第396話


異世界7ヵ月と1日目。


朝のルーチンワークも朝食も終わり、海渡ら3名はホクホクとしながら、昨日の続きで、ダンジョンのある街へとやって来た。

ここの街にもギルドの支部があり、情報を貰う為に、顔を出す事にする。



朝の8時前だが、まだ冒険者が多く、どのカウンターも冒険者で一杯。

しょうがないので、列に並び、順番が来るのを待つ。


やっと順番がやって来て、3人は金色のギルドカードを提示し、ダンジョンの情報を尋ねる。

金色のカードを見た周囲の冒険者達が、ザワザワしていたが、スルーしておいた。


受付のおねーさん曰く、ここのダンジョンは第17階層が到達最深部で、最下層までどれくらいあるのかは不明らしい。

第15階層までの地図はギルドでも売っているらしいが、ダンジョンまでの道のりで売っている物の方が詳しいと教えてくれた。


「何かついでに、素材回収の依頼は受けませんか?」

と言われ、

「へー? どんなのがあるの?」

と聞くと、

「第17階層のグレート・サーペントの依頼があるんですが、達成されず、長引いてまして、結構困っているんです。」

との事。


また、達成した後の事後受付でも良いとの事だったので、取りあえず、頭の片隅に入れて置き、ダンジョンへ潜る事にした。


ちなみに、弟子ズのみんなは、1期生、2期生が、3,4期生を連れて、希望の岬のダンジョンの第4階層、第5階層を訓練を兼ねて攻略しているらしい。

と言う事だったので、こっちには誘っていない。



ダンジョンまでの道には、多くの出店や屋台、地図売りのおじさんらが立っており、一番評判の良い所で、地図を第17階層まで購入した。

ザックリ見たが、サルド共和国のコルテッサのダンジョンみたいな感じで、大した事はなさそうではある。


ダンジョンの入り口に辿り着き、ギルドカードを提示して、中へと入って行く。

子供が金色のカードを提示した事で、周囲の冒険者がギョッとしていたが、そのままスルーして浅い階層は最短コースでショートカットして行く。

もっとも、浅い階層は地図によると、お馴染みのゴブリンやスライム、ショボい昆虫系ぐらいで、しかもショートカットコースでは、先達の冒険者達が、露払い済みなので、全く魔物に遭遇しないのは、他のダンジョンと同じ。


まあ、希にダンジョンの通路が一部壊れて、モンスターハウスと繋がり、ドッと出て来る事もあるらしいのだが。


第4階層を過ぎ第5階層に入る頃には、前後に居た冒険者達は別の別れ道へと消えて行き、遭遇する冒険者の数も減って来た。

時々剣戟の音も聞こえたりするが、悲壮な叫び声は無いので、そのままスルーしている。


第5階層では、やっと1匹Lv25のケープ・グリズリーと言う小型の熊の魔物が出て来たが、瞬殺して収納した。


第6階層に降りると、沼地エリアで、実に不快。

場所によってはは、深さが底なしの所があるらしい。


「えーーー!?折角のカイト君から貰った服が汚れるやん!」

とステファニーさんが、文句を言うが、そもそも天井まで高さのある大きなフロアなので、律儀に歩く必要は無い。


「え?普通に飛べば良いじゃないの?」

と海渡が言うと、


「アハッww そうやったw」

と笑ってた。


海渡らは、泥濘に足を取られつつ、出て来るポイズン・フロッグや、マッド・フライング・フィッシュ、マッド・フラワー等と戦って居たりする。

ザッと空中から見た限りだと、危なげない戦いっぷりだったので、そのままスルーした。

深さ的にも安全なルートで行くと、迂回する為に、10kmぐらいの道のりになるらしいのだが、直径5kmぐらいのフロアも直線で飛べば、4kmぐらいで第6階層への階段の入り口となる。


