第522話
異世界11ヵ月と18日目。
一晩で、第11階層のマッピングが完了し、朝から第11階層来ている。
「ボス、この池のマッピングが完了したとの事ですが、どうやって攻略しますか?」
と真剣な表情のミケ。
フェリンシアは、既に全然乗り気ではない。
海渡が、「泳がなくても大丈夫だから」と無理矢理連れて来た状態である。
「ふふふ、諸君、安心してくれたまえ。
泳ぐ必要は無い。・・・多分・・・。」
と高らかに宣言した。(最後の言葉だけ小さい声になったが)
地底湖の上に飛び、水面にアンコウ君0号機を静かに取り出した。
「ジャジャーーーン! 今回はこれで移動します!」と。
「「「「「「「「「「おぉーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」
と声を揃える10人。
「海渡!これ、何ですか!?」
と途端に目を輝かせるフェリンシア。
「ふっふっふ、これは、潜水艦と言って、水中を飛行機の様に移動する船です。
名付けて、アンコウ君0号機!!」
と自信満々に説明を開始したのだった。
まあ、ネーミングは兎も角、10名全員が目を輝かせ、船外や船内、機能、性能の説明に聞き入っていた。
「なるほど、ほな操縦自体は、飛行機とほぼ変わらん感じやな?」
とステファニーさんが確認して来た。
「まあ、そうなんだけど、一つ大きな特性の違いがあってね、基本推力が無い状態・・・つまり例えば海流に流されている状態とかだと、舵は効かないんだよね。
あと、自動車とかと違って、飛行機の様にスポイラ的な物はあるけど、即座に止まる訳ではないので、注意が必要。」
と相違点や注意事項を上げた。
「まあ、何隻か生産ライン動かして作ってるから、べつの機会にでも各自操縦に慣れてね。
ここだけじゃ無くて、海でも使えるし。」
と言うと、
「「「了解~♪」」」
「「「「「「「イエス・マイ・ロード」」」」」」」
と2種類の返事が返ってきたのだった。
そして、全員が乗り込んだアンコウ君0号機が静かに地底湖へと潜行して行く。
マッピングされたこの地底湖だが、大きな楕円形状で、空間は完全に水没している。
つまり、上昇しても空気の層が存在しないのである。
しかも、真水で水温は0~4℃辺りと非常に冷たい。
楕円は長い直径が約270km、短い直径が220kmで、平均深度は58kmもあった。
マッピングが完了したデータを見た時、海渡は「これ、絶対にクリアさせる気0だよなw」と苦笑いした程である。
更に、水中植物系の魔物や、淡水系のサメの魔物、レイク・サーペント、シザー・ザリガニ等の巨大魔物も居る。
水中植物系の魔物が結構厄介で、近付く獲物に向けて藻の様な触手を伸ばして絡め取り、千切ったり、ユックリ溶かしながら吸収したりする。
また、サイズ的にはレイク・サーペントはアンコウ君を丸呑み出来るし、シザー・ザリガニは、船体をその巨大な挟みで挟む事が出来る。
サメ系の魔物は、キラーバイト・シャークと言う、極悪な牙と顎を持つ奴で、全長7m前後でオークぐらいなら、丸呑み出来るサイズの口を持つ。
あと、サンダー・シャークは、ヌメヌメとした長い身体に獰猛な牙を持つサメだが、見た目と攻撃はまんま電気ウナギ。
近付いた獲物を電気ショックで心臓麻痺させたり、硬直させ、その獰猛な歯の餌食にする。
何故この見た目でシャークと名が付いたのか、不思議に思える存在だった。
まあ、他にも細々とした魔物は居るのだが、雑魚なので問題は無い。
この地底湖だが、何故か幾ら潜っても、非常に明るい。
どこからともなく光が入り込んでいて、ほぼ船外ライトは必要が無い。
「兄貴、第12階層への階段の在処って、目星ついてるんすか?」
とラルク少年が聞いて来た。
「うーん、それなんだよね。
マッピングを終了してて、データを見たり、フィルタリングで絞ってみたりしたんだけど、怪しげな所が見つからなくてさぁ・・・。」
と海渡。
「え? じゃあ、どうするんですか?」
とミケが聞いてきた。
「うん、だから、怪しい感じが無いか、ドローンが見落としているか、もしくは隠されているかのどれかだよね。
まあ、せっかくだから、グルッと円周を廻ったり、横穴が無いかをアクティブソナーで探ったりかなぁ・・・。」
と答えると、なるほど・・・と首を傾いでいた。
でも、ドローンの見落としって、多分無いと思うんだよね。
と言う事は、ドローンが普通の壁と思った所が偽装されてる扉とかって可能性を疑っているんだけど、実際に目視しても判らない偽装なら、お手上げだな。
それに、幾ら自分らの目で確かめると言っても、これだけの広さを悉に見て廻ったら、2年あっても足り無いかも知れない。
なので、水流をチェックしたり温度差をチェックしたりしながら、ポイントを絞って調査をしようと思っている。
初っ端から電気ウナギ君に激励され、電撃による攻撃を受けたが、生憎このアンコウ君は耐物理攻撃や対魔法攻撃、更に電撃攻撃は効かない。
ある程度の電気ショックやそれらの攻撃は、船体表面の光シールドが弾いてくれるからである。
で、反撃は、音響弾頭1、アイスドリル弾頭1の計2発を時間差で発射し、仕留めた。
即座に近寄り、マニピュレータで時空間倉庫へと回収した。
「おー! この魚雷って結構凄いっすね!」
とラルク少年が、はしゃいでらっしゃる。
「ちなみにな、昨日のテスト時に、気化弾頭2発を同時に爆発させたんだけど、90mぐらいしか離れてなかったから、かなりヤバかったぞ。
危うく海溝の崖に時速120km以上で、突っ込む所だった。
まあ、今はシステムを変更したから、そこまで危なくはならないとは思うけど、十分に注意してね。」
と海渡が釘を刺すと、真顔になって気を引き締めていた。
その後も、結構な頻度で魔物に遭遇し、このステージで出て来る全ての魔物とやり合った。
一番厄介だったのは、シザー・ザリガニで、堅いわ、動きが変則的だわで、何回か魚雷が回避されたりして、自動追尾の魚雷が命中するまでに、時間が掛かったりした。
そして、操縦と火器管制を順番に交代し、午前中だけで、全員が一通り熟せる様になったのだった。
一旦休憩昼食休憩を挟む事にして、ゲートで第10階層の湖面へと戻り、みんなで昼食の弁当を食べ、食後のお茶を飲みながら、午後からの作戦会議を行った。
「一通り全員操縦も攻撃も大丈夫そうだから、午後からは3隻体勢にしたいと思うけど、大丈夫かな?」
と海渡が聞くと、全員が頷く。
そして、海渡達、ラルク少年達、ケモ耳ズの3グループに分かれ、アンコウ君1号機、2号機にそれぞれ分乗し、出航して行った。
最後に海渡達4人が0号機に乗って、地底湖へと潜っていったのだった。
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