4.赤い私とミドリの彼女

「来週、ランチ行かない?」

 美南みなみから送られてきたそのメッセージに、もう三日も返信をしていない。千塚さんのいるLinxにはこまめにアクセスできても、それ以外のことになるとからきしダメ。メッセージを受け取った時点での来週はすでにもう今週だ。彼女にはいつも世話になってばかりなのに、なんて不義理で失礼なことをしてるんだろうと自己嫌悪を覚えるけれど、それでも指は動かない。脳みそも働かない。まるで、自分の体が自分のものじゃなくなったみたいだ。

 深夜二時には魔物がいるって、誰が言ってたんだっけ、誰に言われたんだっけ。

 たぶん誰も言っていない。だけど私は知っている。たぶんみんなが知っている。だけど誰も口にはしない。クラクラと起きているひとりの部屋で、二時の魔物は厭なことばかり考える、思い出す。魔物は脳みその中にいる。もしくは、脳みそにいるのだと私に錯覚させている。魔物はいつだって飢えていて、欲望のサティスファクションを求めている。欲しがる疼きは私に伝わる。私の脳みそは千塚さんを求めてる。身体中を掻き毟って叫び出しそうになるほど彼が欲しい。どうして私はこんなにも千塚さんが好きなんだろう。千塚さんのすべてが欲しくて、すべてが好き。

 そう、私が千塚さんのどこを好きなのかという質問がナンセンスなのは、私が千塚さんのすべてを好きだからで、だけれどもしも千塚さんの身体がバラバラにされて世界の七ヶ所に散らばってしまったのならば私はまず顔から探しにいくから、やっぱり私は千塚さんの顔が好きなんだなって思うんだけど、それってわりと一般的に広く理解される世界の七ヶ所に愛する人の身体を散らされた者が回収しにいく部位の順番のように感じるから、それだけでは私が千塚さんの顔が好きという確固たる理由にはならないんじゃないかと思うの。だって男の人の足や肩甲骨のあたりから自分の手元に取り戻そうとする女の子なんて、なんだか変態みたいだし少しマニアック過ぎない?

 私はこの場合、顔から回収するのがすごくスタンダードなやり方だと思っているけれど、違うのかな。だって顔があったら、おしゃべりもできるし、キスだっていっぱいできるもん! そういう行為は足や肩甲骨ではこと足りないものだから。じゃあ、もしも世界の七ヶ所に散らばるのが千塚さんの身体の各部位ではなくて顔のパーツだったら、私はどこから彼の顔を回収し始めるのかと考えると、うーん、可愛い唇かな、涼しげな目元かな、憂いを感じさせる涙ぼくろも捨てがたいし、八重歯だってスペシャル可愛い! 嗚呼、もう大好き。なんて可愛いの千塚さん! と、錯乱状態に陥ってしまうから私にはやっぱり千塚さんの「どこが好き」っていう部位指定はなくて、全部が好きっていう包み込むような愛情でしか彼を想えないことがきっと誰にでも分かってもらえると思うの。

 運命という言葉はきっと私と千塚さんのためにあるんだから絶対にチャンスを逃さないわと決意をしてから早二週間、彼とはいまだに顔を合わせてお話することもままならず、私は勝ち気と気後れをループしたままパッとしない日々を送っているし、その上ここ二、三日は生理前特有の不眠で眠ることもままならない。やっと眠れたと思ったら千塚さんが出てくる悪夢なんて見る始末で飛び起きた脳から溢れ出す厭な汁がPMDDの不調と重なって私の脳内は見事なまでのホルモンテロに遭ってハイパー鬱!

 仕事なんて行く気にもならないし、友達からの連絡もスルー。金もないし元気もない。

 千塚さんのことを好きで好きで仕方がない私は、千塚さん以外の他人と向き合うのがもう嫌なの。千塚さんのこと以外の話題を千塚さん以外の人に発信して、千塚さんに関すること以外の内容を受信するのが嫌なの。千塚さんのこと以外のすべてのどうでもいい話題を発信してそれに反応されて対応しなきゃいけないことがめんどくさいの。だから私は自分の頭の中だけで千塚さんに奉げる幾つもの空想、抒情詩、愛の言葉を生み出しているときだけがとてもしあわせ。

 幸福の青い鳥は実はそばにいるものだっていうけれど、今私の右手の中でさえずっている青い鳥は不幸のはけ口になっているみたい。露悪ギリギリの自己顕示欲と不安と倦怠感をブチッとちぎって140字以内にまとめて、私は千塚さんのことを想うしあわせ以外の感情をツイッターに投稿する。

 夜な夜なタイムラインを徘徊しては140字以内の鬱を読み140字以内の鬱を書き、鬱を投稿し鬱にリプライされ鬱をRTし鬱にフォローされ鬱をリムーブし鬱々として鬱のままもののはずみでリンクされていた風俗嬢達のホンネ掲示板なんかににうっかりアクセスして彼女たちの鬱な書き込みに反応した脳からまた厭な汁が溢れ出す。このまま仕事にも行かなくなってもっとお金がなくなったら、私も風俗をやるのかもしれない。嫌だな、と思うけれど、そういう想像ほど止まらない。私は毎日死にたい気持ちになりながら、生きるために体を売るのだろうか。考えるだけで吐き気がするけど、もっと悲しいのはそういう風に働いたとしても、今はたいしたお金にならないとこのサイトでもみんなが愚痴をこぼしていること。そんなの本当に、死にたくなる。

「昔はAVも、もっと待遇良かったけどね」と書き込んでいるのは、たぶん私より年上のおばさんだと思う。風俗もそうかもしれないけど、AVの業界も今は、若くて可愛い子しか採用されないらしい。人並みでしかない女は門前払いされるなんていう話を聞くと、昔はそうでもなかったと思うけどね、と、自然と頭の中で過去の思い出や出来事が参照される。それはまた、厭な記憶だった。やっぱり、千塚さん以外のことを考えるとロクなことにならない。私の心に光を射してくれるのはもう、千塚さんしかいない。千塚さんに好きになってもらえないのなら私の存在理由なんてないし、もう人生どうなってもいいやと思ってしまう私は間違いなく馬鹿なんだけど、この思考回路を正せる利口さは持ち合わせていないから私に目をつけられたことがもう運の尽きだと思って、私と付き合ってもらえませんかね千塚さん。私のこと好きになったり私とセックスしたりしてくれませんかね。もうそろそろ観念してもらえませんかね。せめて一回、一緒にごはんとか行ってくれませんかね。私、千塚さんが注文したドリンクに密かに睡眠薬を混ぜるんで、私と話しながら「あれ、このコもしかしてイタい感じ? あ、なんかヤバい女?」と薄々勘づきながらも、お手洗いから帰ってきたら手元のアルコールの苦味が少し増したことには気付かずに、そのまま飲み干してもらえませんかね。ハイ、一気!

 そしてそのままもう二度と目覚めることがなくても気にせずに成仏していただけましたら助かります。スペシャルな法要を済ませたあと、千塚さんの血や肉は私が美味しくいただきます。お顔だけはそっくり残して、ホルマリンで満たされた標本瓶に納めさせていただきますね。ほら、やっぱりお顔があれば、おしゃべりだってキスだって、いっぱい出来ますから。

 ああ可愛い千塚さん。

 私、千塚さんのことじっと見てたいし撫でまわしたいし、喋りかけたいし笑いかけたいし、喋りかけられたいし笑いかけられたいし、ごはん作ってあげたいしそれを食べてもらいたいし、お嫁さんになりたいし千塚さんの子供が欲しいし、一生涯千塚さんに寄り添っていきたいし、やっぱり死んでるより生きたままでいて欲しいです。生きたままの千塚さんが欲しいです。ということで、千塚さんがまだ生きてる頃までタイムスリップ!

 千塚さん、今日も生きてる千塚さんが私はとっても大好きですよ。千塚さんに、私きっともうすぐ会えますよね。千塚さんが会おうとしなくても千塚さんのご自宅の住所は控えてあるからそこにいけばいつでも会えるし、出会ったならば千塚さんはきっと私のことを好きになってくれますよね。だって私はこんなに千塚さんのことを好きなんですもの。千塚さん、私はあなたのことが誰よりも好きだし、もっと好きになるし、千塚さんだってきっと私を好きになってくれるから、ふたりでいたらとてもしあわせになれるのが私すごく嬉しくて今もう、ちょっと泣いてます。お付き合いが始まった一年後にはめでたく結婚をし、千塚さんとの間で可愛いこどもたちにも恵まれて幸せな家庭が築けるだなんて私、夢みたいですでに現実が受け入れられません。私と会ったが百年目、盲亀の浮木ジャストフィット、優曇華の花咲き乱れボーイ・ミーツ・ガール、それは運命。そう、私に好かれたのが運の尽き。私、千塚さんのこと、ずっとしあわせにします。一緒にしあわせになりましょう。なれますよ、ね、私たちなら。あ嗚呼、とってもしあわせ。ねぇ、ネバーギブアップ人生!


