第440話


 早速、4人でコーデリアへとゲートで移動し、城門を潜って、屋台のおっちゃんの所へとやって来た。


「おっちゃん!お久しぶりです!!」

と海渡が片手を上げて挨拶すると、


「おう!坊主!! 来たか!www」

と微笑むおっちゃん。


「ちょっとさ、相談があって来たんだけど、取りあえず4杯お願いねww」

とご挨拶がてらのラーメンを注文する。


「だははww ちょっと待ってなw いつものバリカタで良いんだな?」

と笑いながらサクサクと麵を茹でて、4杯を盛り付け、手渡された。


「「「「いただきます!」」」」

と一心不乱にラーメンを啜る4名。


 特にお初のジャクリーンさんは、

「美味しい!!!! ダーリン、これ美味しいよ!!」

と大喜びで食べている。


 その声にニヤリと喜ぶおっちゃんww


 一頻り食べ終わった後、海渡はインスタントラーメン計画を説明し、試作品も食べて貰った。


 ~~


「なるほど、そこでスープの作り方・・・って事か・・・。」

とおっちゃんが、思案顔で呟く。


「はい。まあそれっぽいのを作れと言われれば、試行錯誤すれば、作れるとは思うんですが、どうせなら、おっちゃんの所のスープが最高ですからね。

 あ、一応、豚骨ラーメンと、醤油ラーメンの2製品の予定ではいますが、豚骨ラーメンなら、おっちゃんの所ですからね!

 勿論、秘伝のレシピを教えろ!とかって乱暴な事は言いません。

 逆におっちゃんの監修でスープを製造して貰えると、うちも助かるんですよね・・・。

 ただこの店の事もあるし、スープだけ作り続けろって事でもないので、難しいと言えば難しいんですがね。

 それに、おっちゃんの店とうちの商会のコラボ作品として売り出せば、おっちゃんの所にもスープの代金を渡せるし、下手にこっちだけでやるよりは、完成度も高いんじゃないかと。

 幾ら携行食と言うジャンルでも、味は良い方が良いですもんw

 なので、やり方というか、運営の仕方はご相談の上って感じなんですが、如何でしょうか?」

と海渡が補足しつつ尋ねると、


「ふむ・・・、なかなか面白いんじゃねーかな?

 何処まで協力出来るか判らねぇ~けど、協力する方向でやってみようか!」

とおっちゃん。


「ホントに? わーい!! おっちゃん、ありがとうーー!!」

と小躍りする海渡。


 結局、おっちゃんと話し合った結果だが、おっちゃんの息子さんと娘さんを海渡の国かワンスロットへ派遣する方向で、話が纏まった。

 つまり、おっちゃんの子供らが監修してくれると言う事になった。

 おっちゃん曰く、

「いやさ、どっかの地方にでも屋台か店を出させるかな?って事で、悩んでたんだよな。ほら、ここって店舗の空きとかなかなか無いからな。」

と渡りに船だったらしいwww

 そして、豚骨ラーメン分の利益の10%をロイヤリティとして払うと言う事で、無事契約となったのだった。


「じゃあ、せっかくだから、うちの国の王都に工場作っちゃおうかなw」

とニマニマしながら、考えを巡らす海渡であった。



 その後、ステファニーさんから紹介してもらった『来来軒』でも同様の交渉を行い、了承して貰った。

 こちらも娘さんを派遣して、監修してくれる事になった。


 と言う事で、ウキウキしながら、醤油ラーメンと餃子とチャーハンを堪能する海渡ら4名。


「しかしさ、ダーリン達って本当に良く食べるよね? 何かさっきも食べてここでも食べて・・・私、ダーリンの所に来てから、釣られて食べる量が増えちゃった・・・。

 大丈夫かな?太ってしまわないかな?」

って、ジャクリーンさんが言いながら、ウマウマとがっついて食べていたwww


「まあ、その分、運動量を増やせば大丈夫じゃない?」

とお気楽に返す海渡だった。


 しかし、その内心では・・・

 ジャクリーンさんや、残念ながら、フェリンシアとステファニーさんは参考にならないのだよ? と思っては居たが、口が裂けても言えない言えないww


 その後は、暫くブラブラした後、いつもの寿司屋に行って、特上にぎりを堪能し、またお持ち帰り分もゲットしたwww


 ジャクリーンさんは、お腹一杯です・・・ と言いつつも、初めて食べる寿司にハマっていた。


「まさか、生魚で、こんなに美味しく食べられるなんて!!」

と目から何枚か鱗が落ちてしまったらしいw


「いやぁ~、ジャクリーンもコーデリアの魅力(食べ物)にメロメロになったようだなww」

と海渡が言うと、全員が爆笑していた。



 その後は、色々お酒とか、食料とか食材とかを買い占め・・・いや良識ある爆買いをして、ワンスロットのエルフ組(サンドラさん、ダスティンさん)に配給し、更に希望の岬のエルフやドワーフへも配給したのだった。

 まあ、ドワーフは勿論だが、エルフ組も、ほぼお酒がメインの配給物となるのだがw


 海渡がマサムネさんの所に酒樽と持って行くと、

「おっ!坊主!! 良い物持ってるじゃねーかwwww」

と嬉し気にバカ笑いしながら、ウリウリと肘で突かれたw


「ダーリン、この方は? あ、はじめまして、ダーリン・・・カイト様の所に嫁いで来ました、ジャクリーンです。

 どうぞ、お見知りおきを!」

と頭を下げるジャクリーンさん。


「ほう!坊主もなかなかヤリ手じゃねぇかww」

と真に受けるマサムネさん。 まあ、半分は諦めているのだけどな・・・。


「ああ、紹介するよ、こちら世界一の刀鍛冶のマサムネさん。俺のこの刀もマサムネさんの作品なんだよ。」

と腰の愛刀をポンポンと手で叩く。


「おお!そうでしたか!!! いやぁ~、あの刀は本当に素晴らしいです!! 私も是非ともダーリンと同じ刀に転向したいのですよ。」

と急激に前のめりになるジャクリーンさん。


「ほう、お嬢ちゃん、中々見所があるようだな! よし、じゃあお嬢ちゃんの為にも良い刀を1本打ってやるよ!」

とノリノリのマサムネさん。


 何やら2人で嬉し気にワイワイと刀談義を始めたので、海渡はソーッと席を外して、田んぼの方へとやって来た。

 そこには、既に田植えも終わり、早くも成長した稲が綺麗に整列していた。


 後ろから、エルフのサブリーダーがやってきて、

「カイト様、どうだっぺ? オラ達が育てた稲っ子は? 成長良いだんべ?」

と自慢気に聞いて来た。


「ええ、もうこんなに育っているとは・・・正直驚いてます。

 早く食べて見たいですねw」

と感嘆の声を漏らすと、


「いんや、オラ達も、カイト様に教えられた通りにやってみたけんど、こんなにも違うとは思ってもみなかったべさww

 きっと、今年の秋には豊作だぁww」

とエルフも驚いていたらしい。


 話によると、ジャックさんのテリラス領の稲作も同様に好調らしい。


「こりゃあ、楽しみだなww」

と新米の炊きたてのご飯を想像して、涎が溜まる海渡であった。



 そして、その後、希望の岬ダンジョンに4人で行って、第5階層でジャクリーンさんの強化(と言いつつ海渡は果物採取)に精を出すのであった。


 ジャクリーンさんは、状況に応じて、魔法と剣を使い分け、次々と出て来る魔物を殲滅して行った。

 が!1時間程殲滅を繰り返している所で、ジャクリーンさん剣が折れてしまった・・・。

 丁度キラー・アンツを快調に殲滅し始めた所だったのだが・・・。


「あ! 折れちゃった!!!」

とジャクリーンさん。


「あ・・・折れちゃったね・・・」

と海渡。


 即座に後ろで見守っていたフェリンシアが、前衛を交代して維持している間に、海渡はアイテムボックスの中に予備の武器として死蔵していた、海渡作の刀を取り出した。


「これ、かなり前に俺が打った刀なんだけど、取りあえず貸すから使って。あまり良い出来じゃないんだけどねw」

と言ってジャクリーンさんに渡すと、


「キャァーーー♪ 嬉しい!! 貰っちゃって良いんですか!?」

と大喜び。


「いや・・・貸すだけなんだが・・・ ま、良いか・・・」

とブツブツ言っていたのだが、ジャクリーンさんの歓喜の声に掻き消されてしまったw


 ジャクリーンさんは、剣の鞘を腰から外して、捨て去り、改めて腰に刀を刺して、鞘から抜くと、刀身をジックリと眺め、ハゥ~♪ とため息をつき、顔をキリリと引き締めて、


「大事にします!!!」

と頭を下げた。


 そして、ワラワラと湧き出るキラー・アンツに対峙しているフェリンシアの横に並び立ち、


「お待たせしました! ジャクリーン、行きます!!」

と付与と掛けた海渡の刀で殲滅を再開したのだった。


 最初こそ、剣と刀の特性の違いに手間取っていた様で、かなり力業で切っていたが、数分でコツが判ったらしく、綺麗にサクサクと斬れる様になっていった。

「これ、本当に凄い切れ味ですね❤」

と完全にトリップ状態で、歓声を上げながら、夢中で無双して行くジャクリーンさん。


 途中で、フェリンシアも手出しを止め、3人で見守る体勢に変わった。


 徐々に身体強化や身体加速が、その効果を増して行き、最後のキラー・アンツ・クィーンに対峙するタイミングでは、ラルク少年らのそれと変わらない程になっていたのだった。


「お疲れさん。刀に慣れた様だなw」

とキラー・アンツの殲滅が完了したところで、海渡が言うと、


「はい、最初は戸惑ったんですが、慣れると、刀って凄いですね!! 剣と全く違って。 こんなにも楽に斬れる様になるとは思いもしませんでした。

 これ、大事に愛用させてもらいますね!!」

と鞘に仕舞った刀を胸の間にギューッと抱きしめていた。


 何か、今更記念の品だから返せとは言い辛い雰囲気・・・出来る男である海渡は、場の空気を察して苦笑いするのであった。


「まあ、そんなに気に入って貰えたんなら良いんだけど、それマジであまり良い出来じゃないから、サブウェポン程度の気持ちで居ないと、危ないからね?」

と念の為に釘を刺しておいたのだった。

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