第470話


 一方、王宮の外を占拠している反乱軍では、ヤキモキしていた。

 途中まで良い感じで悲鳴や怒号が飛び交っていたのだが、騎士100名の精鋭部隊を送り込んでいたのに、全く報告が来なくなり、王宮の中も静かになった。

 そして、偵察を王宮に送り込もうとしても、どの扉と言うか、建物の内部に全く入れなくなってしまったのである。


「おい、戦況はどうなっておるのだ?」

と部下に聞くのは、反乱軍の将である、故タクランの祖父で、将軍のゲルハッセンである。


「お恐れながら、未だ王宮の中に踏み入る事が出来ないままで、もう後数分でトドメをさせるとの伝令の後、一切内部からの報告が無くなってしまったままです。

 おそらくは、急襲部隊の方は、全滅したのではないかと・・・。」

とビクビクしながら、報告する第一師団の師団長。


「そんなバカな話はなかろう? この国最高の騎士達で構成した精鋭部隊だぞ? この国にあやつらを殲滅出来る者などおらんだろう?」

と大声で、唾を飛ばしながら吠えるゲルハッセン将軍。


「てゅりゅるーーー♪ てゅりゅるーーー♪♪ てゅりゅるーーーーーー♪♪♪ パンパラパンパン パンパラパンパン パンパラパンパン パンパパンパパッパララーー♪・・・・~~」

と上空より高らかなメロディーが流れ始めた。


「何だ? 何だ? 何処から聞こえる?」

と慌てるゲルハッセン将軍。


 ガヤガヤとざわつく反乱軍の皆様w


 王宮の真上に大型のガラスディスプレイが展開し、ワグナーがフェードアウトして、音声が鳴り響く。


「反乱軍に注ぐ。反乱は失敗に終わった。ワシもミルフィーも無事である。反逆者の廃嫡した第一王子と余と国民を欺いたその母親は、処刑された。

 この映像を見るが良い。見るも無惨よのぉ~。100名居っても、僅か1分にも満たない時間も保たずに、たった2人の少年と少女になすすべなくやられ居って・・・。

 王として情けないわい。」

と画面の中でドレン王がミルフィーさんを横に従えて、饒舌に語る。

 その画面の横では、1分も保たずに殲滅される阿鼻叫喚のシーンが、生々しい絶叫入りで流れている。

 反乱軍の精鋭100名の騎士と第一王子、その母も無惨な死体となって映し出される。


 もう、こうなったら、元々嫌々参加させられている一般兵等は、戦意なんて微塵も無い。

 青くなって、ガタガタと震えるのみ。


 更にドレン王の映像が語り始める。


「王宮内は既に制圧し、王宮全体に、シールドを張ったので、既に諸君らは一切攻撃する事が出来ない。

 また、王城の城壁には結界を張ったので、諸君らの逃げ場は完全に無くなった。

 投降する者は、取りあえずの命の保証し、公正な裁判を約束しよう。

 また、無理矢理参加させられた雑兵諸君は、見逃し今後王国に忠誠を再度誓うなら、不問としよう。」

とドレン王の声が鳴り響く。


 すると、一般兵の諸君は、1人、また1人と剣や槍、弓矢を手放し、ジリジリと後退して行く。


 そして、

「再度通告する、諸君らには、投降するか、殲滅されるかの2つに1つしか選択肢は無い。

 これから10秒置きに、指揮官クラス下士官クラスを無作為に処刑する。

 さあ、最初は誰だろうかw ふはははは!!!」

とノリノリのドレン王w


「ああ、それとな、ゲルハッセン将軍以下、全反乱軍の騎士も隊長も全て、その任も地位も解かれておる。

 ゲルハッセン元将軍だなw そのゲルハッセン元将軍の屋敷の方角を見てみよ!」

と言うと、将軍の屋敷の上空からのドローン映像に切り替わり、ディスプレイに映し出される。


 そして、ドレン王の声が、「3、2、1、ファイア!!」と命令すると、

「ブォーーーーーーーーー!」

と王都中に不気味な、今まで生きて来て聞いた事の無い様な、地獄の底から鳴り響く音と共に、将軍の屋敷が2秒掛からずに瓦礫の山所か、赤く煮えたぎった溶岩の様な光景に変わり果てた。


