第360話


異世界3ヵ月と21日目。


朝目覚めての最近の嫌な習慣で、ゲルハルト帝国の行軍具合をチェックする。


先頭集団は相当無理をしたのか、国境40km地点まで来ていた。

そして逆に最後尾は80km地点となって、更に差が開いていた。


「正に『自滅乙』としか言いようがないな。」

と素直な感想を漏らす。



海渡も明日には、出発して、スタンバイする予定なので、今日1日は好きな事をやって、ノンビリ気持ちを楽に過ごしたいと考えている。

そうなると・・・第5層を目指す事か! ん?と考えると普段と同じなのか?www


あ!!! 1つだけやりたい事あったわ! 音楽!! 音楽を再現したい!

と言う事で、頭の中に思い浮かぶメロディーを様々な楽器の音源で生成する手段を考える事にした。


『と言う事で、智恵子さん、早速だけど、何か良い案ない?』

と言うと、


『海渡さんの記憶内にある音楽なら、水晶記憶体に海渡さんの元の世界で言う所の『音楽のバイナリーデータ』として保存する事が可能ですよ?』

と簡単な回答がw


『え? 何その凄い機能。 だったら、もっと早くに聞くべきだったなww あ、でも、完全に全フレーズを思い出せない場合は?』


『その場合でも一度でも全部聞いていれば、細部まで再現可能です。ふふふ』

との事。



と言う事で、作りました、バイナリーデータ。

そして、実験用のスピーカーに接続し、再生してみました。


「てゅりゅるーーー♪ てゅりゅるーーー♪♪ てゅりゅるーーーーーー♪♪♪ パンパラパンパン パンパラパンパン パンパラパンパン パンパパンパパッパララーー♪」


「おーーー!!!!! これじゃん!これこれ!!」


「よし、これをサーバーにアップロードしてっと、次にヒラメ君のスクリプトコマンドを弄って、ここに再生を入れて任意の時までループっと・・・」



「ふっふっふ・・・出来たぞwww」

と早朝の地下サーバールームでニヤリと笑う海渡であった。



朝練を終えて、風呂に入り、ノンビリとしていると、


「兄貴ぃ~」

とラルク少年が湯船に入ってきて寄って来た。


「ん? どうした?」

と言うと、


「兄貴、明日向かうんですよね? おいら達も付いて行っちゃダメですかね?」

と。


うーーん・・・これは戦場・・・しかも一方的で、非人道的な奴だからなぁ・・・。

あまり子供に見せる物じゃないんだよな・・・。


「気持ちはありがたいが、今回はダメだ。今回のは戦争とすら言えない物だ。俺も出来ればやりたくないんだぞ?」

と胸の内を吐露する。


「そうですか・・・、じゃあ、その後で何か我々で手伝える事があったら、本当に迷わず命令してくださね!」

と言ってくれた。


「ありがとう。多分色々頼む事になると思う。 だからその時は宜しく頼むな!!」

とお礼を言って、風呂を出た。



大食堂に降りて、朝食を食べていると、オスカーさんとヨーコさんがやって来た。


報告を聞いていると、各支店で、自動車やトラック、バスの販売台数が凄い状態らしい。

生産台数は、十分間に合っているが、現在一番ネックになっているのは、パイロットスキルを生やす為の講習が、間に合わない事だそうで。

今は、航空部門のパイロットを、必要に応じて出張させ、一時しのぎしているらしい。


「また人員増員しないとダメですね。」

と少し項垂れていた。


「まあ、そんな時に悪いんだけど、明日から俺とフェリンシアは、数日間居ないから、上手くやっておいてね。

従業員にしなくても、外注で、一時的な教官に仕立て上げれば結構行けるんじゃない?」

と言うと、


「ああ、なるほど。その手もありますね!」

と言っていた。


ヨーコさんは、

「ちなみに、何日ぐらいお留守になる感じでしょうか?」

と心配そうに聞いて来た。


「うーーん、出たとこ勝負だから、早ければ3日ぐらい? 長ければ・・・7日ぐらいかなぁ? あんまり関わりたくは無いんだけどねぇ。」

と答えると、


「あまり無茶はされないように、お願いしますね!」

と懇願された。


「うん、ありがとう!」

と答え、微笑んでおいたのだった。



ダンジョンへ行く前に、一旦部屋で、両国の王様へパーティモード(多数間通信)で連絡を入れた。

「どうも、海渡です。明日出発して、先方の開戦と同時に帝都、及び各都市の中心部を叩く予定です。

その後は治安維持モードで都市上空を巡回し、略奪行為、傷害行為、強姦等の犯罪行為を発見したら、即座に射殺する事になりますので、早めに各都市に派兵して静定して下さいね。」

