第502話
異世界8ヵ月と22日目。
と言う事で、フードコートのオープンから1日空けた本日より、本格的に遊園地の建設に向け、城壁の拡張を行う事となっている。
昨日初めて知ったのだが、この世界で泳げる者は非常に少ないらしい。
理由は、水中にも魔物がいっぱいだから、オチオチ川や海で泳げないかららしい。
元日本人の海渡にしてみれば、学校で必須だったりするので、驚きの事実であった。
やっぱり、せっかくだから、水難事故防止の為にも、学校とかにプール作って、泳ぎ方を教えるべきだろうか?
そう言えば、日本の学校で水泳を教える様になったのって、船の沈没が発端だった記憶あるなぁ・・・。
まあ、そんな訳で、当然の様に水着なんて物も存在しないのである。
つまり、ウォータースライダーの建設をするとなると、まずは水着の開発も必要と言う事である。
しかし、水着(特に女性用)とかのデザインとかは、本当に無理なので、伸縮する生地素材の生産ラインを海渡が担当し、水着の型紙については、裁縫部隊に丸投げする事にした。
男性用はトランクスタイプでお願いし、ポロリが無いようにだけお願いしておいたのだった。
すると、一部の裁縫部隊の女性スタッフから、舌打ちが聞こえた気がしたのだが、一応スルーしておいた。
さて、帝都の城壁だが、チマチマ何回も拡張はしたくないので、グルリと半径5km拡張する事にした。
今回の拡張工事で、おそらくこの大陸で一番長い城壁となる・・・つまり最大級の首都となる。
遊園地の予定地は、現在の南門の近所に予定している。
と言っても、これまでに城壁工事は彼方此方で、何度も経験しているので、レイアと弟子ズに丸っと投げている。
城門部分や、その他の細々とした確認や細工が必要な部分は、ステファニーさんにお願いしている。
と言う事で、海渡の担当は、観覧車等の遊具の開発がメインとなったのだが、ここで大きな問題に気付いてしまった。
「うーん・・・大観覧車を作るのは良いとして、どんな素材で作るにせよ、最低限大観覧車の半径分の長さのパイプを組み立てるスペースを確保しないとダメだな。」
と地下工房で腕を組んで、首を傾げる海渡。
現在の地下工房だが、200m×200mの空間なので、十分な広さではあるのだが、結構飛行機やヒラメ君の製造ラインや、その他のラインで圧迫されているので、十分なエリアが確保出来ていないのである。
「しょうがない・・・工房を拡張するかな?」
と言う結論に行き着いたのだが、そこでハッと頭に閃いた。
「あ!ドラゴンの里の空間拡張!!!」
と思い付き、急いでレッド・ドラゴンに聞きに行ったのだった。
「ふふふ、何ともまあ、意外に下らない話だったなw」
と空間拡張の方法を聞いて笑ってしまう海渡。
つまり、空間拡張は海渡が頻繁に使っている、時空間倉庫の機能限定版と同じ理屈であった。
時空間倉庫の縛り(条件)をもっとキツくして、スケールを固定しただけ。
もっとも、そのスケールや空間内の環境保持等の追加条件によって、必要とする魔力量も変化するので、魔力燃費を考えると、あまり無茶なスケールにするのはお薦めしないとの事だった。
更に一番問題なのは、「もし、途中で魔力が切れて、空間拡張が停止した場合」だが、確実に爆発の様な現象が起きるらしい。
言われてみれば、マッチ箱の中に10倍の拡張を設定して満タンにし、停止すると、一気に通常サイズに中身が膨らむのであるから、『爆発』も頷ける。
その中身に人や生き物が混じって居た場合、空間の外も危険だけど、中身も危険と言うか、おそらくヤバい事になるだろうと、想像出来る。
智恵子さんに、縦10m×横10m×高さ10mの空間を10倍の空間拡張した場合、オークの魔石換算でどれくらいの時間保つのかを聞いた所、
『そうですね、一般的なLv40~50程度のオークの魔石を使ったとして、何もなければ8ヵ月ぐらいでしょうか。
しかし、中身によっては消費魔力量も変化するので、何とも微妙です。』
との事だった。
『ん? でもそれだと、マジックバックや、時空間パレットと比較して魔力消費量多くない?』
と不思議に思って聞いた所、生命活動をしている亜空間?を構築する訳なので、逆に消費量が増えるとの事だったのだが、うーん、正直判らんな・・・。
まあ、そう言う物だと納得するしかないのだが。
と言う事で、結局、海渡不在の時に、魔石の魔力切れとかで大惨事とかは拙いので、振り出しに戻って、素直に地下工房を拡張する事にしたのだった。
拡張工事した部分中央で、パイプ等の骨組みの素材を智恵子さんと検討した結果、この大陸で希に起こる台風等の自然災害も踏まえ、強度に余裕を見て、贅沢に骨粉入りミスリル合金を使用する事に決定した。
まあ、市場では高価なミスリルではあるのだが、希望の岬ダンジョンの砂漠から幾らでも採取出来るので、問題は無い。
強化TFG製も考えたのだが、あまり軽すぎるのも問題があるのではないか? と智恵子さんに指摘され、理由を言われて納得した結果である。
頑丈な強化TFGだが、堅いとは言え、多少は撓る。
で、問題は風が吹いた時、軽すぎると撓りやすいのではないか? との指摘を受けた。
「確かに、ちょっと風が吹いただけで、何十cmかの幅を揺れるゴンドラとか恐怖でしかないな。」
まあ、他にも軽い事による弊害も納得出来たので、ミスリル合金で作る事となったのである。
海渡は、ミスリル合金のパイプをトラス構造で生産する、大型の製造ラインを作成した。
