶叫する。

 レイスも同様に、耳を塞ぎながら歯を食いしばっていた。



「これは……なんだ!」

「位置が、バレたわ!」



 金属音は鳴り止んだが、脳はまだ感覚を覚えていて不快だった。

 ふと、レイスを見ると背負っていたリュックを地面に下ろしている。

 中から、黒のポンチョを二つ取り出して、一つを手渡してきた。

 急いで身に着けろ、と目で訴えてくる。

 仕方なく受け取り、穴に頭を通してフードを目深に被った。

 レイスも同じように忙しく着用している。

 そうこうしている内に、銃声が絶え間なく響いてきた。

 木の抉れる音を耳元で叫び続けている。

 完全に位置を知っている攻撃だ。

 リュックを背負いなおそうとするレイスを抱き上げて、足に全力を込めた。



「しっかりと掴んでおくんだ」

「ちょ、ちょっと!?」



 そして、弾丸を追い越す速さで駆け出した。

 木々をなぎ倒す勢いで、森の中を疾走していく。

 リュックを背負い、レイスを両腕で抱きかかえ、とにかく前を目指して突っ走った。

 樹木が正面に迫っていても、すぐに避けることはできない。

 だから、レイスを傷つけないよう庇いながら、樹木を圧し潰した。

 裸足のため、泥濘ぬかるみで何度も足を取られそうになる。



「止まって!」

「はっ!」



 レイスの声によって、悪夢で目を覚ましたようにハッとした。

 目の前には、舗装されていない道路があった。

 轍があるため、車は通っているようだ。

 道をよく観察すると、行く先に大量の車両を発見した。

 おまけに大量の兵士も。

 左手に大量の敵……右手にも敵、か。

 程よく茂った草の陰に、レイスを下す。

 そうするといきなり、左の方を指さして。



「あなたは、あそこで思いっきり暴れてほしいの。囮役としてね」

「レイスは?」



 今度は右を指さす。



「車を奪ってくる。私が突っ込んできたら、タイミング良く荷台に乗り込んで」



 無茶な要求に聞こえるんだが。

 兵士の近くに止まっている軽車両がある。

 軽トラックを注視すると、何やら銃のようなものが取り付けられているようだ。

 あの機関銃が搭載された荷台に、飛び乗れという。



「このまま走り抜けた方がいいんじゃないか」

「あなた、このあたりの地形を知ってるの? 崖が多いし、橋は少ない。まともに走れる道には、敵が多いわ。それに、疲れるでしょ」

「……そうだな。レイスの提案に従おう」

「余計な心配かもしれないけど、死なないでね」



 レイスは、俺の肩を小突いて走り去っていった。



「ああ、互いにな」



 立ち上がって、軽く腕と脚を回した後、息を整える。

 それから、体を左に向け、一体の兵士に照準を合わせる。

 その兵士が、こちらに向いたのを確認して一気に飛び出した。







「くそ、どっからこんなに湧いてくるんだ!」



 兵士を圧倒するが、量は増えるばかりだ。

 そのうえ、巨体の兵士が果敢に突撃してくる。

 周りの雑魚を倒しながら、巨体にもダメージを与える。

 全力で殴り、車両を巻き込みながら吹き飛ばす。

 それでも、十数秒後には起き上がって攻めてくる。

 こいつだけ、妙だ。

 雑魚とは違った不気味さを肌で感じる。

 ここで、背後から近づくクラクションの音が耳を劈いてきた。



「ようやくか」



 巨人の右ストレートを避け、懐に潜り込み、顎にアッパーカットを食らわせる。

 空中を舞う巨人を見届けてから、加速する車両を掴んで、荷台に乗りこんだ。



「さすがね」

「くっついていくしかないからな」



 相変わらず、激しい雨が降るばかりだ。

 巨人は起き上がって走ってきたが、車のスピードに追い付くことはなかった。

 やがて、巨人の姿は木々の裏へ隠されていった。

 これで力仕事は終わりか。

 荷台には、銃器が散乱していて少し窮屈だった。

 それでも、体を休めたい。

 一息つこうと脱力した時、上から雑音が響いてくる。