第6階層は、また洞窟エリアとなり、幾つもの別れ道や、モンスターハウス、トラップが用意されている。

この階層に入ると、メッキリ冒険者と遭遇しにくくなる。

理由はさっきの、第5階層の沼地で、運べる荷物が大幅に制限される事が、ネックとなっている様だ。


この階層の主な魔物は、ロック・バインドと呼ばれる、ツタの様な植物の魔物や、ポイズン・ラットと呼ばれる鼠の大きい奴。

ポイズン・ラット単体は、大した魔物ではないのだが、厄介なのは団体で攻撃を仕掛けて来る事。

しかも強酸性の毒を噴射するので、非常にヤバい・・・と書いてあったよ、地図に。


スキルのマップで前方から、ポイズン・ラットの団体さんがやって来ているのを確認し、曲がり角の所から、一気に凍らせて、瞬殺する。


「わぁ・・・やっぱり鼠はキショいな。」

とビッシリ床に凍ってお亡くなりになっている40~50cmぐらいの鼠を見て、ゲンナリする海渡。

サクッと闇魔法の触手のネットで収納して、先を急ぐ。


基本洞穴なので、火はあまり使わないのだが、ロック・バインドは、寒さに強いらしく、仕方なく、ファイヤー・ブレス(火炎放射)で燃やしている。


第6層では、ソコソコの回数、魔物を討伐し、第7階層への階段に到着した。


この時点で、ダンジョンに入って約1時間半。時刻はまだ午前9時半。



第7階層は、大好きなジャングルフィールド。

智恵子さんの情報の下、フルーツ類をガンガンと頂いて行く。

合間に邪魔しに出て来る昆虫系の魔物も討伐しているのだが、フルーツ系の採取が愉しくて、全然苦にならないw


楽しい一時も終わり、第8階層へ進む。

ここは、またもや退屈な洞窟エリア。

トラップがややグレードアップしている様だが、全く問題にならない。

それよりも嫌だったのは、この世界に来て初めてお目に掛かった、ゾンビの臭さ。死肉の腐った匂いは最悪で、直ぐに光シールドを展開し、風魔法で空気清浄を行った。

笑っちゃうのは、ゾンビ系は聖魔法や光魔法がダメらしく、光シールドに触るだけで、崩壊して行き、魔石を落としてくれる。


まあ、どっちにしても気持ちの良い物ではないので、他の階同様に、スキル全開で駆け抜けた。


第9階層は、森林エリアで、茸狩りを楽しむ。

魔物はウルフ系や、ベア系、ボア系が多かった。


そして第10階層に到着。

ここは、遊園地のメイズの様な作りで、5mぐらいの壁で出来た迷路があり、彼方此方から魔物が攻撃して来る。

迷路の通路は、幅が5mと広く、小さい魔物から大きい魔物まで多種多様な種類が攻めて来る。


まあ、地図があるから、全く問題ないのだが、面倒なので、サクッと空を飛んで空中から攻めて来る、鳥の魔物だけを討伐して、ショートカットした。


「これさ、空さえ飛べれば、結構楽なダンジョンじゃない?」

と海渡が言うが、


「そもそも、空を飛べる冒険者、海渡の周囲以外では、見た事も聞いた事もないですからねww」

とフェリンシアが笑う。


「そりゃ、時空間魔法の適正を持ってる人が、圧倒に少ないもんなぁ。うちの周りでも1,2人ぐらいしか思い浮かばへんもん。」

とステファニーさん。


「なるほどw」



第11階層は、岩山フィールドで、まるで火星の画像の様な茶色い岩だらけの風景。

この階層では、ストーン・ボールと呼ばれる巨大なアルマジロの様な魔物で、丸まると、直径2mぐらいの球状になって転がって攻撃して来る。

中の肉が外皮に反比例して柔らかく美味しいらしい。

と言う事で、ストーン・ボールは付与を掛けた刀でサクサク切って収納を繰り返す。


更に、このフィールドでは、ハリネズミのデカいバージョン・・・ニードル・ラットが居て、こいつは針を飛ばしてくる。

まあ、針は良ければ良いだけなので、問題は無い。

これもソコソコ美味いらしいので、試しに10匹ぐらいは狩っておいた。


他には、巨大なハエの魔物、ロッテン・フライ。これはもう、迷惑でしか無いので、見つけ次第、燃やしてしまったw

腐って溶ける様な唾液のブレス攻撃とか、要らないからね!