15°毎に1個のゴンドラを付けるので、ゴンドラ数は24個、1つのゴンドラはユッタリ目の定員4名で耐荷重は600kgとした。
ゴンドラは横から見ると、日本の観覧車と同じく、円型とし、これもミスリル製とした。
さて、最大の問題となるハブとシャフト部分だが・・・これもミスリル合金で統一し、想定する総重量の10倍以上の強度を保たせた。
全てのパーツとその組み立ての製造ラインを稼働させて、その間に、魔動CPUを使った駆動と制御部分の作成を行った。
昼食休憩を挟み、どうにか大観覧車1機分のパーツが全て完成し、全てをアイテムボックスに入れて、建設予定現場へと向かったのだった。
ヨーコさんの手配によって、現在の城壁と新城壁の間の敷地内の魔物討伐依頼を受けた冒険者達がちらほらと見られる。
午前中で新しい城壁は遙かな方に建築されており、明日から、正式な城門として稼働する事になっている。
帝都の城壁に近い新しい敷地だが、ここら辺は殆ど魔物が出没しない。
余りにも人が多すぎるので、ここ数ヶ月で魔物が距離を取る様になったからである。
もっとも、それでもスライムや、ホーンラビット等の雑魚系や、イノシシ等の雑色系、多少の小動物等はちょくちょく見かける。
しかし、敷地内の魔物を残さない様にする為、新しい敷地内の魔物の一掃が必要なのである。
その為、通常レートの3倍の報酬額として、冒険者ギルドに国から依頼を出したので、特にランクの低い冒険者達は、大喜び。
結果、この広い敷地内でも、点在する冒険者のパーティーが見受けられるのだった。
海渡が建設予定に向かう最中、通りがかりの若い冒険者(といっても、海渡よりは年上なのだがw)から、挨拶されたり、お礼を言われたりしていた。
ちなみに、南門付近を建設予定地にしたのには、理由があり、帝都の南側は、非常に風景が素晴らしいのである。
遠目には、小高い山や、帝都付近を流れる川と南西に位置する小さな湖?池?、更にその周りを囲む紅葉樹の林等、四季折々で目を楽しませてくれる(らしい)。
『らしい』と言葉を濁すのは、まだ帝都歴が1年未満なので、聞いた話と現在の風景を上空から見ただけだからである。
大観覧車の予定地の土台を地下100mまで固めて、大観覧車の柱を設置する。土台には、大観覧車のゴンドラが通過する溝を作り、空中に飛んで、空間魔法で支えたゴンドラ付きのスポークをハブに取り付けて行く。
仮組みが完了すると、各スポーク間のトラス構造のサブフレームを取り付けて行き、最後に本締めというか、完全に固定して完了。
大きさが大きさだけに、空間魔法を微調節しながらの作業は2時間を要してしまった。
駆動系の制御室を設置して、魔動CPUの制御ユニットと大観覧車の駆動系を魔導リンクで接続し、完成。
早速だが、テストを開始する。
海渡はドキドキしながら、制御室で、制御パネルからスイッチON。
音も無く、静かにユックリと回り出す大観覧車。
「おおお!!! 動いたーーー♪」
と喜びつつ、制御室を飛び出て、ゴンドラに乗って、ワクワクしながら外の景色を眺める。
中に乗った感じだが、本日は風が無いので、特に揺れる感じもなく、不安感は無い。
直径220mの大観覧車の最頂点に達すると、上空240mからの景色が目に映る。
「うん、悪く無いね。
帝都が隅々まで一望出来て、反対側は、新しい城壁の向こう側まで綺麗に見えるし。
あのミニ湖周りも、秋になると綺麗に赤く染まるらしいし、悪く無いねw」
とご満悦の海渡。
すると、そこへいきなり伝心で、
『海渡だけズルイです!
完成したなら一声掛けてくれないと!!』
とフェリンシアの抗議が入った。
『悪い悪い、ちょっと嬉しかったので、テストしてたんだよ。
大丈夫そうだから、手の空いている人で乗りたい人、居たら連れて来てくれる?』
と伝えると、
『了解! 声を掛けて連れて行きますね!』
との事だった。
1周10分の大観覧車で1周回り、地上に降り立ち、暫くすると、何故か、フェリンシアだけでなく、バスが3台連なってやってきた・・・。
「え?何この団体さんw」
と海渡が苦笑いしていると、
「いやぁ~、声を掛けたら、ドンドン人数が増えちゃいまして。」
とオスカーさん。
その横には、ロジャーさんとマチルダさんが手を繋いで立ってるし・・・。
「まあ、いいや。 1周10分だから、乗って何か気になる事があったら、教えてね。」
と言って、ドンドンとゴンドラへと4名ずつ乗せて行く。
試乗に来たのは、100名程だったので、23分程で全員が乗り終わった。
「いやぁ~、景色素晴らしかったです!!」
と全員が全員興奮気味に降りて来ていた。
不具合というか、問題箇所は今の所無いとの事だった。
だが、今更だが、ゴンドラの個数のせいもあり、つまり100名で約20分待ち時間が掛かるとなると、かなりの混雑が予想されるな。
まあその辺は実際に運営開始してから、考える感じかな。
まあ、他の物も作るし、客が分散してくれれば、問題無いよな?
海渡は、定員フル試乗が無事に終わった事を素直に喜ぶのだった。
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年末で忙しく、毎日の更新が厳しくなっており、申し訳ありません。
若干次のアップまでお待たせする事になるかと思います。
申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。
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