第532話
突然船の真横に浮上してきたアンコウ君0号機に騒然とする船員達。
中には銛を片手に立ち上がり、今にも投げそうになっている者も居たが、慌ててミケが止めて、
「ご安心下さい。あれは我々が乗って来た船ですから。」
と説明していた。
海渡は船に横付けして、ロープを投げて固定し、ポンとジャンプして、乗り移った。
それに追従し、残りのメンバーや、ドナサンさんとクラリアさんも乗り移って来る。
「やあ、ご苦労さん。」
とケモ耳ズに声を掛けると、
「ボス、お疲れ様です。治療の方は全て完了し、多少出血で体力を失っている者もおりましたので、ハチミツ水を飲ませてます。」
と現状を報告して来た。
「そうか。まあ全員無事だったのは幸いだったね。」
と海渡がホッとした表情になる。
向こうから、3人の船員がやって来て、真ん中の一際ガタイのゴッツいオヤジが顔をクシャクシャに緩ませつつ話掛けて来た。
「おう、こん度は、ヤバか所を助けて盛ろうて、ほんなごつ助かったたい。
俺ぁ、こん船ば任されとる、船長のガルタたい。
ほんなごつ、ありがとう。」
と頭を下げて来た。
「いえいえ、死者が出なくて幸いでした。
俺は、カイト・サエジマと言います。
船のマスト折れちゃいましたね。
大丈夫ですか?」
と聞いてみると、ガルタさんが顔を歪ませる。
「いや、これはかなりマズかとたい。
ばってん、ここじゃあ、どうしようもなかけん、一旦戻るかせんといかん。」
メインマストをやられたので、補助マストだけだと殆ど速度が期待出来ないらしい。
また魔石による補助動力も、そんなに長くは保たないらしく、どっちにしても、かなり拙い事には変わりが無いと。
「ふむ、じゃあ差し出がましいかとは思いますが、俺の方で修理しましょうか?」
と提案してみると、
「ほんなごつか!? 坊主、修理できっとか?」
と目を血走らせつつ、ガシッと両肩を掴まれてしまった。
「ちょっ! 痛いからw
ええ、修理出来ますよ。」
と言う事で、早速修理を依頼された。
まあ、これは簡単なんだけどね。
聞くと、ディープ・オクトパスの襲撃は、数十分前との事だったので、サクッと船だけを限定し、1時間前に戻すイメージで『リワインド』を発動すると、船がボワンと光り、ビデオを逆再生するかの様に数秒で1時間前の姿に戻ったのだった。
あまりの事に、ポカンと口を開けたまま固まってしまっているガルタさんと船員達。
ドナサンさんとクラリアさんも同様に固まっている。
そして、一瞬遅れて、
「「「「「「「「すっげーーー!!」」」」」」」」
と言う絶叫が海に響くのだった。
その後、矢継ぎ早な質問等を躱しつつ、何とか早々に船を離脱して、再度南南西に向かって進むのだった。
「やっぱ、あんたら、凄かねぇ~。
俺らん常識ば、軽く超えていきんしゃーもん。
そんで、食い物も美味しかし、何とも堪らんばいww」
と言いながら、クックックと苦笑するドナサンさん。
「ほんなごつ、坊やばってん、豪快で、よか男たいw」
とクラリアさんも笑っていた。
道草を食ったので、現在推力100%まで引き上げて、オートパイロットで海中を進んでいる。
途中何度か、大きな魔物の反応があったが、特に遭遇戦に発展する事なく、また追従される事も無くスルーしている。
中型程度の魔物や魚等は非常に多く出会っているが、向こう側から避けてくれるので、問題ない。
「うーん、これは今日中には辿り着かないかなぁ。」
夕方5時の段階で、海渡がこの先どうするかを思案し始める。
まあ、夜間でも速度を落として、オートパイロットで進むのは良いのだが、問題は地図データが無いので、島の位置が判らない事である。
そりゃそうだな・・・ザックリと指差した方向に向かって進んでいるだけだし、1°のズレがあった場合、10km先では大きな差となって現れる。
ましてや、ここの広さも何も判らずに進んでいるんだから、当然だよな・・・と海渡は考えて、夕食までの1時間はこのままのペースで進み、夜間は20ノットぐらいに落としてオートパイロットで進む事にした。
「なんか、珍しか物ば食いたい!
食うたことんなか、美味しいもんがよかたい!」
とドナサンさんからの無茶振りが来た。
「えー!? 珍しい物ですか。
うーーん、何だろうか?」
海渡は、暫く考えた後、食堂のテーブルの上に、ハンバーガー、コロッケ、タンカー・ホエールのステーキ、マジックマッシュのスープ、ウニ丼、たこ焼き、お好み焼き等をズラズラと並べていった。
すると、目の色を変えて、テーブルの上の食事に食い付いて行った。
「ムシャ・・・こ、これは何ね?」
と食べながら、聞いて来るドナサンさん。
「ああ、それはハンバーガーと言って、ミンチ状のお肉を焼いて、パンに挟んだ物ですね。その横はコロッケ、ポテト・・・ジャガイモを茹でて潰し、炒めた挽肉と塩胡椒で味付けして混ぜて衣を付けて揚げた物です。
その次は~~」
と説明して行く。
そして、海渡達も一緒にこの突発的なビュッフェ形式に参戦し、銘々が好きな物を取って食べ始めた。
ドナサンさんとクラリアさんはタンカー・ホエールのステーキを食べて、絶叫していた。
「も、もう食えんばい・・・ これ以上は勘弁してー」
とポンポコの腹を突き出して、椅子に浅く座るドナサンさん。
いや、別に強制はしてないのだがw
しかし、なんやかんや、言いながらも、全種類食べきったのは凄いなw
と内心思いつつ、苦笑する海渡。
その隣に撃沈しているクラリアさんは、底なしに食べて居るフェリンシア、ステファニーさん、そしてケモ耳ズを見て、
「あんた達の胃袋は、どげんなっとうと?
なして、そげん食べられるとね?
そげん、スリムやのに・・・」
と理不尽そうに絶叫していた。
「ああ、それは俺も同感だなw」
と海渡が呟くと、横でジャクリーンやラルク少年達もウンウンと頷いていた。
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