 躁転。一寸先は光だ。いつもこの瞬間が来る。黒で埋め尽くされていた盤面が一手ですべて白に変わるみたいに、鬱が急に裏返されてなんでもできるような気分になる。こんなのも異常だ。それくらい分かる。でも、いつもそう。たぶん今、生理がきた。毎回血が流れ始めると、絡まっていた思考や感情の糸がほぐれて嘘みたいに心が軽くなる。ちょっと軽すぎて飛び出しちゃう。縛り付けていたガリバーを無重力空間で解放させたみたい。

 私は突然うきうきした気持ちになって、ずっと既読スルーしていた連絡に返信なんか始めてしまう。バイト先の店長には出勤の希望を送り、ランチに誘ってくれていた美南とも早速会う約束を取り付けた。


 「ちょっと、りんちゃん、一旦話止めてもらってもいいかな。私このままだと千塚さん博士になっちゃうから」

「いいんだよ。千塚さんはいいものなんだから、もっと千塚さんに詳しくなって、千塚さんのこと好きになろうよ。あ、でもダメ。本当に好きになったら私、美南のこと刺すからね!」

 ちょうど右手に握っていたナイフの刃先を反射的に美南のほうに向けてしまい、慌てて引っ込める。彼女は苦笑いを浮かべた。私たちは美南の家のすぐ近くにあるカフェで約束していたランチをとっていた。

「好きにならないから安心してね。私、結婚してるし」

 美南はオムライスをもう半分食べ終わっている。私のハンバーグはまだ運ばれてきたままの状態に近かった。彼女に話を遮られたことで、今までずっとひとりで喋っていたということにやっと気がついた。

「さっきから話を聞いてると、千塚さんてなんだか特殊な人みたいね」

「千塚さんの特性の表層部分だけを見たならね」

 さっき美南のほうに向けたナイフで冷めつつある肉を切り、彼女のペースに追いつくように急いで口に運ぶ。

「深層まで切り込んだらもっと変わったところもあるかもしれないけど……」

「そんなことないよ。千塚さんは優しくてかっこよくてとっても良い人。ただちょっとだけ何かの間違いで売れない地下アイドルなんかにハマってるだけ」

「そうなのかなあ。そういえば、なんていうグループなの?」

 美南からの質問に、頭の中で火花が上がった。ここ最近は、あいつらの名前を思い浮かべただけで脳みそが発火しそうになる。ゆめいろファクトリー、口にするのもおぞましい呪いの言葉だ。

「言っても分かんないと思うよ。なんだったっけ、軽く忘れちゃったな。たしか、くそみそシスターズとかなんとか」

「へえ、知らないや」

「あいつらのことさえ好きじゃなかったら千塚さんは本当に完璧だよ」

「完璧、なのかなあ。鈴ちゃんその人のこと買い被り過ぎてないかな」

「夢見ちゃいけないっていうの? まあ、もう私は夢見ることを恐れてもいないけど!」

「だけどやっぱり、期待し過ぎるのは……」

 美南はそこで言葉を止めた。私には相手が何を言いたいのか、聞かなくても分かるような気がした。彼女は私が過去にどんな恋愛をしてきたのかをもっともよく知る人物だった。

「もう、間違えたりしない」

 私の言葉を受けて、美南は唇を軽く結ぶ。その表情は微笑みのようにも見えたし、口をつぐんでいるようにも見えた。彼女は私の過去の間違いを知っている。私もそれを自覚している。だからこそ、もう同じことはしない。していない、はずだとは思っている。そうじゃなきゃ、意味がない。「間違いからも学べることはある」。過去に意味があるとすれば、そういう言葉しかあてはめることができない。


 美南が連れてきてくれたカフェは、駅から少し離れた住宅街の中にある。ナチュラルウッドとグリーンの配色がやさしい落ち着いた店で、メニューも店内の雰囲気も尖りがなくてプレーンだ。白木造りのテーブルの上でいちごとチャービルの葉で可愛らしく飾られたチーズケーキの写真を撮りながら、私はまた自然と千塚さんのことを考えている。こういうスイーツと一緒に撮ったいい感じのセルフィーをSNSに載せて、千塚さんの興味を少しでも引きたい。女友達と来ていることをアピールして、一緒に出かける彼氏はいないと暗に伝えたい。今のところ、唯一つながっているLinxでの私の人物像はアイドルオタクの中年男性を思わせる設定だから無理な話ではあるけれど。

「あのね」

 彼方にいる千塚さんに想いを馳せていた私に、美南が呼びかける。彼女の顔に目線を遣ると、そこにはほんの少しはにかみの表情が浮かんでいるように思えた。

「聞いて欲しいことがあるんだけど・・・・・・私、赤ちゃんができたの」

「……おめでとう!」

 祝福の言葉より先に感嘆の声を上げざるを得なかった。美南の頬がゆるむ。はにかみの中に見えた緊張がするりと落ちて、嬉しさと喜びを感じさせる笑顔だけが残っていた。

「名前は決めてるの?」

「まだ」

 美南は小さく首を横に振った。

「男の子なら、貴之にしよう」

「なんで?」

「千塚さんの名前。忘れちゃったの? かっこよくて優しい男の子に育つんじゃないかな」

「その名前はつけないように、よく覚えておかなきゃ」

 軽口を叩き、美南は口の端を上げる。カフェの大きな窓からは昼下がりの陽射しが降り注いでいる。この店の採光は抜群。その光は美南だけを照らしているわけじゃないけれど、私には彼女がいつもより明るく、輝いて見えた。恋に落ちた相手を見ているときみたいに。

「今日はすごく良い日だな」

 私が言うと、美南はふっと小さく息を吐くように笑う。丸くて角のない笑い方は、ひらがなの「ふ」をそのまま唇からこぼしたようにやわらかい。

 彼女から妊娠の報告を聞くような仲になれるとは、出会った当初には思ってもいなかった。私たちがはじめてまともに喋ったのは、警察署からの帰り道だった。その頃、私は当時の恋人に振られたばかりで、毎日死ぬことばかりを考えていた。


 ずっと、失恋して自殺するような女なんて馬鹿だと思っていた。ひとりの男との関係が終わったとしても世の中には他にたくさん男はいるんだし、恋なんていくらでも出来る。失恋なんてよくあることだ。どんなに辛くても苦しくてもみんな、そんなことくらい乗り越えている。

 喪失感を表すたとえに「心にぽっかり穴が開く」というものがあるけれど、私の心には本当に大きな穴が穿たれたようだった。平穏な状態の心が鍋敷きのように丸く平らなかたちだったとしたら、彼を失ってしまった直後の私の心は底のないサラダボールのようなかたちに変形していた。全神経を集中させて縁につかまっていないと、下方の暗い場所に簡単に滑り落ちていきそうだった。「あ、死のう」と、ふとした瞬間に思った。死を願う気持ちは決意とは違った。「あ、」の瞬間に意思はなく、タイミングやシチュエーションだけがあった。そのどちらもが揃ったときに、人はそれまで必死に掴まっていたサラダボールの縁から手を離してしまうのかもしれない。

 私は別れた元恋人のことばかりを考え続けた。考えたくなくても、私のことを一番好きだった時期の彼が自然に何度も思い出された。お互いを想う天秤のバランスが保たれていたあの頃。私の名前を呼ぶ彼の声、そのあとに、彼の唇が私の耳に触れるそれだけで、しあわせだったこと。 


「あ、」の瞬間は、鬱々と過去を振り返るひとりきりの部屋に度々やってきた。私は極力ひとりでいることを避け外に出て、生きるためにお酒を飲んだ。

 飲んで、吐いて、酩酊して誰かとセックスして、記憶をなくして、翌朝に言動を恥じてもやり場がなくてまた飲酒して全部吐き出して、そんな繰り返しばかりを続けていた。

 関係を持った相手に優しくされても、その喜びが持続することはなかった。その代わり、見下されることがあってもダメージが尾を引くことは少なかった。自分が関心を持っていない人間からされたことは、容易に流すことができた。もう会うことさえないのに私を傷つけるのはいまだに彼だけだったし、その傷を彼が癒してくれる日が再び来るのではないかと私はいつまでも心のどこかで期待していた。傷付けられた人に癒してもらいたいと願ってしまうのは、なんて厄介なことなんだろう。


 ある朝目覚めると、四方を透明なガラスに囲まれた部屋の中にいた。

 パニックになって声を上げた私の部屋の前に男性の警察官が駆け寄ってきた。彼は状況が飲み込めていない私をなだめながら、ここは警察署の中にある「保護室」だと説明してくれた。泥酔者を保護し収容するための部屋らしい。私は酔っ払って路上で寝ていたところを通報されて、連れて来られたのだという。「朝の五時までは出られないから」警察官は私にそう伝えると、あっさりと去っていった。自分がどうしようもなく惨めで恥ずかしく、部屋の隅で私は体を丸めて泣いた。


 朝、私は透明な部屋から出され署内の別の部屋へと連れて行かれた。一通り中身を点検されたらしい自分の荷物を受け取って、渡された用紙に住所と名前を書く。担当の警官が私に、誰かここまで迎えに来てくれる人はいないかと尋ねた。ひとりでは帰してくれないらしい。この二年間、恋人以外とまともに連絡も取り合っていなかった私には、朝の五時に警察署に迎えに来てくれる人間なんて心当たりがなかった。

 坂出美南さかいで みなみは、当時私が働いていた本屋さんのバイト仲間だった。それまで、シフト以外のことで連絡をとったことはなかったし、お店でも特別に話をする仲というわけではなかった。その程度の知り合いだったにも関わらず私が自分の狭く薄い交友関係から彼女に「お迎え」を頼んだ理由は、今後の人生でもう関ることがないだろうと思ったからだった。バイトには彼氏と別れたのを機にふっと行くのをやめてしまっていた。この先二度と会うことがない相手になら、どんな醜態を見せてしまったって迷惑をかけたって構わない。

 