 すぐに見上げて、それを視界に入れると思わず舌打ちしてしまった。



「おい、ヘリだ! 攻撃ヘリコプターが来たぞ」



 そう発した途端、レイスはアクセルを思いっきり踏んで、車体を激しく揺らした。



「荷台に、ロケットランチャーがあったはず! それで何とかして!」

「……全力を尽くしてみるよ」



 レイスの言った通り、大量の銃器の中にロケットランチャーが紛れ込んでいた。

 ヘリは、機関砲で弾丸をバラまき始めた。

 車が走る道は、子供が描いた線のように歪なため、車体は安定しない。

 反面、銃撃を器用に避け続けることができた。

 細長いロケットランチャーを肩に乗せて、目視で機影を捉える。

 不安定な床ではあるが、自力で狙いを安定させて、そして発射した。

 ロケット弾は命中し、ヘリは爆炎に飲み込まれる。

 炎に包まれたヘリは、深い森に沈んでいった。

 用無しとなったデカブツを投げ捨てて、レイスに行き先を聞いた。

 そろそろちゃんとした回答が欲しいもんだ、と語尾を強めて。



「これから、どこに向かうつもりだ?」

「王都ヒーアートよ」

「王都ヒーアート? 食べ物が美味しい国だな」



 それと美人が多い、と付け加えたい。

 なぜか、自分自身を忘れていても、世界を忘れてはいなかった。

 記憶の中では、ヒーアートに訪れたことがあるみたいだ。

 ただ、その時の自分が思い出せなかった。

 車は細い林道を通り抜け、長い石橋に差し掛かった。

 石橋の左側には、巨大な滝が見える。

 切り立った崖に滝口があり、滝壷を目指してカーテンの水が落下していく。

 運転席から笑い声が聞こえ。



「他に良いところはないの」

「活気がある」

「確かに」

「それで、王都で何を?」

「もっと会話を楽しもうよ」



 これから重要な質問をぶつける、って時に邪魔が入る。

 いきなり、真横からヘリが現れた。

 失明するんじゃないかと思うほどの光を浴びせられ、すぐに反撃することができなかった。

 直後、落雷したような轟音が響き渡る。

 そして、全身を包んだのは浮遊感だった。

 おそらく、ミサイルか何かで橋を破壊したのだろう。

 俺とレイスが絶叫し、滝壷に落下していく。

 上空に手を伸ばし、何かを掴もうと努力するが、それは叶わなかった。

 その時、静止するヘリの側で浮遊する人影と視線が絡んだ。

 人影の顔は黒い仮面をつけており、黒のローブを着ている。

 まるで死神を連想させる装いだ。

 仮面をおもむろに外し、口角を上げ……闇の中に消えた。

 そして、水面に激突した。







 水中で揉まれる肉体を操り、体勢を正す。

 瞼を開けると、沈み流される車体を発見した。

 運転席側に近づき、ドアごと馬鹿力で引き剥がす。

 中で気絶しているレイスを引っ張り出して、肩で担ぐようにして泳ぐ。

 水面を持ち上げるように顔を出して、周りを確認した。

 滝壷があった場所から、かなり流されている。

 雨で増水した川は激しい流れを生み出し、今も流されるばかりだった。

 片手と両足で、なんとか川岸にしがみ付くと、レイスを持ち上げて岸にあげる。

 朦朧とする頭を振って、再びレイスを担いだ。

 とりあえず、ここから遠ざからなければ。

 その一心で、とにかく歩いた。



 しばらくして、小さな洞穴が見えてきた。

 大人二人でも十分な広さはあるはずだ。

 急いで駆け寄ると、中から一匹の魔物が首を出した。

 首は並外れて太く、次に出てくる前足も丸太ぐらいある。

 狼型の魔物だ。

 悪いが、ゆっくり話している暇はないんだ。

 魔物の全身が月夜に照らされ、震わせる鼻をこちらに押し付けてくる。

 その隙に、顎を全力で蹴り上げて、巨体を空高く上げる。

 歩いて洞穴に入った時に、ようやく死体が地面に落ちてきた。



 ひんやりとする床に、レイスを寝かせる。

 ついでに、背負っていたリュックを下ろして、何か使える道具がないか物色した。

 小型のランタンを見つけ、上部のボタンを押すと、洞穴を淡い光で満たした。

 次に外から薪を抱えて、洞穴の中で組み上げる。

 リュックから発火道具を取り出して、木の枝に着火した。

 焚火の炎が、二人の体を照らす。

 ポンチョを外し、近くに放り投げて、半裸の身体を温めた。

 目覚めてから、かなりの時間が経過しただろう。

 今だ、自分の体なのに他人のような感覚だ。

 記憶に関しても進展はない。

 眠っているレイスを見つめながら、壁に背を預ける。

 まだ眠気はない。

 朝日が昇ってきたら、朝食の準備でもするか。

 幸い、調理道具も確認できた。

 レイスの持ち物を勝手に使用しているが、さてどう言い訳しようか。







「んん……」

「起きたか、レイス」

「エラン……?」



 朝日の光が洞穴に差し込む。

 地面に黒く焦げた焚火の跡がある。

 起き上がったレイスに、スープの入った器を手渡す。

 ゆっくりと受け取ると、器の縁に口をつけた。

 味に満足したようで、俺に微笑みながら尋ねてくる。



「これ、あなたが作ったの?」

「ああ……起きている間、暇だったからな。リュックのもの、勝手に使わせてもらった」

「作ってくれてありがとう」

「なんだか照れくさいな。あと、肉もあるぞ」



 ここに入る前に倒した魔物の肉を焼いて渡す。

 二人が腹を満たしたのは、すっかり朝になった頃だ。



「よし、王都を目指そう」

「だめよ、ここで夜を待ちましょう」

「どうして? 奴らのいる気配がない。進むなら、今の内だ」



 レイスは首を振るばかりだ。



「エラン、まだ一睡もしていないでしょ? 今度は、私が見張る番よ」



 確かに、少し眠気が出てきた。

 さっきから欠伸が止まらない。

 甘えるべきなんだろうか。



「いや、俺の心配はいい。王都までの道に、街があるはずだ。そこで……」

「だーめ! 一番近い街でも、最低一日はかかるわ。それに、日中は強力な魔物が多いの」

「そんなもの、俺が」

「いいから寝るの」



 そう言って、俺を押さえつけるようにして壁に凭れさせる。

 仕方ない、ここはレイスの言う通りに従おう。

 万全な状態で進みたいからな。

 彼女に甘えて、目を閉じた。

 呼吸を穏やかにし、やがて意識が暗闇に落ちていった。







「はい、お返し」



 食欲をそそる匂い。

 視界が安定しない中、顔に温もりを感じながら目を覚ます。

 しばらくして、肌を温めていたのが料理の湯気であることに気付いた。

 レイスが器を近づけていたのだ。

 礼を伝えて、器を受け取り、さっさと口に含んだ。

 入口から見える景色は、黒く染まった森を映していた。

 昨日と同じような雨が降っている。

 日も落ちている時刻。

 レイスは、優しく見つめる瞳を向けながら、俺の状態を尋ねてきた。



「どう? 眠れた?」

「ああ、気力十分だ。さあ……いこうか、レイス」

「ええ、行きましょう……エラン!」



 レイスは、リュックを背負って洞穴を抜けていく。

 俺は、ふと自分のレベルをもう一度、確認したくなった。

 昨日の数字が、幻ではないことを信じ切るために。

 『ステータス』と小さく呟く。

 瞳に、自身の情報が表示された。

 エラン・ヴィタール。

 これが俺の本当の名なのか、疑ってはいる。

 だが、ステータスが嘘をつくことはない(はずだ)。

 そして、名前の下に目を向けた瞬間、思わず呼吸が止まってしまった。

 どういうことだ?

 名前の下のレベルは、確かに表示されている。

 だが、レベルの数字が昨日とは異なっていたのだ。

 しかも悪い方向に。

 昨日は、レベル100と表示されていたはずだが。



「レベル……99?」



 そう、レベルが一つ……下がっていたのだ。

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