第439話
地下工房へ降りた海渡とステファニーさんだが、
「なあ、どんな携帯食を作る予定なん? しかも地下工房で?」
と不思議そうにしていた。
なので、海渡は、こちらの世界に飛ばされた時に持って来ていた、棒ラーメンの残りを見せた。
「これさ、俺の元の世界の食べ物で、インスタントラーメンって言うんだけどね、これをつくれないかな?って思ってさ。」
と言うと、ガッツリ食い付いて来たwww
「え!? これってカイト君の世界の食べ物なん? わぁ~食べたい食べたい!!」
と小躍りするステファニーさん。
「まあ、大将の屋台の豚骨ラーメンとか、ステファニーさんご推薦の『来来軒』とかのラーメンは、俺の世界でもあったんだ。
これは、それを簡易的に手軽に食べる為の、携帯食?的な物だよ。
ほら、ラーメンのスープとかって、そんなに簡単に一般家庭では作れないでしょ? これは、何処でも水と鍋と火があれば3分で作れるラーメンなんだよ。」
と説明すると、驚いていた。
試しに1食分を作り、2人で分けて食べてみた。
「あーー、久しぶりのこの味www 懐かしなぁ~♪」
と海渡がため息交じりに感想を漏らす。
「へー! こんな味なんか!! なかなかええんとちゃう? これはこれで美味しいで!!」
と豚骨スープまで飲み干したステファニーさんが、なかなかの評価をくれた。
「まあ、真剣に本当の屋台のラーメンと比較すると、また違うんだけどね。でもこれが出先で簡単に食べられれば、これはこれで良いでしょ?」
と海渡が言うと、
「そやなぁ、今までの携帯食って干し肉とか、味のしない不味いだけの堅パンやからなぁ・・・。これさえ出来れば、冒険者が食い付くで!!」
とステファニーさんも売れると太鼓判を押してくれた。
そうと決まれば、早速作業を開始だ!
「さて、じゃあまずは麵とスープを作らない事には生産ラインも何も作れないか・・・。
ここじゃあ無理だから、厨房いこうかww」
とステファニーさんを連れて、2階の大厨房へとお邪魔した。
「まあ、カイト様!!」
と調理スタッフが驚く。
「あ、仕事中申し訳無いんだけど、隅の方をお借りするね。」
とソソクサとスタッフの邪魔にならない、空いてるセクションへと移動する。
まず、ボウルを用意し、一般的なラーメンの麵のレシピ通り、薄力粉と強力粉を1:1で入れ、水に塩と重曹を少々混ぜ合わせて、それをボウルに入れて練り上げる。
ある程度の塊になったら、本来なビニール袋とかに入れてグイグイと踏んだりするのだが、ここは時空間魔法でグイグイと押したったww
折り返しをしては、押し、折り返し、押す。
この折り返し押しの具合でコシが決まるって話だったと記憶している。
そして生地の塊を1時間程、湿気が飛ばない様にして時空間の時短で休ませる。
麺棒でのばし、パスタ製造様のローラー裁断機を使って細麺を作成した・・・所謂、生麺の状態である。
これを今度は魔法で水分を飛ばし、乾麺にしてみた。
「どうかな? 同じ感じになったかな? まあ防腐剤とかは入ってないんだけどね。」
出来上がった乾麺を茹でて、水切りし、おっちゃん特性の豚骨スープに入れて試食タイム。
「おお!!!! 良い感じになってない?」
と一口食べて、海渡が叫ぶ。
「ああ、ホンマや、これ麵も美味しいで!!」
とステファニーさんも絶賛。
「よし、今度はスープだな・・・。」
と海渡が言うと、
「しかしなぁ、スープって難しいんとちゃうの? ほら、材料やその比率やら、火加減やら、色々あるやろ? しかもそれをアレと同じ様に粉にするなんて出来るかなぁ?」
とステファニーさん。
「そうなんだよね。これ(棒ラーメンに付属のスープの素)さ、実際には科学的に作った調味料とか入ってるからね。実際のスープとは似てるけど別物みたいだしね・・・。
まずは、おっちゃんのスープを粉に出来るか試してみるか・・・」
と海渡が、おっちゃんのスープを1杯分ボウルに取り出して、魔法で水だけを取り除いてみた。
すると、水分を除去すると、粉っぽい感じのドロッとした油分の混じった泥・・・っぽい物になった。
おそらく、最後に残ったドロッとした液体は背脂的な物なのかな・・・。
更に、油成分を魔法で分離させてみると、ドロッとした油と、粉になった。
これに、お湯を掛け、茹でた麵を入れ、油を入れて、ステファニーさんと試食してみた。
「どう? 前とほぼ同じ感じの気がするんだけど?」
と海渡が聞くと、ステファニーさんも、同じに感じると言う。
「ふむ・・・さてと、最終的な問題は、どうやって、この油を持たせるかだな。適当な容器になる素材あれば良いんだけどね。」
と海渡が悩む。
「うーーん、この向こうの世界の容器?袋って、こっちでは作れへんの?」
とステファニーさんが、聞いてきた。
「ビニールとかフィルム系だよな・・・。多分、作れない事はないと思うけど、原料から探す必要あるから、現実的じゃないね。
それに原料となる物が、こっちには無い可能性があるし。」
と海渡が言うと、2人で「「うーーーん・・・」」と唸ってしまった。
「油を寒天みたいなのでゼリー状に固めてみる手もあるか?」
と海渡が口にするが、結局はその柔らかい物を何かに包むなりしないといけないと言う事に気付く・・・結局はフィルムっぽい物で密封がベストか。
『ねえ、智恵子さん、何か液体を入れられる様なフィルム容器とかの代用になる素材ってあるかな?』
と困った時の智恵子さん頼りを発動するw
『液体を入れられれば良い訳ですよね? 一番簡単で匂いが付着しないのは、紙素材の内側に光コーティングで防水加工を施した物ですね。』
と簡素な回答が。
「なるほど、紙か! 確かにコーティングしておけば、取りあえず問題はないな。」
と海渡が言うと、ステファニーさんもポンと手を打って「なるほど!」と納得していた。
って事で、早速試作の油パックを紙の容器(封筒型)で作ってみた。
各断面は魔法で融合させ、接合面が判らない状態に仕上げた。
更に内部は酸化防止を兼ねて、空気を排除しておいた。
スープの粉末も同様に紙パックに入れ、酸化防止の為に真空にした。
(本来は不活性ガスとかを入れるんだろうけど・・・)
一食分を紙袋に入れ密封し、時短で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月・・・12ヶ月・・・24ヶ月と経過させてみた。
鑑定と試食の両方でチェックした結果、12ヶ月までは問題無く食べられる事が判明した。
15ヶ月経過した物でも、鑑定上では、食べて問題は無いのだが、味の劣化を感じたので、製造から有効期限を12ヶ月とする事にしたのだった。
さて、最後の山場となるスープだが・・・
「カイト君、スープはあの屋台のおっちゃんに協力してもろたら?」
とステファニーさんが提案してきた。
「ふむ・・・、それは確かに良いアイディアかも知れないね。全部が全部自分たちで・・・ってのも確かに難しいよな。
逆にコラボすれば、収益の分配と言う面でもGoodかもね。」
と海渡も親指を立てて同意する。
となると、まずはコーデリアへGo! って所か。
ふっふっふ・・・久々のコーデリア!! ワクワクするなw
「あ、でも俺達2人だけで行くと、確実にフェリンシアが拗ねるね。」
とハッと気付いてしまう海渡。
「うむ・・・確かに怒るやろうなぁ~w フェリンシアちゃんもコーデリア料理大好きやし。待つか、連絡するか・・・やね。」
とステファニーさん。
結局、伝心で連絡したら、2人が速攻で帰って来たのだったwww
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