「クソほど酔っ払ってまして、すみません」

「大丈夫? お水買ってこようか」

「それよりも、今はしょっぱい汁物が飲みたいです。お酒飲んだ後よく思うんですよ、自販機で、『あったか~い だし汁』が売ってないかなあって」

「のんべえだねえ」

 そう言って、坂出美南はふっと息を吐くように笑った。私たちは駅のほうへ向かう道を並んで歩いていた。彼女には、警察署から出るときだけ付き添ってくれれば助かるとさっき伝えていた。家まで送らせるのは忍びないし、恥ずかしい。迎えに来てもらってなんだけれど、できるだけ早く別れたいというのが本音だった。この先にある信号がおそらく分岐点になる。

「今日は本当にありがとうございます。ごめんなさい。こんな早朝に……」

「大丈夫だよ。いつもこのくらいの時間には起きてるから。旦那が朝早いの」

「ご主人、怒ってませんでしたか?」

「うーん、笑ってた」

「あの、バイトのことも……その、バックレてごめんなさい」

「もう、やめちゃうの?」

「うん、そうですね」

「そっか」

「すみません、それなのに、こんなときばかり連絡しちゃって」

「まあ、人生色々、事情も様々だと思うので」

 軽く下げた頭の上から坂出美南の優しい声が降ってくる。私はその言葉でまた、別れた元恋人のことを思い出してしまっていた。顔を上げた瞬間、まぶたの縁にたまっていた涙がこぼれた。慌てて顔を両手で覆い、その場にうずくまる。涙が手のひらを伝って滴り落ちてくる。まだこんなに泣ける。彼のことが好きで、好きで好きでたまらない。

「あー、あのですね坂井さん、私、彼氏にフラれちゃったんです」

 悲しくて苦しい気持ちの正体を口に出すと、分かってはいるけれど、あまりに間抜けだ。世の中にありふれたこんな事象でここまで打ちのめされている自分がみじめで、今すぐにこの場所から消えてしまいたかった。

 顔を覆った指の隙間から、坂出美南の足が見えた。彼女は膝をかがめて私に寄り添ってくれていた。

「私なんかが力になれるか分からないけど、宮下さんが良ければ、なんでも話してね」

 そう優しく言葉をかけてくれた坂出美南とはもう会うことがないから私は、彼女に促されるまま入った早朝のデニーズでこの恋愛のかっこ悪い顛末を話した。私のモノローグにも似た自分語りは卓上に置かれていたモーニングのメニュー表がランチのそれに変えられるまでとどまることがなく、私と彼女との関係は、それからもずっと続いている。

 

 あんなに苦しんだのに、今ではあの元恋人の顔をちゃんと思い出せるかどうかさえ自信がない。記憶はほとんどのっぺらぼうに近い。私が特別に薄情者だというわけではなく、それはわりと普通のことなんじゃないだろうか。過去の恋は、新しい恋で塗り替えられた。晴喜(はるき)に出会って、私はのっぺらぼうの元恋人を想う苦しみから抜け出し、今まででいちばんつらい思いをする日々の中にはまり込んだ。


「あの女、ちょっと頭がおかしいんだよ」

 晴喜の初めての浮気が発覚したのは、見ず知らずの女が私に非通知で電話をよこしてきたことがきっかけだった。そのクソ女は電話口で長々と自分と晴喜との恋愛関係について語り、私に彼と別れるよう求めてきた。

 すぐに晴喜に詰め寄ると、彼は自分の無実を主張し、女に責任を転嫁した。今では、そんなセリフはお得意のいいわけであるとすぐに分かるけれど、当時の私は彼が被害者なのだと本気で信じてしまった。相談に乗ってもらっていた美南からのアドバイスもはねつけて、二度目に同じことが起こっても、ただ彼の言い分を信じた。


 裏切られての、三度目。そのときに、当て付けのつもりで他の男とデートをした。その相手が祐一君で、彼とのデートはあおいちゃんにそのすべてを話したとしても許してもらえるくらい健全なものだった。それくらい私は晴喜に対して義理堅くしかいられなかった。祐一君と一緒に過ごしている間も、ずっと晴喜に会いたいとだけ思っていた。

 それ以降の浮気に関しては、もう私は無駄に足掻くことさえやめた。晴喜はどんなときも「被害者」ではないことは分かっていたけれど、私はそれでも彼を許した。腹の内では浮気相手の女どもへの憎悪の炎がいつでも燃えていた。

 数え切れない浮気がやっと終わりを迎えたのは、去年の秋のこと。心はもうぼろぼろになっていながらもまた晴喜を許そうとした私に彼が言った。

「ごめん。これからは、あっちと付き合っていきたいと思ってるんだ」

 晴喜をなじる言葉はいくらでも出てきた。私から始まる私のターンだけの古今東西「罵詈雑言」はいつまでも終わらなかった。別れを告げられた瞬間から、私は晴喜を憎んでいた。いや、正確に言えば私はその時に、自分が今までずっと晴喜を激しく憎んでいたことに気が付いた。

「私もAVやって自殺しようかな。かわもと遥みたいに」

 それまでずっと言いたくても言えなかった女の名前を晴喜の前ではじめて口にした瞬間、相手の目つきが変わるのが分かった。


 晴喜との恋愛を今振り返ってみると、小学生の男の子が描いた一ページ漫画みたいだな、と思う。最初のほうのコマだけはしっかり書き込まれていて、大げさなあおり文句で壮大な展開を予感させるけれど、コマが進むとだんだん絵柄もストーリーも雑になっていって、最後は整合性のない結末でプツッと終わる。晴喜はたぶん私に対してだけでなく、それまで付き合ってきたほとんどすべての女の子に対してそういう漫画を見せてきたんだと思う。かわもと遙も「ずっと一緒にいようね」と抱き寄せられ、「世界でいちばん君が大切」と言われた直後に浮気をされたあげく、突然不条理にラストシーンをつきつけられたんじゃないだろうか。

 晴喜と付き合ってから私がいちばんはじめにやったことは、相手が過去に交際していた女について探り、把握しておくことだった。売れないモデルをしていた晴喜について検索すると、ネットの掲示板がその頃には既に死んでいた「かわもと遥」との関係を私に教えてくれた。自殺したAV女優。晴喜と付き合っていたときはまだ、ただの大学生だったらしい。

 

 私はかわもと遙が世の中に公開した文章にたぶんすべて目を通している。この女は晴喜の人生だけでなく、身のまわりのものすべてに弊害を撒き散らすスプリンクラーのような馬鹿だった。仕事の愚痴やネガティブな心情が延々と綴られるプロ意識の低いブログ、攻撃的な言葉が投稿されてはすぐに消されるツイッター、彼女は、自身がいつでも死にたくなる最悪な仕事に就くいつでも死にたい頭のオカしい人間であると、さまざまな場所で吐き捨てた。自傷の痕が分かる手首の写真や精神科でもらった処方箋を載せることもあった。

 彼女はそういう場所にある日、実名で晴喜のことを書いた。ふたりで撮った写真まで載せて彼が自分をここまで追い込んだと非難した。彼女は晴喜を一方的に加害者扱いし、自分が男性不信になったことも自暴自棄でこの業界に飛び込んで自分の人生がめちゃくちゃになったことも自分の頭がオカしくなって毎日死にたいと思っていることも全部を晴喜のせいにした。

 それを読んで激しい怒りに震えたのは私だけではなかった。

 当時ネットを通して彼女を見ていた物好きで俗悪で良識的な人間が一斉に彼女を批難した。

 死にたいなら勝手に死ねよ肉便器、最低なのはお前のほうだ死ね、いつまで生きてんの? 死ね、死んじゃえー、死ね死ね死ね、死にたいなら死ねよ、お願いします死んでください、死ねばいいと思うよ。そう言われてそのまままに、かわもと遙は死んだ。

「生まれてすみません、死にます。」それが、彼女の最期のセンテンスだった。

 救いようのない馬鹿な女。私には晴喜が不憫で仕方なかった。

 こんな女の味方をしてくれる人間なんてもちろんいなくて、一連の事件のウォッチャーたちも、晴喜のことは頭のオカしい女の被害妄想に巻き込まれてしまった不運な元恋人という見方をしていたようだったけれど、それでも、こんな女と付き合っていた恥ずかしい過去を見ず知らずの人間にまで知られてしまうなんて、どんなに悲惨な話だろうか。

 晴喜がこれからどんな風に生きていったって、彼のことをちょっと調べればこの話題がいやでも上がってくる。最悪なデジタルタトゥー。晴喜を知る人間であれば、どうしたって彼の後ろにこの女の亡霊を見てしまうのではないだろうか。可哀相な晴喜。私はこんな女とは違って晴喜に迷惑をかけたりしない。晴喜を傷つけたりしない。私は傷付いた晴喜のことを癒してさえあげられる。私と一緒に居さえすれば、晴喜はつらい過去も忘れることができる。私と一緒にいたら、きっと晴喜はしあわせになれる。私は晴喜をしあわせにするし、そうすれば晴喜も私をしあわせにしてくれるはずだ。晴喜とともに浮かぶのは、寄り添うのは、他の女ではなく、私。私しか存在してはいけない。絶対に。


 私は、晴喜としあわせになるためにずっと我慢をし続けた。浮気をされても、冷たく当たられても、連絡を取れない時期が続いても耐え抜いた。服装や言葉遣いに難色を示されればすぐに直し、私は晴喜の気に入るような振る舞いばかりを覚えていった。

 晴喜はたびたび私に「愛してる」と伝えてくれた。私はそれを疑いもしなかった。

 付き合っている間、共に過ごす時間は夢のように輝き、ひとりになった途端に私はたまらなくむなしくなった。どこか恥じ入るような気持ちで毎日を泣いて過ごした。晴喜と会っていないと気が狂いそうだった。他の女と一緒にいるのではないかと心配で仕方がなく、私は憤りと寂しさを不安定に行き来しながら泣き通して何度も朝を迎えた。

 それでも耐えていたのは、晴喜は私のことをいちばんに愛していると思っていたから。このまましあわせになれると信じていたから。

 

「緑色の死体になっちゃったんでしょ?あはー」不自然なほど高いテンションで私は硫化水素自殺を遂げたかわもと遥の話を続けた。

 晴喜の好みにならって従順で温和に振る舞うことに努めていた私が、別れを切り出された途端に態度を変えたことは晴喜にとってまだ想定内だったようだけれど、かわもと遥のことを言われたのは相当意外だったようで、「よくそんなこと言えるね」と吐き捨ててきつく顔をしかめた。


 かわもと遥のことを知っても、もちろん晴喜にはずっと黙っていた。それはあまりにもナイーブな問題だったし、私までもが晴喜の後ろにあの女の亡霊を見ていることを知ったら彼を傷付けてしまうだろうから、墓場まで持って行くつもりで今まで胸のうちにそっとしまっていた。だけど、私のことを愛さず、裏切った男なんてもういくら傷つけても構わない。関係が終わるなら、きれいにまとめたって木っ端微塵に破壊したって一緒。不平不満と嘘と秘密でもう骨壷の容量もいっぱいだ。

「死ねよカス! どの口がそんなこと言ってんだよ。女死なせといてキレイぶってんじゃねえよ。お前が付き合う女なんて全員生きてる価値もないメンヘラのクソビッチかもしれないけど、マジでお前がさらに女の頭オカしくさせてるからな。全部お前のせいだから。お前の精液に女の頭オカしくさせる成分でも入ってるんじゃないの? マンコだったら何でも突っ込むド畜生だからチンコもキチガイになってんだよ。性病撒き散らすだけじゃなくて精神病まで撒き散らしてんじゃねえよ、クソ汚ねえ病原体。AVクソビッチもお前のせいで精神ぶっ壊れて死んだんだろ。あたしもお前のせいで頭オカしくなったわ、このメンヘラ製造機が!」

 私はずっと、かわもと遥の亡霊に悩まされていた。

 目立って美しいわけでもなく軽薄で尻軽な頭のオカしいクソビッチは、その奇行によって晴喜に彼の恋人史上最も強いインパクトを残したというただその一点で私をおびやかした。

 私は今までの恋人や他のどんな女よりも晴喜にいちばんに愛され、その心に深く入り込めることを願っていた。晴喜の心を私だけの場所にしたかった。生きている女は晴喜と別れればまた違う場所に行ってしまうけれど、死んだ女はいつまでもそこを動かないような気がしていた。


 かわもと遥についての情報を収集することは、自傷行為だった。晴喜とのツーショットの残像は、いつまで経っても頭から消えることはなく私を苦しめ、今まではなんでもない日だった一日が彼女の命日であるということを知っただけで不吉な記念日に代わった。かわもと遥のことを知るのは嫌でたまらなかったのに、同時に、かわもと遥のことを知らないと居ても立っても居られない自分がいた。私はかわもと遥に、晴喜がかつて愛したことのある他の女たちや、気まぐれに手を出す女たちの姿さえも投影していたように思う。彼女はそれらの象徴だった。

 あおいちゃんが私に会いに来たとき、私は、自分が彼女にとってのかわもと遥なのではないかと感じた。濃度は違ってもおそらく、私たちが抱いていた気持ちの成分は一緒だろう。

 かわもと遥がもしも生きていたなら、私は彼女に会いに行ったのだろうか。DVD販促イベントなんかにしれっと参加して、晴喜のことを尋ねるような嫌がらせめいたアプローチをしたかもしれない。もしくは、もっと友好的なコンタクトをはかっただろうか。それは何故だか私にとって少しだけ愉快な想像だった。あおいちゃんは、かわもと遥に会いに行った私だ。

 彼女に連絡先を訊いたのは、かわもと遥に会いに行った私がそこからどんな風に相手を手なづけていくのかを知りたかったからかもしれない。

 

 晴喜と別れたあとで、私は彼から数十万の金を受け取った。ワガママで気が強く自己中心的な晴喜が自発的に手切れ金なんか払うわけはなく、私は彼に妊娠していたと嘘をついて堕胎の費用と慰謝料を請求したのだった。ずいぶん揉めた末でのことだったが、私の言葉だけでそれを信じて金を出してきた晴喜は馬鹿なのかそれとも、彼に呪詛の言葉を喚き散らし事務所や親にバラすと詰め寄った私から逃れたかっただけだったのだろうか。半々かなと私は考えている。

 あおいちゃんにこのことを話すと「そんな話を証拠もなくすぐに信じるなんて、きっとはじめてのことじゃないんでしょうね」と忌々しげに吐き捨てた。

 あおいちゃん大正解。私が知っているだけでも晴喜はふたりの女にこどもを堕ろさせている。私に嫌がらせの電話を掛けてきた浮気相手の名前も知らないクソ女と、かわもと遥。

 

 晴喜から茶封筒を受け取った瞬間、私は嗚呼、死ななくて良かったと、思った。

 恋に病んで死んだ女を批難し憎しみ続けていた私はそれでもやはり、晴喜にふられたときもまた、死にたいと思っていたのだった。

 たいしたことない容姿で、馬鹿で尻軽で、男に依存して執着して、被害者意識が強くて、誇れるような自分がないくせに自己顕示欲だけは強いかわもと遥は私とすごく似ていると思っていた。

 晴喜には、かわもと遥はお前のせいで死んだとなじったけれど、私は本音ではそうは思っていなかった。底のないサラダボールの縁から手を離したのは彼女自身だ。

 悲しみなんて乗り越えなくても良かった。誰かに馬鹿にされても真に受けずに無視していれば良かった。かわもと遥が生きていても死んでいてもどうせみんなすぐに彼女のことなんて忘れてしまう。正論を振りかざしたり、右にならえで悪戯に彼女を叩きのめしたりしたのだって、ただみんなあの日の暇をつぶすおもちゃを見つけて喜んでいただけに過ぎなかったのに。

 私は、晴喜を不快な気分にさせるためにかわもと遥の名前を出したとき、いつか私もこんな風に、誰かに自身の死を貶められてしまったら嫌だなと思っていた。

 身を裂くような辛さに襲われ孤独で夜も眠れなくて悩み苦しみ抜いて選んだ死だったとしても、自分が死んでしまったあとではそれを誰の口からどんな風に語られても反論さえ出来ない。ただ大きな穴に落ちないように、必死に這いつくばっているだけでも、見ず知らずの他人に自身の死を馬鹿にされたり、都合の良いように利用されたりするよりはマシなのではないだろうか。

 かわもと遥も、私みたいにすれば良かった、あんな奴のために死ぬことなんてなかった。

 泥試合を仕掛けても自分のことだけを考えて図太く強く生きていれば晴喜のことを乗り越えてもっと賢くなることも、しあわせになることだってできたかもしれない。


 打ちのめされて弱った人に向かって、強くなれ、と言うのはむごいことだと思うが、だけれどそれは本当で、強くならなくては生きてもいけないというのは、なんて残酷なことなんだろう。誰かを失うたびに砕けた心の再構築を試みると、心は以前よりもずっと強く強く強くなってしまう。不信という壁は厚くなり自己愛の柱はいよいよ強度を増す。もうこれ以上、強くなんてなりたくないのに。


 私とかわもと遥は確かに似ていたと、今もやはり思う。だけれど、私たちははっきりと違う。私は生きていて、彼女は死んだ。私は自分の真っ赤な血を守るためだったら彼女の死を暴力的に踏みにじることも厭わない。私はかわもと遥にもそうして欲しかった。彼女の手の内には切り札になるようなカードはなかったかもしれないけれど、それでも、晴喜を憎み罵倒し続けて傍観者を閉口させてまわりを全員敵にまわして嫌われまくっても、自分が満足する着地点を見つけて欲しかった。

 どうせ私たちみたいな種類の女は周囲から疎まれているのだし、思い通りにならない毎日に歯ぎしりし続ける毎日を送っている。馬鹿で性悪な人間が、中途半端に世の中の美徳に迎合しようとして死を選ぶほど追い詰められるのだったら、アンモラルにスカッとする一瞬を見つけ生き長らえることの何がいけないのだろうか。

 かわもと遥の中にもそんな瞬間がやってきていたら、私は今、彼女と笑顔でハイタッチさえできたような気がする。


 私は自分が底のないサラダボールの中に滑り落ちてしまうくらいなら、他人を蹴落としてでもそこに足場を作ることをこれからも選んでいくだろう。自分が傷付き尊厳を失うくらいなら、そちらの方が百万倍マシだ。健全な判断力を持つ他人が私に意見しようとも、この件は私の中ですでに解決済みの事柄なので、どこの誰が私にどんな説得を試みようと、私がこれを再び問題として取り上げることはない。私に対しての苦情を受け付ける機関は二十三年前に営業を停止した。私に反論するすべての人間は悪質なクレーマーである可能性が高いので今すぐ適切な施設にてカウンセリングの予約を取ることをおすすめする。うるさい、私が正義だ!

 どこの誰が私に文句をつけてきたって、私は、生まれてきたことを詫びたりなんてしない。生まれてすみませんて言えなくてすみませんと悪態をついてでも私は、生きていく。

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