第480話

「あー、私が冒険者ギルドの統括マスター、ジェームス・ラングレーだ。

 ドゲルは久しぶりだなw 老けたなぁww」

と50代後半ぐらいの渋めのオヤジが挨拶してきた。


「老けたのはお互い様だろw そんな事より、グエンザン支部が崩壊しちまった。まあ正確には、ギルドマスターがバカやって、スタッフが全員辞めちまって、冒険者が暴動起こして、ギルドマスターを襲撃しちまった。」

とドゲルさんがザックリ説明する。


「えっと、グエンザン支部って誰だけギルドマスターは。」

と他のスタッフに尋ねるジェームスさん。


「ああ、あの若造か! だから俺は反対したんだよ!!」

とジェームズさんが嘆く。


「まあ、そんな事より、あのグエンザンは、冒険者が機能しないと、領地全体が立ち行かなくなる場所なんだよ。」

とドゲルさん。


「ここからは、私が代わりましょう。ドレン王国の大臣をやっております、シーゲル・フォン・アズナと申します。

 ドレン王国からの正式な要請です。ちゃんとしたギルドマスターと職員を大至急派遣お願いします。

 お恥ずかしい話ですが、このままでは、グエンザン領全体が立ち行かなくなり、その被害は甚大になります。

 既に、情報や見切りの早い商人や冒険者達の移動が始まっているとの事。

 急いで、後任をお願いします。」

と大臣のシーゲルさんが汗を掻きながら訴える。


「あちゃー、それは相当だな。まあこれもギルドの責任でもあるが、ギルドが機能しなくなるだけで、そこまでになるっちゃー、相当雑な領地経営だな。」

とチクリと一発入れるジェームズさん。


「ええ、本当にお恥ずかしいですが、どうやらそのギルドマスターが就任時に唆すと言うか、脅したみたいなんですよね。」

とシーゲルさんも応戦。


「まあまあ、そんな事を今言っても始まらないので、直ぐに人選をして貰えませんかね?

 今のグエンザン支部はものけの空ですから。

 被害が少ない内に手を打たないと、それこそ取り返しが付かなくなりますよ?」

と海渡が無理矢理軌道修正する。


「お、おう・・・ ところで坊主は?」

とジェームズさん。


「ああ、はじめまして。俺はSSランクの冒険者でカイト・サエジマと言います。こちらに居るのはうちのパーティーメンバーです。」

と海渡が言うと、ジェームズさんも、その周りのスタッフも、ハッとした顔をして、


「ああ!お前さん方があの化け物軍団・・・えーっと、何て言ったかな・・・ああ、黒の軍団か!!」

と叫んでいた。


 ん?知ってるの? とキョトンとしていると、

「はっはっは!何で知ってるって、ちゃんと本部には定期的に情報が更新されるんだよ。SSランクが団体で、しかも登録から間もない奴らだろw しかも殆ど10代だって。

 最年少は5歳だっけ? みんなで想像してたんだよ。どんな奴らだよ!?ってな。 ギルドの報告では、通称『黒の軍団』と周りの冒険者が言ってるって話しまでは入ってるぞw」

とジェームズさん。


 それからは、直ぐにスタッフ達が人選と人集めに走り、明日の午前11時までには、運営出来る人数を一式揃えると言う事になった。

 海渡は、ジェームズさんに、

「ここの大陸は大きいですし、端の方のギルドから本部までの連絡って急には取れませんよね?

 俺達って、実は他の大陸から来てましてね。その大陸では、ギルド専用の魔道具で通信網が作られてましてね、それでほぼリアルタイムに情報を共有しているんですよ。

 だから、今回の様なケースでも即座に対応が出来る様になっているんですよね。」

と海渡が言うと、


「え?他の大陸? 通信網? マジか!そんなのがありゃ、一発で緊急事態に対応出来るよな。良いなぁ・・・うちも欲しいなぁ・・・。」

とジェームズさん。


「まあ、その通信網を作ったのは、ここに居るステファニー・ヨハンソンさんですがねw」

と海渡がステファニーさんを紹介すると、


「え?マジか!」

と羨望の眼差しで見つめていた。


「そやけど、当時相当の予算と年月掛けて作ったんやで。確か、30年ぐらい、毎年黒金貨300枚ぐらい掛けたんとちゃうかな?もっとか?」

とステファニーさんが言うと、


「わぁ・・・ダメだ。そんなに予算ねーし。」

と愕然としていた。


「まあでも、こう言う通信機を各支部に配布するんなら、もう少し押さえられるんじゃないですかね?」

と海渡が通信機を見せる。


「それは?」


「これは、魔動通信機と言って、どこに居ても連絡したい相手の通信機に繋がる物です。」

と説明した。


「ほう!それは凄いな。それは幾らするんだ?」

とジェームズさん。


「まあ、これも安くは無いんですがね。1台金貨5枚なんで。まあ纏めてご購入頂けるのであれば、割引しますよ? 1台金貨4枚くらいとか。」

と海渡がニヤリと笑うと、


「えーっと、全支部の総数って、幾つだっけ?」

とスタッフに聞くジェームズさん。


「今は確か・・・2570箇所ぐらいだったと記憶します。」

とスタッフが答える。


「つまり、1台金貨4枚だと総額幾らだ?」

と聞き返すジェームズさん。


 海渡は、

「1台金貨4枚だとすると、2570台で黒金貨102枚、金貨80枚ですね。

 もし、買う気があるなら、予備や増える事も考えて、2600台で、黒金貨102枚に割り引きしますが、どうします?

 そうですねぇ・・・配達は、各国の王都支部へは当方への指名依頼にしてくれれば、俺達で各国へ配達しますよ。

 そこから各支部へ配達して貰えば、かなり時間短縮出来ますよ?

 各国の王都支部には、3日ぐらいあれば、全部行けます。」

と海渡が言うと、


「乗った!!!」

とジェームズさんが叫んだ。


 海渡は、ジェームズさんの目の前に、2600台の通信機の木箱をドンドンと積み上げる・・・あ、部屋に入りきらないな・・・。


「「「「何じゃこりゃ!?」」」」

とまたもや叫ぶジェームズさん達。


「1箱で通信機100台入ってるんですが、部屋に入りきらなかったです。何処か倉庫に出しましょうか?」

と海渡が言うと、


「いや、ああ、まあそれはそうなんだが、何でこれが急に出てきたんだよ?」

と突っ込むジェームズさん。


「ああ、俺、アイテムボックスのスキル持ってましてね。幾らでも収納出来るんですよ。」

と説明すると、また全員が叫んでいた。



「取りあえず、番号を全部記録して、それが何処の支部の番号か、電話帳作らないとダメですよね。」

と海渡が言うと、倉庫で番号の割り振り表を作る事に。勿論ギルドのスタッフが。


「じゃあ、表を作ったら、サービスでこちらで2700部ぐらい印刷して製本しますよ。」

と言うと、少し仕事が減ったので、スタッフに感謝された。


 斯くして、『行き掛けの駄賃』をシッカリ稼ぐ海渡であった。

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