第501話
異世界8ヵ月と20日目。
いやぁ~、人化したドラゴンを連れ帰ってから、1週間が過ぎ、やっとなんとか平穏な日々が戻って来た感じ。
この1週間、本当に大変な日々でした・・・。
本当は、もうちょっと向こうで人の暮らしに慣れてからとも思ってたんだけど、自由気ままなドラゴンの気質上、歯止めが利かず、予定もあったので、なし崩し的に受け入れた訳だけど、釘を刺したから、暴れる事は無かったのだけが幸いだったとしか・・・。
とにかく、人が生活する上での、常識や、距離感とかってのが、全然判って無くて、振り回される事、振り回される事・・・。
しかも、一般の宮殿のスタッフでは、押さえが効かないし、ちょっとしたタッチレベルの力加減が、ヤバいので、何人も負傷者が出る始末。
もしもの際は、弟子ズの1期生なら単独で、2期生なら3人ペアで、何とか出来る程度かなぁとは思ってたけど、ドアを開けるだけで破壊したり、怪我人出たりするとはねぇ。
オスカーさんからは、
「カイト様・・・何爆弾抱え込んで来ちゃってるんですか!!!」
と怒られてしまった。
まあ、そんな状況を目の当たりにしたドラゴン達が、
「あ・・・何か申し訳ないのじゃ・・・」
と謝って来たりとかで、何とか自分らの力とかを把握して、一般人レベルの加減を覚えてくれたのだった。
そんなこんなで、ドタバタの1週間が過ぎ、やっと平穏な朝を迎えたと言う所。
尤も、弟子ズは交代でドラゴンの集落・・・ドラゴンの里と言った方がシックリするかな? そのドラゴンの里に出向き、家を設置して廻って貰ってる状態。
お金の概念が無いドラゴン達に、『お金』で物を買う事や、お金を稼ぐ事を教えたりもした。
一部のドラゴンは、その手段として、冒険者やるつもりらしい。
また、一部のドラゴンは、宮殿の厨房で、必死に調理を磨く事にしたらしい。
お願いした時、アニータさんの顔が滅茶滅茶引き攣ってたけど、3日もすると、アニータさんが、厨房で指示を飛ばし、ドラゴン数人を手足の様に動かしていたので、大丈夫だと思う。
さて、本日のメインイベントだけど、ヨーコさん主導で準備してきた、フードコートのオープン日となっていて、そのオープニングにコッソリ出向く予定である。
あ、ヨーコさん主導ではあるけど、別に国営と言う訳ではない。
運営はさえじま商会となっているが、ヨーコさんが、余りにもノリノリだったので、誰も口を挟まなかった・・・と言う話。
平行して、大陸AやBの方の幾つかの支店でもフードコートを建設中らしい。
ちなみに、フードコートの話は、既に帝都民に伝わっていて、巷ではかなり前評判が高い。
その期待で、ハードルは上がってるのだけど、先日試食したが、十分に満足して貰えるとは思っている。
豚骨ラーメン、醤油ラーメン、餃子、チャーハン、おでん、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼き鳥、ハンバーガー、ピザ、ホットサンド、カツ丼、牛丼等々・・・色々なメニューを用意している。
ちなみに、豚骨ラーメンや醤油ラーメンの携帯食バージョンは、既にさえじま商会の各店舗で販売しており、これまでの不味いだけの携帯食に飽き飽きしていた冒険者や、商団や、旅人達に飛ぶ様に売れている。
そのお陰で、ラーメンと言う物が、コーデリア以外でも認知され、一種のブームになっているらしい。
と言う事で、インスタントではない、本場の本物のラーメン店が出来ると、帝都以外でもかなり噂になっているとの事。
そして・・・現在の時刻は午前10時。
いよいよフードコートのオープニングの挨拶が終わり、フードコートがオープンした。
海渡は、フードコート全体を見渡せる3階の高さに設けられた事務所に陣取り、様子を見て居るのだが、驚く程の賑わいっぷりで、既に各店舗(屋台)に行列が出来ている。
勿論、各店舗とも作り置きを時空間倉庫を使って供給される様にしているので、実際は注文~手渡すまでの待ち時間は30秒も掛からない筈なのだが、「あ!ついでにこれも!!」とか欲張って沢山買う人が居て、あまりスムーズに客が捌けて居ない様子。
まあ、これはある程度客側が慣れてくれば、解消されるだろう。
200人が座れる様に、1階と2階に客席を設けたのだが、オープンして20分もしない内に満席御礼となっている。
「ヤバいな。客席足り無かったか?」
と状況を見て海渡が言うと、隣でヨーコさんも若干引き攣った顔をしている。
客席では、席が足りず、口論になっている所が数カ所で見られた。
「これ、客席増やさないと、暴動起きないかな?」
と海渡が呟くと、
「カイト様、申し訳ないですが、地下に客席増やして貰えませんか?」
とヨーコさんからお願いされて、頷く海渡。
