第533話
異世界11ヵ月と22日目。
一夜明けて、船内の3段ベッドで目覚めると、何故か狭い隙間にフェリンシアが潜り込んでいた。
身体に巻き付いた手足を、ソッと解いて、音も無く床に着地した。
何時もの装備に着替え、コクピットへと向かう。
マップを確認すると、空中のドローンはかなりの範囲まで広がったらしく、海渡達のアンコウ君0号機の周囲のマッピングは、既に完了していた。
現在位置の周囲には、島が数個表示され、更にその先に、1つ大きめの島を発見した。
「ふむ、これかな?」
と呟き、ドローンの撮った実画像を確認したが、夜間の映像だったので、ハッキリとはしない。
画像に補正を掛けてみると、船着き場とその奥に何やらそれっぽい物を発見した。
ふふふ、これで間違いなさそうだな。
オートパイロットの進路と停止箇所を微調整して設定し、食堂へと向かった。
今日の朝食は、ここの漁港で仕入れた魚で作る、海鮮丼にする事にした。
まずは、酢飯を作る為に、シャリを炊く。
炊き上がった、シャリを、大きめの木桶3つに移し、送風機で湯気を飛ばしつつ、酢や砂糖を混ぜた物を合わせて行く。
大きなシャモジと団扇も併用して、サクサクと木桶3つの酢飯を作り上げた。
次に、巨大なバチマグロ(正式名称は『バッチリマグロ』らしい)を解体し、部位毎の柵を作って行く。
そして、熱が入らない様に時々手を水で冷やしつつ、身を切り分けて行く。
骨の隙間の部分をスプーンで、身を集めて、丼に集めて置く。
次に、巨大な黒鯛を3枚に卸し、同様に身を切り分けて行く。
最後に、巨大なブリもあったので、同様に解体して、身を切り分けた。
「海鮮丼はこれだけ種類あれば、十分だよね?」
余った内臓以外の部分を、ブツ切りにして、巨大な寸胴に入れ、水で満たして、加熱し始める。
更に、思い付いたので、巨大なイセエビを適当にブツ切りにして、その寸胴に投入する。
小ネギを沢山洗って刻み、準備は完了。
後は煮込んだ後に、味噌を溶けば、海鮮味噌汁の出来上がりである。
待って居る間に、買い置きのわさびを出して、おろし金で摺り下ろす。
丼を人数分以上に用意して、濡れ布巾を捲って酢飯を丼に盛り付けて行く。
酢飯の上に、大葉を敷いてその上に切り分けた刺身をドンドンと並べて行く真ん中にはスプーンでこさぎ取ったネギトロ部分をコンモリと盛り付けて、上から刻んだ海苔を振りかけて完成。
「うん、美味そうだな。」
出来上がった海鮮丼と余った酢飯や刺身は一旦アイテムボックスに収納し、付け合わせの出汁巻き卵を焼き始める。
「しかし、料理スキルのカンストって凄いなぁ。
こんなに美味しそうな出汁巻き卵が焼ける様になるとは。」
と自分の事ながら、感心する海渡。
これも適当なサイズに切り分けて、次々に焼いて行く。
そろそろ、寸胴の方が良い感じになってきたので、灰汁取りを丁寧にして、火を止めて、途中で味見をしながら、丁度良い感じに味噌を溶いて行く。
海鮮味噌汁も完成。
最後に付け合わせのお漬物を用意して終わり。
冷めない様に、全てをアイテムボックスに収納して、全員が起きて来るのを待つのだった。
朝食が完成するのを待って居たかのように、ポツリポツリとみんなが起きて来る。
「あ、兄貴、おはようございます。相変わらず早いっすねw」
とラルク少年達。
「「「「「「ボス、おはようございます。」」」」」」
と他の弟子ズも起きて来た。
「ミケ、悪いんだけど、フェリンシア達や、ドナサンさんとクラリアさんを起こして来てくれない?」
「うちらは、既に起きて来たで?」
ステファニーさんやフェリンシア、ジャクリーンがやってきた。
「ふふふ、じゃあ、ミケ、ドナサンさんとクラリアさんをお願い!」
海渡は、カウンターのトレイの上に海鮮丼と海鮮味噌汁と付け合わせの出汁巻き卵やお漬物のセットを並べて行く。
「今朝はここの漁港で仕入れた材料で、海鮮丼にしてみました。」
と海渡が言うと、
「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」
と歓声が上がる。
眠そうな2人を連れて、ミケも戻って来た。
全員で、いただきます をして海鮮味噌汁を飲むと、
「うぉー、良い味出てるなぁ。」
と自画自賛する海渡。
「ほんま、この味噌汁美味しいで。」
とステファニーさんも絶賛。
眠そうだったドナサンさんとクラリアさんも味噌汁を一口のんで、一気に目を見開いて、ガツガツと食べ始めた。
「いやぁ~、毎度やけど、滅茶美味かったばい。」
「おねーさんも、胃袋掴まれて、メロメロばいw」
とご機嫌なお二人さん。
食後のお茶を飲みつつ、まだ食べて居る某女性陣を待って居る間に、
「あ、そうだ!
目的地の島の事なんですが、この島で間違いないですか?」
と端末に表示された、島の画像を見せると、
「ああ、こればい! 間違んなか。」
とドナサンさん。
「そうですか。じゃあ、あと30分ぐらいで、到着ですね。」
と海渡が言うと、
「もう着くってか!」
と驚きながら、クラリアさんと2人でゴニョゴニョと話し合っていた。
確かに、帆船と比べると、雲泥の差だよね。
本当は飛行機使うともっと早いんだけどね。
そしてこの時の2人の会話内容だが・・・ステファニーさんや、ケモ耳ズには劣るけど、海渡の聴力であれば、そのヒソヒソ話の内容ぐらいは丸っと聞こえてしまっている。
つまり、ここまで海渡が見せてきた実力を鑑みるに、この先の階層に行けないこの状況を打破出来るのではないか?と言う希望である。
そうすれば、現在、開店休業状態のシーカー達に取っては、手を合わせたくなる程の救世主となる・・・と言った内容だった。
後片付けをして、コクピットへと移動し、艦上空を先行しているドローンからの映像を表示すると、目的地の島が見え始めていた。
島周辺の海域は、上空からの映像でも判るが、遠浅でそのまま進むと座礁しそうである。
海渡は、アンコウ君0号機の速度を落とし、上空から上陸する事にしたのだった。
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