第349話


ジャックさんと海渡ら10名と1匹を乗せたバスが、テリラスの街中を走ると、通行人も屋台や店舗の店員も、みんなポカンとして目で追っているが、バスに掛かれたカイト印を発見し、「あぁ~w」って顔になっていた。


「そうそう、ジャックさん。このバスやトラックですが、これが普及すると、既存の業者達が負けてしまいます。

当方では、彼らの食い扶持を潰す気はないので、一応既存の乗合馬車や運搬業をやってる方向けへの救済策として、リース契約による貸し出しを推進しています。

そうそう、買える金額じゃないので・・・。 リース契約は交渉各支店が窓口になってまして、大体利益の1割ぐらいを支払って貰う事を考えてます。

その分、メンテナンス等もこちらで行うので、殆ど負担にはならないと思っているんですが・・・。」

と説明しておいた。


「街のみんなの顔が、目に見えて明るくなりましたね。」

と嬉し気に海渡が言うと、


「お陰様でなw 今までは作っても売る方法が限られてたから、経済が停滞してたんだよ。

今は、さえじま商会のお陰で、うちの野菜のおいしさが認知されてさ、ブランド化してるじゃん。だからかなり余所からの買い付けが来てるんだよね。

それに、マジックバッグさえあれば、腐る事もないからね。」

と言っていた。


コーヒーを求める商会も多いらしいが、コーヒーに関してはさえじま商会との独占契約となっているので、お引き取り頂いているらしい。


それを聞いた海渡は、考え込みながら、

「ふむ・・・、ソロソロ独占契約の縛りを外すべきかも知れませんね。その方が、テリラス領の発展の為にも良いかも。うちの商会だけに利益が集まるのは宜しくないですからねぇ・・・」

と呟く。


「え? そうすると、せっかくここまでカイト君が投資してくれたのが、利益薄くなっちゃうよ?」

とジャックさんが驚く。


「まあ、うちの商会、ぶっちゃけ、もの凄い黒字なんですよ。お金が一箇所に溜まり過ぎると良く無いんですが、あまり大幅に使う先って無いんですよね。

それに、認知さえされれば、どっちにしてもうちの優位性は保たれてますし。逆にうちの支店とかが無い所へ持って行って売る商会とかもあるんじゃないかと。」

と言うと、


「なるほど・・・」

とジャックさんが考えていた。


「まあ、一度当方のオスカーに相談してみますね。」

と締め括った。




久々にジャックさんの領主館にやって来た。


バスが、ロータリーに止まると、玄関ホールから、アリスちゃんと、クリス君が飛び出して来た。


「「あ! カイト様(君)だーー!♪」」


「お久しぶりですね。お元気そうで何よりです。」

と海渡が挨拶している最中に、アリスちゃんは駆け寄ったその勢いのまま、飛びついて来た。


「うわっ! ビックリするじゃないですかw」

と言うと、


頬をプクッと膨らませながら、

「ずっと待ってたのに、中々来てくれないからですよ?」

とアリスちゃん。


ジャックさんは、後ろで ハハハ と笑っている。


「カイト様、聞いて下さい! アリスはカイト様と同じ、5歳になったのです!!」

と胸を張るアリスちゃん。


「おお、それはおめでとうございます。しかし、私も6歳になりましてねw」

と言うと、ガーーーンと言う表情をして崩れ落ちた。


「せっかく追いついて同じ歳になったのに・・・。 来年こそ頑張って追いついてみせるわ!!」

と呟いていた。


アリスちゃん、ごめんね、永遠に追いつく事は無いんだよ?

と心の中で突っ込む海渡だった。



夕食の準備が整うまでと言う事で、応接室に通されるが、ガチガチに緊張している弟子ズの面々。


「君達、そんなに緊張しなくても良いよ? カイト君をご覧よ! まるで自宅に居るようじゃないかww」

とジャックさん。


「いえいえ、自宅だともっと抜けた顔してますからね? まあでも、そこまでガチガチにならなくても、少々の無礼なら許してくれるよww 多分。」

と弟子ズにリラックスさせる。


「ところで、皆さんはカイト様の部下になるんですか?」

とアリスちゃん。


「いえ、部下と言うより、弟子達ですね。 うちの商会は12歳未満は雇ったとしても、メインスタッフではなく、孤児支援プログラムや託児ルームでの扱いとなって、その間に将来の為の勉強等を教えているんですよ。

で、彼らは、その中でも『強くなりたい』と言う事だったので、私やフェリンシアが弟子として鍛えている所です。冒険者としてのランクも上がり、かなり強くなったので、大分安心して見ていられるようになりましたよ。」

と説明すると、


「カイト様も、皆様も凄いです!!」

と目をキラキラさせるアリスちゃん。


「兄貴、姐さんのお陰っす!」

とラルク少年が、頭を掻きながら照れてる。


「ほう! カイト君が鍛えてるのか!! どれほどの実力なんだい?」

と興味津々のジャックさんとクリス君。


「こちらの、プリシラがCランクで、他全員がBランクですね。 戦闘力だけで言えば、全員十分Aランクに入ってると思ってます。」

と言うと、横でフェリンシアもウンウンと頷いている。


「え!? そんなに強いの!!」

と驚くジャックさん。


「ええ、先日、サルド共和国のダンジョンに観光で潜ったんですが、第18階層まで私はほぼ手を出す事が無くて、暇でしたからね。」


「え?サルド共和国のダンジョンって、コルテッサのダンジョン?」


海渡が頷くと、


「あそこって、第18階層辺りって、バジリスクとかコカトリスとか出るんじゃなかったっけ?」

と聞くので、


「ええ、そうですよ。 良くご存知ですね!」

と海渡が言うと、


「えーーーー! そんなのをやっつけちゃうの? とてつもないなw いや、まだ若い頃の話なんだけどさ、俺も一時期家を出て冒険者やりたかったんだよね。

それで、ダンジョンとかも結構調べて夢膨らませてたんだけどねw まあ結局は跡継ぎ俺しか居なくて、夢で終わったんだけどねw」

とジャックさんが、苦笑していた。


それまで子供達には言ってなかったらしく、クリス君が、「えーーーー!?」って叫んでいた。


「でも、第18階層でボスが、石化した冒険者を大量に助けたじゃないですか。あれは私達には真似出来ないですよ?」

とミケが言うと、


「え? そんな救出劇あったんだ! 凄いな。」

とジャックさん。


「まあ、元々日程の問題で日帰りの予定だったから、そこで引き返す事になったんですけどね。 出来れば、最高到達階層を更新したかったんですがねぇ。」

と海渡が残念そうに言っていた。


「まあでも、そのお陰で、新しいスタッフにもなってくれたし、良かったじゃないですか?」

とフェリンシア。


「そうだね。そこは良かったね。 でも、最高で約10年石化されてた人も居たから、ビックリだったけどね。」

と言うと、ジャックさん達はビックリしていた。



「なあ、参考までに、どうやってバジリスクとかコカトリスとか石化攻撃しかける奴を倒したの? ヤバいじゃん?」

とジャックさん。


海渡が、ケモ耳ズ振ると、

「石化のブレスや毒液を浴びなければ大丈夫ですよ。 つまり敵の攻撃レンジ外からの攻撃や、接近戦なら、素早く動いて攻撃に当たらなければ大丈夫でした。」

とミケが代表して答えていた。


それを聞いて、少年少女隊3名が悔しそうな顔をしていた。

「「「行きたかったなぁ・・・」」」

と呟きながら。


「大丈夫だって、またその内、サルド共和国に行くし、その時はちゃんと連れて行くからさ。2日間ぐらい潜れば、何階層まであるか判らないけど、30階層ぐらいまでは行けるんじゃないかな?」

と海渡が言うと、拳を握って、気合い入れていた。




夕食の準備が整ったと食堂に通され、テリラス自慢の野菜をふんだんに使った料理を堪能する。


「兄貴! この野菜美味しいっす!!」

とラルク少年が絶賛していた。


肉スキーなケモ耳ズだが、

「わぁ、何このお野菜、肉汁たっぷり吸ってて美味しいです!」

と4名がワキャワキャ言いながら食べている。


フェリンシアもステファニーさんも、ガツガツと食べ、お替わりをお願いしていた・・・。

「なるほど、お替わりアリのシステムなんですね?」

とケモ耳ズもお替わりを・・・。


結局、いつもの様に、ジャックさん御一家がドン引きする程、食べてしまい、


「あーー、何か食い荒らしちゃったみたいで、申し訳ありません。」

と海渡が謝ると、


「ハハハ、大丈夫だよw」

と笑っていた。

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