第508話
異世界9ヵ月と13日目。
朝から、飛行機のオープン形状の乗り物を作成する。
一応、前2人、後ろ2人の4人乗り。
ピーターパン的な物を作る予定である。
ストーリーとしては、発着場となる滑走路から飛び立ち、帝都のミニチュアの上をグルッと飛んで行く。
途中は低空で建物スレスレで回避して、さらに上空へと飛び立つ感じで演出する。
そのまま上昇して行き、雲の上を飛ぶ感じ。
クライマックスは、現れるワイバーンの群れ。
これを、ミサイル的な武器で撃退して、無事に着陸・・・と。1周で約2分~3分って所だな。
このアトラクションに必要なパーツ類や小型のデフォルメ機体、レール等を作り、アイテムボックスに収納する。
稼働する人形や、雲の様に見える小道具も用意し、収納。
「あとは、現地での現物合わせかな・・・」
建設予定地にゲートで移動し、このアトラクション用の建物を土魔法で作成する。
まずは、出入り口付近に、飛行場っぽい場所を作り、その下にパイプレールを設置していく。
発着場の次の部屋では、一気に離陸するリフト機構を作り、次の部屋へと入って行く。
この部屋は、帝都のミニチュアの部屋である。
上昇したり、降下したりして、ミニチュアの間を練り歩き・・・いや練り飛び、王宮のビルに突っ込む寸前で回避して、次の部屋へ。
そして、ドンドンと上昇しつつ雲の部屋へと突入する。
・・・結構仕掛けが大変である。
雲の上を飛ぶ部屋は、曲がりくねった廊下形状で、緩いS字にしてある。
よって、場所によっては雲の隙間から、吹き抜け状に作った下の大地が見える感じにしてみる。
そして、次の部屋で降下し、絶界の森の上空へと入ると、ワイバーンとの戦闘シーンとなる。
上下左右に曲がりくねった回避行動で、突っ込んで来るワイバーンを回避しつつ、次の部屋でワイバーンを撃墜して、次の部屋で降下して、着陸っと。
レールやリフト等の乗り物本体の部分が終わったので、ミニチュアの街並みや、馬車や自動車、人の小型模型をサクサクと作って配置する。
自動車や馬車等は、ちゃんと道路を走行して、行き来する様にしている。
まあ、仕組みは回転寿司と同じなんだがな。
宮殿のビルのミニチュアを作成し、窓の中で驚く人形を配置したり、色々芸の細かい仕込みを入れた。
雲のエリアは、雲に見立てた物がちゃんと後方に流れる様に魅せる。
これは、ベルトコンベア的な物に雲っぽいのを貼り付けただけ。
あとは、送風機で風を送り込んで、速度が出てますよ!って感じを演出する。
次はラストのワイバーンの人形。
大きめのワイバーン編隊が飛んで来て、回避する部分を作成。
ワイバーン人形自体も首や羽を動かしたり、ブレス(に魅せた赤っぽい煙を噴射)を噛ましたりと、結構頑張ってみた。
最後はミサイル攻撃で4発目に当たって落下するワイバーン人形を作成した。
何気にこのシーンが一番苦労した。4回程作り直しして、やっと恥ずかしくない演出が出来たと思う。
試乗してみたが、全体的に良い感じだと思う。
所々で、効果音や風の強弱を調整し、完成した。
名付けて、『エアー・アドベンチャー』だな。
これなら、きっと小さい子でも楽しんでくれる事だろう。
気が付くと、午後2時になっていたので、完成したエアー・アドベンチャーのコントロールルームで、久々にうな重を食べる。
「やぁ、やっぱ何時食べても美味しいね。もう残りが少ないけど・・・。
あ!鰻!!! もうシーズンじゃん! コーデリアに行かなくては!!!」
直ぐにフェリンシアやステファニーさん、ジャクリーンに伝心を入れる海渡。
『みんな!大変だよ!! すっかり忘れてたけど、鰻の季節だよ!』
と言うと、
『『あ!』』
とフェリンシアとステファニーさんが思い出して声を挙げていた。
『あの鰻って今がシーズンなんですか?』
と海渡と出会うまで、鰻に縁の無かったジャクリーンが聞いて来た。
『そうだよ。夏が一番美味しいらしい。シーズン外れると、あまり出回らないからね。今じゃなきゃダメなんだよね。』
と教えて、早速合流して、コーデリアに買い出しに出掛けたのであった。
早速王都に入り、いつもの鰻屋さんへ向かうと、午後2時半と言うのに、混んでいた。
扉を開けて店内に入ると、
「おう!坊主じゃねーか!随分久々だな?」
とテキパキと鰻を焼きながら大将が声を掛けて来た。
「ご無沙汰してます。色々と忙しかったんですが、鰻のシーズンなので、飛んで来ましたw」
と海渡が言うと、大将も女将さんも笑ってた。
ちょっと立って待ったが、何とか4人で座り、うな重8個を注文した。
「ははは、相変わらずスゲー食欲だな!おいw」
と笑う大将。
それに釣られ、他の客達も笑っていた。
「それは、美味しい物に限りますから。ここのうな重は美味しいから当然ですよ。」
と海渡が返すと、
「ははは、嬉しい事言ってくれるじゃね~か! 気合い入れてとびきりの奴食わせてやるぜ!」
と気合いを入れていた。
程なく、海渡のテーブルにうな重8個、お吸い物付きで到着。
「あー、堪らん! 滅茶滅茶美味しい!!」
と息継ぎを忘れる勢いで、食べる4人。
1個目を完食し、2個目に入る時、フェリンシアとステファニーさんは更に1個ずつ追加注文していた。
すると、大将が、
「坊主、今日も持って帰るのか?」
と聞いて来たので、
「ええ!是非!!」
とお願いすると、お持ち帰り30食を作ってくれたのだった。
その後、彼方此方で買い出しを終え、サチーさんに挨拶しつつそのまま帰るつもりだったのだが、遊園地の話をしたら、滅茶滅茶食い付いて来た。
「カイト君、そんな面白そうな物作ったんだったら、呼んでくれないとダメだよね?
ステファニーも、何で事前に連絡くれないかねぇ?」
と文句を言われ、何となく成り行きで遊園地に呼ぶ事になってしまった。
「でも、もう夕方ですし、どうせ遊ぶなら、昼間の方が良くないですか?」
と言うと、
「え?そんなの今夜も遊んで、明日も遊ぶに決まってるでしょ?」
と何言ってるのこの子?的な感じで返されたのであった。
マジか・・・。
それからのサチーさんの行動は、実に早かった。
サクッと通信機でドロスさんを呼び出すと、ポンポンとマジックポーチに荷物を詰めて、10分で準備完了。
それから5分程で、ドロスさんがやって来て、ドロスさんは状況も目的も判らないまま、強制的にゲートでワンダーランドへとやって来たのだった。
海渡は、サチーさんと、ドロスさんに、入場チケットを渡し、特別ゲートから入場した。
ゲートを潜った海渡が、
「ようこそ、ワンダーランドへ。」
と仰々しく両手を広げると、サチーさんもドロスさんも、溢れる程の人に驚き、更に垣間見えるアトラクションにも驚いてポカンと口を開いて固まっていた。
まずは、ミニ列車に乗って、グルッと一周回り、中を紹介して行く。
所々から聞こえる悲鳴に、ドロスさんがビクッと身を震わせていた。
「か、カイト君、今悲鳴聞こえたよね?」と。
ああ、そう言えば、ドロスさんって、高所恐怖症だっけ?
「ああ、大丈夫ですよ? あれは歓声ですから」
と黒い笑みを浮かべて答える海渡。
なので、まずは、フリーフォールから楽しんで貰う事にしたのだった。
一発目のフリーフォールを終えたドロスさんは、青い顔をして、ワナワナしながら降りて来た。
一方、サチーさんは、大興奮。
「いやぁ~、カイト君!! これ最高だよ! 長生きはするもんだねぇ~w」
と絶好調。
続くインディ・アドベンチャーは、少しマシだった様で、ドロスさんも笑みが戻っていた。
カリブの海賊的な『パイレーツ・アドベンチャー』も、「おお!」と余裕で熟していたが、最後の落下シーンで悲鳴を上げていたw
「さて、お次はっと・・・やっぱこれか。ボルケーノだな。」
と言う事で、ボルケーノを堪能して頂きました。
ん?俺?俺はお留守番っすよ。
だって、ほら、年齢制限に引っかかるからw
「え?カイト君乗らないの?」
とシートに固定された段階で気付いたドロスさん。
「ああ、これ年齢制限と身長制限あるんですよ。俺は後数年しないと乗れないんです。残念ながら・・・」
「え!? ど、どういう・・・」
ピリリリリ♪
「あ、出発ですね、逝ってらっしゃーーいw」
と手を振る海渡。
青い顔の横のサチーさんは目をギンギンに輝かせている。
1周を終えた数分後、完全に魂が抜けきった様なドロスさんと、はしゃぐサチーさんが戻って来たのだった。
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