「「「「「!!!!」」」」」


 全員が叫ぶのも忘れ、殆どの一般兵は腰を抜かしている。


「更に仕上げじゃ! ファイア!」

とドレン王が命じると、


「シュドーーーーーン!」

と一瞬で画像が乱れ、真っ白になった後、そこには、青白い火柱が上がっていた。


「「「「「「「うぁーーーーーーーー」」」」」」」

 と悲痛な叫び声・・・いやもはや悲鳴が溢れ出ている。

 ある者は、その場で失禁し、ある者は気絶し、ある者はパニック状態で這う様に逃げ惑う。


「お待たせしたな。では、10秒に1人ずつ、お楽しみタイムとしようかの。

 あ、一般兵の諸君!騎士や役付の者の側に近寄らない事をお薦めするぞ?

 射線に入ったら、容赦無く道連れになるからのぉ。」

とドレン王が言うと、ザザザッと、役付の者や騎士、隊長、副隊長、師団長、将軍、将軍補佐等の近辺には誰も居なくなった。


「ファイア!」と言う号令の瞬間、「ズバシュ!!」と言う聞いた事の無い音と共に、後方に居たゲルハッセン元将軍の辺りの地面が炸裂した。

 ステファニーさんのタンクガンによる一撃であった。


「アワワ、将軍!」

「うぁーーーー! 将軍がーーー!」

と言う声が聞こえた。

 かつて将軍と言われた者を構成していた一部が、炸裂した後方の地面と一緒に飛び散り、何も残ってなかった。


「あらあら、真っ先に元将軍がクジに当たったようじゃのう。フォッホッホ。」

とドレン王が痛快そうに笑う。


 いや、これ、王の指定した通りの順で狙撃してるからね?

 ホント、狸ジジイだわw 役者やのぉ~。

 と海渡が内心突っ込んでいる。


「さて、次は誰かのぉ~。」

と言うと、


「降参する! 投降する!!」

とアッと言う間に全員が武器を捨てた。


「え?もうかい。ちょっとはワシを楽しませて欲しいのじゃがなぁ・・・。まあ約束は約束じゃ。

 武装解除し、今から全員を拘束しに廻るので、無駄な抵抗はするでないぞ?

 先ほどの秘密部隊が廻るからのぉw ちなみに、ワシの様に甘くない者達故、命が惜しければ、勝つ見込みの無い掛けは止める事じゃ。」

とドレン王が宣言し、海渡らが、バルコニーから姿を現し、反乱軍の指揮官や騎士等から、偉い順にロックして昏睡を掛けて行った。


「王都の国民に告ぐ、皆に不安な想いをさせ、大変申し訳なかった。反乱軍は制圧を完了した。もう心配も不安も要らない。どうか心を落ち着けて欲しい。」

と王都民へとアナウンスし、映像が消え、ガラスディスプレイが上空から消えたのだった。


 斯くして、爆発音から、1時間程度で反乱軍は制圧されたのだった。


 王都民の殆どは、一瞬だけ映し出された海渡とフェリンシアの姿が、誰なのか理解出来なかったのだが、海渡やフェリンシアが爆買いした屋台の露店の店主、冒険者ギルドのギルドマスターと職員と一部の冒険者が、

「あ、あれさっきのSSランクの奴だ!」とか、

「あれ、さっき爆買いしてた少年じゃね?」とか

「あの白いコートの子、さっき店にきてたような・・・」

「ヤッベー!さっき来た時、絡まなくて良かったよ。」

と驚いていたのだった。

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