そして迎えた第12階層、これは洞窟フィールドで、またしても臭い・・・。

ゾンビやスケルトン、リビング・アーマーが、ドンドン沸いてくる。

ゾンビやスケルトンは、光シールドだけで行けるんだが、流石にリビング・アーマーはそれだけでは無理で、聖魔法で浄化してやると、サクサクと甲冑や魔石を残して天昇w


と言う訳で、速攻で駆け抜け、第13階層に到達した。

時刻は丁度12時。


13階層は、起伏に富んだ草原フィールド。

パッと見は、景色も良いので、ここで昼食を取る事にする事にした。


早速だが、ストーン・ボールを1匹、血抜きを行い、解体してみた。

肉は綺麗なピンク色で、とても柔らかい。

取りあえず、薄切りにして、鉄板で焼いてみる。


何も付けずに少し味見してみると、確かに美味い。

柔らかく、薄切りでも肉本来の甘みが肉汁と共に染み出てくる感じ。

塩胡椒で食べて見ると、これまた美味い。


「ほう、これはこれで、美味いね。」

と言いながら、何の肉に似てるんだろうと味を確かめるのだが、元の世界の肉では、似た系統の味が見つからなかった。

甘さはほんのりとフルーティーで上品な甘みが染み出る感じ。


今度はステーキにして焼いてみると、これまた美味いwwww

海渡が味わいながら、考えている内に、気が付けば、2人に全部食われてしまい、考え込むのが馬鹿らしくなって、ガンガンと焼き始める。


しかし、匂いに釣られたのか、ピューマの様な大型の猫系の魔物、ジャイアント・ピューマが長い牙を剥きだしてやって来た。


「食うのに忙しいのに!!(怒」

と怒りつつ、アイスカッターで瞬殺し、サクッと闇魔法の触手で収納する海渡。


肉を焼くのと食べる手は止めないw


40分程の昼食休憩を終え、本格的にこの階層を進み始める。

この草原フィールドには、先ほどのジャイアント・ピューマや、デカい昆虫系、空飛ぶ鳥の魔物等が何匹もやって来たが、Lv30代後半ぐらいのため、

全く問題無く駆け抜けて、階段の入り口に辿り着いた。



第14階層は、驚きの氷の世界。

寒いだけでなく、床が全て凍った氷である。

智恵子さん情報によると、気温は-27.6°だそうで・・・。

風が強いので、滑る滑る。体感温度も風のせいで、余計に寒いし。


「幾ら快適な温度調節付きの服を着ていても、顔は凍るよね。さっむーーーw」

と海渡が絶叫しながら、即座に光魔法シールドを張って、風魔法で温度調節を行う。


「ふぅ~。やっと普通に喋れるな。この下を攻めてる攻略組ってスゲーな! あの沼地もだが、ここも真面目に進んだんだろ? いや、マジ、リスペクトだわ。」

と海渡はふと流派の冬期合宿で、いきなり最低限度の装備で、雪山に放り出された過去を思い出し、苦笑いをする。

なんか、色々と突っ込み所の多過ぎる流派だったな・・・と。まあ、今となっては、感謝してるんだけどなw


で、ここでの魔物はスノーマンという、白いゴリラっぽいのと、アイス・リザードと言う真っ白なワニの様な奴。

細かい氷の破片や粒子が吹きすさぶ強風で足場の悪い(滑ると言う意味で)場所での戦闘は、要注意らしい。

しかも所々で、氷が薄く、割れて、飲み込まれるらしい・・・下の湖に。


「そうなると、もう飛ぶしかないよねw」

と海渡が提案し、全員で低空を飛びつつ、スノーマンやアイス・リザードを次々に刀で両断して行く。

スノーマンであるが、これは毛皮が高値で取引されるとの事なので、全てを綺麗に首を切断する。


やっと視界の悪い中、15階層への階段を見つけ、そのまま飛び込んだのだった。

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