と言うと、


「「判った(のじゃ)・・・」」

と微妙な雰囲気で返事が来た。


と言う事で、妙な流れになる前に通信を切って、早速ダンジョンを楽しむ事にした。




フェリンシア、ステファニーさんと弟子ズを連れだし、ダンジョンの先日のオアシスへと出た。


「さあ、今日はここからだな。出来れば今日中にこの階層から出たいなぁ・・・」

と願望を垂れ流しつつ、2台に分乗して出発。


ソコソコの回数の魔物の襲撃を瞬殺しつつ、2つ目のオアシスに到着。

このオアシスは当たりw ダンジョン椰子ガニ1匹とヘブン・ココナッツの実をGetだぜw


続く3つ目のオアシスはスカ。 4つ目もスカ。

そして、やっと昼前に前方後円墳に到着した。


「ああ・・・何か懐かしい雰囲気w」

とあちらの世界を思い出す海渡。


まずは腹ごしらえと言う事で、前方後円墳付近の草原に腰を降ろし、全員で昼食を食べる。

「今回はサンドイッチシリーズにしました。」

と言って、サンドイッチの入ったバスケットを取り出す海渡。

飲み物はポタージュスープにした。

結構大きめのバスケット4つが、凄い勢いで空になっていく怪奇現象を見て、そっとマツタケご飯のお握りを出すと、それもサクッと空になったのだった。


ソコソコ満腹になったようなので、前方後円墳に入って行く海渡ら一行。

内部は、石造りのトンネルで、他同様に迷路になっていた。

で、ですよ、この前方後円墳の中に出て来たのは、埴輪www そして、土偶!!!

弟子ズが瞬殺する様を見ながら、懐かしいねぇ~ww と和んでました。

(まあ、若干設定に時代差がある気はしたんだけど、そこら辺は追求しません。)


罠もあったけど、宝?もあった。

付与された勾玉のネックレスや、ブレスレット、何の付与も無いただの銅鏡ww


「ボス、この銅の丸い円盤って何でしょうかね?」

とプリシラが不思議そうにしてたので、

「ああ、それは鏡の代わりだよ。」

裏面を見せてやると、笑ってた。


あと風魔法を付与された草薙剣(くさなぎのつるぎ)もあったね。


最後の部屋で出て来たボス格が、まんま大魔神だったのには爆笑してしまった。

弟子ズは大きさにビビってたけど、瞬殺でした。


結果だが、ここもスカだった。

直ぐにゲートで第4階層の階段まで戻り、最後のギリシャのパルテノン神殿に向かう事にした。

現在、時刻は午後2時。


ノンビリ行くと間に合わないので、サクッと空を飛んで行く事にしたのだが、プリシラの飛行速度が思った以上に遅い事が判明し、一旦砂漠の尾根に降りて、飛行機で行く事にした。


「なんか、私のせいで、皆さん申し訳ありません。」

とプリシラが落ち込んで居たので、


「まあ、元々後発なんだから差があって当然だし、次の機会までにもっと練習しておけば良いんだよ。焦る事はない。」

と慰めると、目に涙を溜めていた。


そして、飛行機でオアシスを通過しつつ、パルテノン神殿へと到着した。


パルテノン神殿は、岩肌の丘の上にあり、石柱の隙間から内部に入ると、中央に階段を発見。


一応、注意を促しながら、階段を降りる。


長い階段を降りきると、どうやら第5階層に到着したらしい。


そこは、ジャングルだった。

階段から出ると、マップ上に無数の赤い点が現れる。

この階層は海渡のマップ表示範囲より大きいらしく、階層の広さまでは不明だった。


「お!森?ジャングル? もしかして、美味しいフルーツ満載か?」

と即座にドローンを2000機飛ばし、情報を収集させる事にした。


その間は階段の出口前で椅子を出して、お茶やジュースを飲んで休憩にした。

しかし、それでも終わりの知らせが無いので、今後の為に、『伝心』スキルと全員に取らせる事にした。

まあ、普段から一緒に行動する事が多いせいか、『伝心』スキルが生えるのは、異常に早かったw


しかし、40分経ってもエリア検索は終わらず、午後3時になってしまった。

「おいおい・・・このエリアってそんなに広いのかよw なんかベラボウなダンジョンだなww」

と海渡が笑っていると、


「ダンジョンはな、長い年月を掛けて成長するんやで。 と言う事は、このダンジョンは相当古いっちゅうこっちゃ。もしかしたら、この大陸で一番大きいダンジョンとちゃうやろか?」

とステファニーさんが、教えてくれた。


「そう言えば、今あるダンジョンで一番階層の深いダンジョンって何階層ぐらいなんでしょうね?」

と聞くと、


「うーーん、ここ数百年で最深部に到達したっちゅう話は聞かんよって、判らんのよ。」

と。


「ここのダンジョンは今までの傾向からすると、深くなればその分広くなって行ってるので、ここも半径500kmぐらいあったりしてなww」

と冗談を言っていたのだが、答えはその直ぐ後だった。

全域のデータ収集完了を知らせるアラームが鳴り、即座に帰還用パレットを出して、即帰還命令をだす。


タブレットには全エリアの情報が入って来た。

全員でタブレットを覗き込むと、マジで半径約500km、直径約1000kmである事が判明した。


「マジかww」

と苦笑いする海渡と他の面々。


「よし、じゃあ、少しだけ周囲の探索すっか!? グループに分かれてやるか。 どうだ? お前らだけでやれそうか?」

とケモ耳ズと少年少女隊に向けてニヤリと笑うと、


満面の笑みで「「「「「「「イエス・サー」」」」」」」と敬礼していた。

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