第503話

 翌日からの8日間、海渡は意欲的に遊具となるアトラクションを充実させて行く。


 最初にメリーゴーランドに取りかかり、運用時の魔力燃費を考慮して、円形の台座の裏に、正弦波の様な、なだらかな波面を円周上に配置し、各ポールの底面にローラーを取り付け、ポールが波面に沿って上下する様にし、床面と天井にポールの通るシリンダーと言うか、ガイドを取り付けた。


 床面は、トレント板の複合材で合板をにし、ガイド部分だけを光コーティングしたミスリル製のスリーブにしている。

 床面の裏では、最円周部と中心との中間の部分を、各円周ローラー36箇所支える様にして、床面の加重を分散させた。

 中心のシャフトを魔動モーターにして、魔動CPUの制御ユニットを制御室に接続した。


 また、楽しげな色々な色に発光する照明器具や、鏡等でメリーゴーランド内部を装飾し、ポールには、馬や、ドラゴン、自動車や、バス、飛行機等、乗れそうな種類の物を取り付けた。

 メリーゴーランドと言えば、動作時に音楽は必須と言う事で、鼠園の電気行列的な音楽を流す事にして、魔動スピーカーと魔動CPUをリンクした。


 動作テストは良好で、中々に楽しげな雰囲気である。

 多分・・・子供は喜んでくれる事だろう・・・。


「やっぱり、遊園地となると、園内をグルリと周回する、ミニ列車は外せないよなw」

とニヤリと笑いつつ、ミニ列車の作成を始める。


 既に自動車等を開発しているので、部品点数はそれなりに多いが、列車の作成で頭を悩ませる事はなく、アッサリと完成した。

 レールの素材は、鍛造した鉄に腐食コーティングして採用した。


 レールを敷こうとして思いとどまり、先に他のアトラクションを充実させる事にした。

 簡単に出来そうな物と言う事で、バイキング船を作成し、次にフリーフォール、ジェットコースターは鼠園の大雷山的な物にして作成した。

 ジェットコースターのレールはパイプ形状にして、車両がレールから浮かない様に、上下からローラーで挟み込む様に工夫した。

 また安全面の為、体を固定するバーを作成し、自動で体をホールドする様にした。

 これは、フリーフォールやバイキングにも同様に取り付けてある。


 名前は分からないが、空中をグルグル回るブランコ的な物も作成した。


「やっぱり、ここまでやると、カリブの海賊的な物も欲しいよな・・・」

と呟きつつ、遊園地の地下に作成した。


 何気に難航したのは、寸劇を代行する動く人形。

 これに一番時間が掛かってしまった。

 シーン、シーンで空間を用意して、その中でリピートして細かい動きを魔動CPUで制御し、最終的にメインの制御ユニットで一括起動したりと、かなり大がかりになってしまったのだった。


 そして、プールエリアには、お待ちかねのウォータースライダー、流れるプール、波のあるプール、浅目と深目のプール等を作成し、水は地下には、浄化ユニットと巨大な水タンクを作成して設置した。

 全プールエリアで使用する総水量の2倍の量を、ここで保持出来る様にしている。

 まあ、もしもの災害時には、この水で一時凌ぎ出来る様に・・・とも考えたので、貯水量は多めにしておいたのだった。


 気が付くと、遊園地を建設しだしてから6日が過ぎ、ハッと我に返ると、当初の予定よりも大がかりな、巨大遊園地になってしまっていて、苦笑いする海渡。

 最後に園内のグルッと一周するミニ列車のレールを敷いて、5箇所程に駅を作成した。

 遊園地をグルッと3mの柵で覆い、通路を整備し、最後に木や芝生や花等を植え、飲食店等のエリアは、他のスタッフに丸投げしたのだった。




「何か、凄いのが完成したな・・・。さて、名前は何にしようかな?」

と考える海渡。

 ネーミングセンスが無い自覚はあるので、みんなに意見を聞いて決める事にして、早々に考える事を放棄するのであった。





「と言う訳で、遊園地出来ました。

 手の空いている人は、ちょっと感想聞かせて欲しいんだけど。」

と宮殿に戻って声を掛けると、


 ワクワク顔のオスカーさんやヨーコさんを始め、宮殿の半数以上のスタッフが名乗りを上げる。

 しかし、どう見ても、明らかに手が空いてない者も大幅に含まれていたので、苦笑いする海渡。


「いや、流石に半数以上は拙いでしょw

 判った、気持ちは判ったから、じゃあみんなで交代入れ替えにするから、順番を決めてね。」

とオスカーさんに順番決めを一任して、アトラクションの制御担当のボランティアを弟子ズにお願いしたのだった。




 昼食を終え、第一陣のテスター一行を乗せたバスで、遊園地のバス発着場へ向かう。


「何か、1週間以上掛かりっきりで作られていると思ったら・・・こ、これはまた・・・」

と口をアングリと開けて言葉を失うオスカーさん。


 隣のヨーコさんは、目をキラキラさせている。

 遊園地の壮大さに、ある者は驚き、ある者は大興奮し、ある者は言葉を失っている。



 バスを降りて園内に入ってからは、もう大変だった・・・。

 みんなバラバラに散ってしまい、せっかく説明しようとしたのだが、団体行動とは無縁の糸の切れた凧状態だった。


 フェリンシア、ステファニーさん、ジャクリーンさんも同様で、身体強化と身体加速を使った移動で、全アトラクションを制覇していっていた。





 午後4時になり、園内に散っていったテスター達が戻って来た。

「カイト様! これは楽しいですよ!! 凄いです!」

と全員が全員口を揃えて大絶賛してくれた。


 その翌日、1日に午前の部と午後の部で2組ずつの交代で宮殿の全スタッフにもテスターをやって貰い、弟子ズも交代で愉しんで貰った。


 結果、クレームも問題点も無しで、全員が無条件に大絶賛。

 特に人気だったのは、意外にもカリブの海賊的なアレ。

 動く人形劇が斬新だったらしい。


 言われて見れば、確かにこの世界で人形劇とかを見た事が無いので、驚きが多かったのかもしれない。

 一番不評と言うか、票が集まらなかったと言うか、意見が少なかったのが、フリーフォール。

 何処がダメなのか判らないのだが、一部の話では、

「なんかシートが濡れていたりして・・・」と。


「あぁ・・・なるほど」

と海渡は察するのであった。


 大雷山的なジェットコースターであるが、あまり強烈なGが掛からない様にした事もあって、こちらは大丈夫だったらしい。


 一部の絶叫マシンマニア?には、

「もうちょっと強烈でも良かったんですが。」

と言う意見があった。


 遊園地の敷地は十分に空きスペースを取ってあるので、そこまで言うなら・・・と、悪い笑みを浮かべる海渡だった。



 そして、色々と痛い名前候補や、海渡の名前の「カイトランド」等色々あったが、名前は「ワンダーランド」に決定した。


 内部の飲食店や売店等、中で働く従業員等、面倒な諸々の準備は、ヨーコさんの仕切りとして、丸っと投げた。

 ヤル気を漲らせるヨーコさんは、2週間後を目処にオープンさせると意気込んでいた。

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