早速フードコートの裏から土魔法で固めつつ、縦穴を掘り、敷地の真下に地下空間を作成した。
そして、天井も壁も柱も真っ白にして、照明や空気清浄機、エアコン、トイレを設置した。
さて、問題は登り降りのエスカレーターと非常用の階段か。
現在、1階のど真ん中に2階へのエスカレーターが鎮座していて、2階席は、真ん中をくり抜いたドーナツ形状で吹き抜けとなっている。
3階の事務所(及び監視スペース)は、建物の真ん中に屋根からぶら下がる様な形で存在し、事務所への通路は、完全なパイプ状となっている。
その為、吹き抜けで2階席も1階も見渡せる様になっているのである。
話は戻って、エスカレーターだが、普通に考えれば、やはり中央に置くべきだよな・・・。
でも、営業中工事しちゃうと、問題あるよなぁ? 墜ちて来たりしたら大問題だし。
と言う事で、先に工房でエスカレーターのユニットを作成し、ついでにヨーコさんが手配した地下用のテーブルや椅子を受け取り、フードコートへと戻って来た。
「準備は完了して、後は地下へのエスカレーターの穴を開けて、設置するだけ。
だけどお客さんの居る所で工事もねぇ~。どうする?」
と時間を追うごとに増えるお客さんを目の前にして、ハラハラしているヨーコさんに聞いてみると、
「なんか、時間を追う毎に悪化している(客足が増える)感じなので、ここは思い切って先にやって頂いた方が・・・」と。
そこで、海渡は元の世界のデパートとかの営業中の工事を思い出し、パーティションで囲って工事する事を思い付く。
早速、お客さんの誘導用の工事現場のガードマン要員(弟子ズ)を3名呼んで、1階のフロアへと降りて行った。
誘導要員にエスカレーターの下を空けて貰いつつ、目隠しのパーティションを設置し、その中で、一気に地下への穴を空け、崩れ墜ちない様にカチカチに床を固め、アイテムボックスから地下へ向かうエスカレーターを設置した。
そして、地下1階にテーブルと椅子を並べ、工事完了。
ヨーコさんを呼んで、地下1階を確認して貰い、パーティションを撤去して貰い、地下席への誘導も開始して貰ったのだった。
何とか昼食のピーク前に座席を増やせた事で、その後の混乱は無く、順調に昼を乗り切る事が出来た。
夕食時も、合計330席が満員にはなったが、オープン初っ端程の混乱は無く、上手く流れる様になり一日の営業が終了したのだった。
閉店後、ヨーコさんが、
「何か途中は予想以上にお客様が来て、ハラハラしましたけど、でもトリスターの本店オープン当初とか王都支店の時を思い出して、ちょっと懐かしい気持ちになりましたw」
と感想を述べていた。
「そう言えば、そうだったね。
何か、随分前の事の様に思うけど、実際はまだ1年経ってないんだよねぇ。
いやぁ~、久々にちょっと愉しませて貰えたよ。ありがとうね!」
とお礼を言いつつ、お互いに笑い合うのだった。
ちなみに、この帝都のフードコートのノウハウをフィードバックして、現在建設中の各フードコートに少し手直しが入った。
「次は、何をしますか?
また面白いアイディア愉しみにしてますよ?」
とヨーコさん。
「ふふふ、実はもう考えてあるんだよねw
次は遊園地作ろうかと思ってるんだ。」
と海渡がニヤリと笑う。
「え? 遊園地ですか? それは一体どう言う物なんでしょう?」
そこで、海渡は元の世界の鼠園の様な所・・・は最初からちょっとハードルが高いので、観覧車やメリーゴーランドやプールにウォータースライダー的な物を説明する。
遊園地と言えば、ジェットコースターだが、作るのにはまず、トロッコ的な物を作る必要や、安全性と言う課題があるので、先送りとする予定。
あ、でも鼠園の大雷山的なノンビリしたのは、早目に作りたいなぁ・・・等と説明の傍ら平行して頭の中で考えていた。
「それは面白いですね! そんな夢の様な物、思いつきもしません。
絶対に作りましょう!!」
とヤケに力の入るヨーコさん。
「あ!でも・・・それだけの施設を作る空きスペースは、今の帝都には在りませんね・・・。」
とヨーコさん。
と言う事で、この瞬間、帝都の拡張工事が決定したのだった・・・。
ちなみに、夜になって初めて知ったのだが、一日音沙汰の無かった女性陣・・・フェリンシア、ステファニーさん、ジャクリーンさん、そしてケモ耳ズだが、何とほぼ一日中、フードコートで、並んでは食い、並んでは食いを繰り返していたらしい。
まあ、流石にジャクリーンさんだけは、直ぐにリタイヤして離脱したらしいのだが、正に恐るべき食欲である。
置いてきぼりを食らったレイアが、血の涙を流して嘆いていたのには笑ったけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます