第397話
「いや、何となく想像はしていたけど、マジで第15階層が灼熱の砂漠とはなwww」
と予想が当たって笑ってしまう海渡。
「希望の岬のダンジョンの第4階層よりは狭い様だから、チャッチャと飛んで行きますか。」
と暑いのが嫌いなフェリンシアさん。
「「了解!」」
と海渡とステファニーさんも同意する。
この階層の砂漠にはサンド・ワームは出て来ない。
サンド・アンツと言う蟻の魔物や、サンド・リザード、あとは、デザート・デス・バードと言う鳥の魔物が出るらしい。
地図に書かれた注意事項によると、
『サンド・アンツは1匹見たら100匹居ると思え。周りを取り囲まれるな!』
と書いてあった。まるでGだなww
「なるほどな。こう言う意味か。」
と既に階段の出口10mの地点で、1匹に発見され、ワラワラと出て来るサンド・アンツの群れ群れ群れwwww
「これは、これで、多過ぎて怖いねw」
と笑いながら、サクッと凍らせて半径50mの蟻を殲滅する3人。
「こう言うのを見ると、どうしてもゾワゾワとして鳥肌がw」
とフェリンシア。
「うちも、こういうん、ダメやww」
とステファニーさんが両手で反対側の腕を抱くように、してプルプルと震えていたw
この階層は、砂だけに、頻繁に地形が変わるので、出口の方向で進路を決めて進めと書いてある。
階段の出口から、2時の方向らしい。
3人は飛行魔法で、低空を飛んで居ると、1組の冒険者パーティ(と言っても20名)を発見した。
向こうが海渡らに気付き、大きく手を振っている。
どうやら、トラブルらしい。
地上に降りて、
「こんにちは。どうかされましたか?」
と聞くと、
「大変申し訳ないのだが、もし、水を余分に持っていたら少し分けて貰えないだろうか?
実は、2日前にデザート・デス・バードの群れの襲撃を受けて、撃退はしたんだが、その戦闘で、水袋と食料を全てやられてしまってな・・・。
と言うか、手ぶら???」
と海渡らが全員手ぶらである事を見て、明らかに絶望した顔になる面々。
「ああ、それはお困りでしょう。何か容器が必要ですね。水なら幾らでもありますよ?」
と海渡が言うと、「え?」と言う顔をしている。
海渡は、取りあえず、岩塩を少し入れたハチミツ水をコップに入れて20杯出してやる。
「どぞ、塩分も必要なので少し岩塩を混ぜたハチミツ水です。体力が回復しますよ!
あと、普通の水もありますから、ご遠慮なく。」
と言うと、大喜びで、ゴクゴクと飲み干す。
次に、普通の水をコップに注いでやると、これも一気に。
「はぁ~、ただの水がこんなに美味いとは・・・」
と涙を浮かべる面々。
「さてと、水を分けるのは良いんですが、何に入れるかなぁ?」
と適当な容器を考えていたが、
「海渡!水筒水筒!!」
とフェリンシアが指摘する。
「あ、そうだったwww 自分で作っておいて、完全に存在忘れてたよwww」
と海渡も思いだして笑う。
意味が判らず、キョトンとする冒険者達。
海渡は水筒の水袋を出して、
「ああ、これは、蓋を開けて注ぐと幾らでも水が出て来る魔道具なんですがね、作っておきながら、完全に存在を忘れてましたよw これ、買います?」
と聞くと、全員が目の色を変えて、飛びついて来た。
「これ、うちの商会、幾らで販売してたかな? まあ、良いか適当でwww 金貨1枚ありますか? 多分、うちの商会の店舗で買うと、もっと高かった気はするけど・・・」
と言うと、速攻で金貨1枚が出て来た。
「毎度ありぃ~♪」
と言いながら、肉串を全員に渡してやる。
「食料も要るんですよね? どうやって渡すかなぁ・・・。保存食あったっけ?」
とアイテムボックスを確認するが、干し肉が少しある程度。
丸1日以上、飲み食いしてなかったそうで、アッと言う間に肉串を食べ終わっている。
更に、もう1本づつ肉串を出して渡す。
2人に確認したが、全員共にアイテムボックスがあるので、そもそも保存食を持つ必要が無い。
「困りましたね・・・食料も沢山あるんですが、全部生ものか、調理済みの物なんですよ。」
と海渡が言う。
「ところで、あまりの状態で思考能力が低下してたんだが、君らさっき空飛んでたよね?
それに、さっきから、色々出してくれてるけど、何処から出してるの?」
と代表らしき冒険者がハッとした表情で聞いて来た。
「ああww そこからですかw 魔法で飛んでますね。物はアイテムボックスと言う幾らでも入るスキルがありましてね。
収納した物は、時間経過が無いので、新鮮なまま、何時でも出し入れ出来るんですよ。」
と言うと、「何それ!超便利じゃん!!!」と叫んでいた。
「ああ、そうだ。マジックバッグとかマジックバックパックとかマジックポーチってのがあるんですが、買います?
容量は無制限で、時間経過もしないので、食料や倒した魔物の素材とか、入れ放題っすけど。ただ、これ、物が物だけに、結構高いんですよね。」
とマジックバッグ、マジックバックパック、マジックポーチを出して見せる。
「これ、誰か1人が所有者として、初期登録して、その人しか出し入れ出来ないんですよ。」
と言うと、滅茶滅茶食いついて来た。
「是非とも欲しい!!! 幾らで売ってくれる?」
と。
「これ、本当は白金貨1枚とかそんなレベルなんすけど・・・今、幾らもってますか?」
と聞くと、
「全員でかき集めても、金貨25枚だな・・・」
と凄く悲しい顔をしていた。
「じゃあ、その金貨25枚で、3個売りますよ。1個だと、もしその人が死んじゃうと、出せなくなりますからね。分散させておかないと、ヤバいですし。
どのタイプが良いですか? 冒険者なら、お薦めはバックパックタイプか、ウエストポーチ型なんですがね。」
と海渡が言うと、大喜び。
聞けば、4パーティの合同チームらしく、5名のポーターを雇ったらしい。
なるほどな。
「4パーティですか。じゃあ、大まけにまけて、その値段で4つ売りますよ。じゃないと、後でモメそうだしww」
と言うと、ああーーって感じで頷かれた。
4つともバックパックタイプを希望し、4つ出した。そして後々問題になりそうなので、水筒も3つ追加した。
食料はサービスで色々と出してやった。
「じゃあ、この先まだ長そうだから、気を付けて下さいね!」
と言って、階段に向けて飛び立った。
「なあ、俺達、水分不足で今蜃気楼でも見てる訳じゃないよな?」
と一人がボソッと呟くと、みんなが、ハッとした表情になり、ホッペを抓ったり、殴ったりしていた。
痛い頬を擦りながら、「「「「「夢じゃないwwww」」」」」と爆笑するのであった。
海渡達は、飛びながら、
「今後はこう言う事態も想定して、携行食も持つ様に考えた方が良いかもな。」
と話していた。
その後、デザート・デス・バードの群れに2回、サンド・リザードが数匹、サンド・アンツの群れは3回出て来て全てを殲滅した。
特にサンド・アンツは、彼らの進行方向上だったので、念入りに。
「やって来ました、第16階層。」
ここは、森林ステージ。
トレント、スパイダー系の魔物、ドリーム・バタフライと言う、鱗粉を空気中にまき散らして麻痺させる大きな蛾の様な奴・・・モスラ?
そして、フォレスト・ボア等が主な魔物らしい。
まあ、ここは大した事も無く、サクサクと進みまくる。
途中、他の冒険者パーティに出会った。
「こんちは!」
と挨拶して、通り過ぎようとしたのだが、思いっきり呼び止められた。
「ちょっ! 何、こんな深いところで出会ったのに、そこらの道ばたですれ違ったかの様に、通り過ぎようとしてるのよ!!」
と。
「はははw おねーさん、上手い事言いますねww」
と海渡が言うと、
「そ、そう? へへへ」
と照れてらっしゃる。
「じゃあ、そう言う訳で!」
と片手を上げて、スルーしようとしたら、肩をガシッと掴まれた。
「あれ? 何か肩に地縛霊が・・・」
と海渡が言うと、
「コラコラ、何自然にスルーしようしてるのよ! こんな可愛い地縛霊がいるか!!!」
と突っ込まれた。
「ふふふ、バレましたかw 流石です。」
と海渡。このおねーさん、面白いねw
「私らは、『乙女の知恵袋』って言う、うら若き女性だけのパーティ。私はリーダのアンジュ。よろしく!」
とノリの良いアンジュさん。
「で、どうしました? 何かお困り事でしょうか?」
と海渡が聞くと、
「いやいやいや、そっちよ、そっち!! あんたら何も荷物も持たず、たった3名で・・・もしかして、第15階層で荷物やられちゃったんじゃないかと、心配してさ。」
と人の良いアンジュさん。
「ああ、なるほど! 心配してくれたのですね。それは、ありがとうございます。 でも、大丈夫ですよ。荷物・・・まあ物資は持って居るので。アイテムボックスってスキル持ってまして。
ほら、この通り・・・」
と小麦粉や水の樽、そして焼きたての肉串を取り出して見せる。
「え!!!!!? 何そのご都合主義な、便利スキル!!!」
と驚く乙女の面々。
フェリンシアとステファニーさんが、全員に肉串を配ってらっしゃるwww
「お、美味しいじゃな! しかも焼きたて!!!」
とガツガツ食べて居る。
つられて、手に持った肉串を食べる海渡。残り2名も既に両手で持って食べて居る。
「ふう。おごちそうさま。まああんたらが便利機能持ちって事は理解したわ。 でも、たった3名ってもしかして仲間亡くしたか、はぐれたの?」
と聞いてきたので、
「いえ、最初から3名ですよ。今日は日帰りで、行けるところまで行こうかなって感じでして。」
と言うと、
「え?あんたら、何? 今日第1階層から潜ってここまで来たって事?」
と驚いている。
「まあ、そうですね。朝の8時からです。」
と言うと、ガーーーンって表情で、ヨロヨロと崩れたwww
「私らなんて、何日目だと思ってるの?」
と。
そんな事言われても、知らんがなwww
「いや、まあ、俺ら、ちょっと出来る子なんで、あまり気にしちゃダメです。気にしちゃ負けですよ?」
とorz状態のアンジュさんの肩を、優しくトントンする海渡。
「そ、そうか・・・。」
と言いながら、立ち上がるアンジュさん。
「まあ、あんたらも、この先、気を付けてね。なんか、要らぬ心配して悪かったわw」
と。
「いえいえ、こちらこそ、ありがとうございます。もし食料とか水とか必要あれば、お分け出来ますが?」
と言うと、
「ふふふ、ありがとう。大丈夫よ。」
と言っていた。
なので、せっかくだから、
「親切に、心配して頂いたので、お礼にこれを。1人1本。試供品って事でw」
と海渡作のエクサーアンプルを渡した。
「ん? ああ、ありがとう。で、これなに?」
と聞くので、
「ああ、それね。ポーションです。何かで死にそうな時にでも使って下さい。生きてさえ居れば、部位欠損ぐらいなら、治る筈なんで。」
と言うと、
「そう、ありがとう・・・って、部位欠損??? 何それ、神話に出て来るエクサー? まさかねwww」
と笑っていた。
じゃあ!と片手を上げて、瞬時に走り去る海渡達。
「はやぁーーっ! 何か色々規格外な子達だったな・・・。」
と言いながら、貰ったエクサーを見つめる15人の乙女達だった。
それから、何回か、魔物を撃破し、第17階層に突入した。
第17階層は、普通の陸地と沼地の混合フィールド。
「ついに、やって来ました、第17階層。 一応、到達最高階層らしいな。グレート・サーペントだっけ? 依頼のあるのは?」
「そやな。」
「いよいよですねw」
と微笑みながら、フィールドを確認する3名。
このフィールドの地図は未完成で、出て来る魔物のリストもグレート・サーペント、ポイズン・フロッグ ぐらいしか書かれていない。
と言う事で、マップを確認すると、沼地に赤い点が沢山あり、大きな点4つが、グレート・サーペントだった。
他にも陸地部分の林の辺りには、フォレスト・ウルフの群れや、フォレスト・ボア等が居る。
「じゃあ、まずは、依頼のある、グレート・サーペントから行こう!」
と沼地へ直行する3名。
沼地に近づくと、一斉にポイズン・フロッグからの毒唾液の連射攻撃を受け、念のための光魔法のシールドを展開しつつ、アイスニードルで次々にやっつけてながら闇魔法の触手で格納していく。
すると、戦闘の音を感じて、グレート・サーペントが一斉に動き始める。
「素材狙いの依頼だから、凍らせて素材を傷つけないようにしよう!」
と言って3方から迫って来るグレート・サーペント4匹のそれぞれが沼からおびき出し、凍らせた。
凍って生命活動を停止したように見えるグレート・サーペントだが・・・
「あれ? まだ生きてるね。冬眠?」
と海渡が驚く。
しょうが無いので、結局首を刎ねて完全にトドメを刺したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます