第530話

 ダンジョンの階段を降りると、そこは街の中だったww


「いやぁ~、何か凄いな。

 もうダンジョンの中って気が全くしないね。」

と海渡が振り向くと、フェリンシア達もポカンと口を開けて呆けていた。


 海渡は、取りあえず、マッピングの為、ドローンを大量に放出した。


「それ、なんしよーと?

 ばんば、空に出したんね?」

とドナサンさんが興味津々に聞いて来る。


「ああ、これはドローンと言って、予め決めたルールで独自に判断して空を飛び、地形を読み取って地図を作る為の魔道具ですね。

 あと、これの水中版もあります。

 で、撮ったデータを基にして、端末で地図が出来るんですよ。」

と端末を出して、上の階層の地図を出してズームしたりパンして説明すると、


「ほぇー! ほんなごつ、カイト君は賢かねぇ~。

 料理も美味いし、おねーさん、メロメロたい!」

とゴージャスな胸の凶器を強調しつつ、海渡の方に寄りかかろうとするクラリアさん。


 そんなクラリアさんに、フェリンシア、ステファニーさん、ジャクリーンが、左右と後ろから、ガッと海渡にくっついて抱き込み、


「ダメです! 海渡は渡しませんからね!」

「アカンで!」

「ダーリンは渡さない!!」

と威嚇し始めた。

 ミケ達ケモ耳ズもガッと海渡の前に立ち、シャーーと猫が毛を逆立てる様な雰囲気で、威嚇をする。


 海渡は、「ははは・・・」と諦めに似た渇いた笑いを漏らす。


 すると、ドナサンさんが

「ヒュー♪ やるねぇ~」

と口笛を吹いて、ニヤニヤと茶化して来た。


「おお、こわっ! じょ、冗談たい!」

とクラリアさんが後退りながら言うと、8名は威嚇を解除したのだった・・・。


「坊主! お前、モテんなぁ!!

 羨ましかばい!!」

と海渡の横に来てウリウリと指で突いて来るドナサンさんがやや鬱陶しい。


すると、クラリアさんが、

「ダハハ!!! ドナサンは、モテんけんねぇ~。」

と腹を抱えて爆笑する。


「しぇからしかばい!(うるさいよ!)」

と言いながら、ドナサンさんが拗ねたのだった。


「しかし、ここまで立派な街があるとは、本当にビックリだな。」

と街の屋台を荒らしつつ、呟く海渡。


 この階層は、農耕&酪農エリアと言う事で、出てる屋台も肉串や肉を挟んだサンドイッチ系が主流であった。


 話によると、この階層は当初は狩り場ぐらいの感覚だったが、この下の第14階層が発見され、念願であった塩や魚介類を求め、人々の流入が始まった事が切っ掛けだったらしい。

 下の階層の繋ぎとなるこの階層も、中継基地が出来て、それが街となり、徐々に農作物や、豊富な牧草等を利用した酪農に発展したのだと言う。



「さて、取りあえず、次の階段までは遠いらしいから、サクッと飛行機で行くか。」

と街の城壁の外の空き地にヒラメ君0号機を出し、サクサクと乗り込んでステルスをONにして飛び上がった。



 眼下を流れる雄大な牧草地や水田、畑を眺めつつ指示された方向を目指して飛ぶ事1時間。

 漸く前方に街が見えて来た。

 即座に速度を落として降下し始める。


「おお、ここも結構栄えてるね!」


 第13階層の入り口から約600km離れた場所に、第14階層への階段の街があった。

 この街も中継基地として派生した街らしく、かなり賑わっている。


 どうやら、第14階層は海に面した大きめの島ではあるらしいが、居住可能な区域が足り無い又は値段的に高いらしく、こちらに住居を持って、通う人もいるらしい。

 その為、朝と夕方は、階層の階段が滅茶滅茶混むらしい。

 なるほど、都内の会社に千葉や埼玉から通う感じと同じか。


「出来んやったら、階段ば、拡張したいぐらいたい。」

とドナサンさんが言っていた。


 ピークを過ぎた時間帯ではあったが、それでも階段はかなりの人の行き来があって、実に大変だった。


「毎朝夕、これ以上だとキツいですね・・・。」

とジャクリーンが想像しただけで、ブルーな表情をしていた。




 そしていよいよ、お待ちかねの第14階層!!

 階段から、第14階層に出ると、風から潮の香りがしていて、正に海の街と言った雰囲気である。


 さて、街の雰囲気だが、実に凄い。

 階段の出口は、山と言うか、丘と言うか、斜面に出ているのだが、その斜面に沿って、所狭しと建物が建っている。

 何処だろう、ギリシャか何処かの島の写真でこんな風景を見た事があった気がするなぁ。


 建物の色は白で統一されていて、実に素晴らしい眺めである。


「これは、見応えある風景ですね!

 いやぁ~素晴らしい。」

と海渡達は暫し、その風景に見入っていた。


 海鳥に似た鳥の魔物なんかも飛んで居る。


「あれは人を襲ったりしないんですか?」

と海渡が聞くと、


「ああ、あのアホー鳥は、要らん魚の内臓とかを食うてくれるけん、放置ばい。」と。


 なるほど、棲み分けが出来て居ると言うか、上手く共存している感じなんだな。


 階段の出口付近で、また大量のドローンを飛ばした後、斜面の道を下って行く。


 さて、この街だが、話によると、最初は塩を求め塩田を作ったりしていたらしいが、徐々に漁業の為の漁港を作ったりと、移り住む人も増え、いつの間にか立派な街になったらしい。

 更に現在は海産物の加工工場や、造船所もあって、それに伴い、人も増え、その分、宿屋、飲食店、洋品店なんかも増えたとの事。


 勿論屋台の品は焼き魚がメインであった。

 そんな屋台の店で買い食いをしながら、港へと向かう。


「ところで、次の階層の階段って何処にあるんですか?」

と海渡が聞くと、海を越え、遠く離れた島にあるらしい。


「だけん、飛んで行くか、向こう側へ行く定期便の船に乗るか、船をチャーターする感じたい。

 どげんするね?」

と聞かれ、


「ふふふ、じゃあ、取りあえず、港まで行きましょう。」

と海渡がニヤリと笑いながら、先を急ぐのだった。

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