第341話


かれこれ、第4階層に入ってから1時間半が経過しているが、尾根経由で走って居る為、まだ第一オアシスには到着していない。

しかし、さっきから海渡の車を追う様に、赤い点が背後からやって来ている。


「ねえ、フェリンシア! さっきから俺らの蹟を追いかけてきてるストーカー、どうしようか? 鬱陶しいよね?」

と言うと、


「そうですね。サンド・ゴーレムってのも見てみたいですよねw」

とフェリンシア。


サンド・ゴーレム・・・まあ名前で何となく想像出来るのだがな。


「よし、じゃあ、一旦ここで、迎え撃ってみるか。」

と車を尾根の上で、180°ターンし、止めた。


一応、ルーフのガトリングガンをスタンバイモードに切り替える。

20秒ぐらいで、モニタのターゲットにサンド・ゴーレムの姿が映し出された。


「あー・・・、まあ姿形は想像通りだったな。」

と海渡が呟く。


砂で出来た人型の集合体・・・生き物の様に手足を動かしながら近づいて来ている。

動作は鈍く、動きが遅い。


「ちょっと試しにガトリングガン撃っちゃおうっとw  ポチッとな!」

と海渡がハンドルに付いたトリガーボタンを押すと、


ブオーーーーーーーーーーー

と屋根から轟音が響き、モニターのターゲットマークに吸い込まれて行く弾丸の余波が波紋の様に映し出されている。


「うん・・・全然効果ないね。砂だもんね。 でも魔物ってからには、何処かに魔石あるんだよね? 魔石やれば死ぬよね?」

と海渡が言うと、


「ですよね、まあ普通に考えると、胸か頭辺りですかね? でも、魔石壊すのって勿体なくないですかね?」

とフェリンシア。


「うむ・・・確かにそうなんだよね。」


一旦車外に出て、車を収納し、魔力感知を高めた3Dマッピングで遠くのゴーレムを確認すると、左胸に魔力・・・それも相当にデカい魔力の集中が見えた。


「魔石はどうやら、左胸の心臓の位置だな。」

と海渡が告げる。


身長約40~50mの巨体を持つサンド・ゴーレムが、やっと200m付近までやって来た。



そして、腕を振り上げて、手から砂の竜巻を海渡らに向けて発射した。

『サンド・トルネード』と言ったところか?

海渡とフェリンシアは左右二手に別れて回避すると、居た場所の尾根が完全に崩れ無くなっていた。


「おーー、結構な破壊力だな! じゃあ、火魔法でお返ししてみるか。」

と海渡は魔力を右手に集めて、サンド・ゴーレムの足下から酸素を込めた火柱をイメージして発動する。


チュッドーーーーーンと青白い火柱が上がり、一気に周囲から火柱に向かって空気が流れ込む。


「おーー!派手ですねwww」

とフェリンシアが海渡の側にやって来る。


火柱の中でサンド・ゴーレムさんがジタバタと暴れてらっしゃるw

まあ、それでみすみす逃がす訳はないのだがなww ちゃんとホーミングもイメージしてるから、多少動いた所で、逃れられない訳だ。


サンド・ゴーレムの足下の砂が溶け、ドロドロと溶けて徐々に体が小さくなっていく。

更に頭部分と両腕にへ酸素を込めた高温のファイアーランスを2発づつ、合計6発を同時に叩き込むと動きが止まった。(動かす部分が無くなった。

丁度魔石の辺りまで来たので、火柱を消すと、体の一部を構成していた砂が崩れ落ちて、一緒に馬鹿デカい魔石がゴロンと転がり落ちる。


慌てて闇魔法の触手で、魔石をキャッチして収納した。


「魔石、あぶねーーwww しかもデッケーーー!!」

と海渡が叫ぶ。


アイテムボックスから取り出して、見てみると、直径80cmぐらいの巨大な魔石だった。


「使い勝手がありそうな、魔石だな。」

と海渡がほくそ笑む。



で、サンド・ゴーレムの居た場所だが、砂が溶けてグツグツと真っ赤に煮えたっていて、徐々に周りの砂を溶かし広がっている。

まるで、赤い蟻地獄の様に、段々すり鉢状に落ちて行く。

溶けた砂が冷えた場所は、ガラスや金属が混じった様な色に固まっている。

鑑定してみると、ミスリル、アダマンタイト、ガラス(ケイ素)、鋼鉄・・・等、かなり美味しい金属が出来ている。


「あれ?もしかして、この砂漠の砂って、滅茶滅茶美味しい成分なんじゃ?」

と海渡が呟くと、


『ええ、海渡さん、その通りですね。ここの砂は海渡さんが工作に使う成分をふんだんに含んでおります。

もう、持ってけ泥棒レベルですww』

との事。

なんと、都合の良い事ww

とほくそ笑む海渡。


だが、このままにしておくのもヤバそうなので、一応赤く溶けた砂の成れの果てを冷やす事にして、大量のアイスランスをぶっ込んでみる。


チュッドーーーンと水蒸気爆発が起きた。


「あ!ヤバ!!」


と冷や汗を流す海渡。


「わぁ・・・派手に行きますねw」

と冷静なフェリンシア。



更に暫くすると、最悪の事態を招いていた・・・。

砂嵐である。

大量の空気の流れに水蒸気を混ぜてしまい、上昇気流が生まれてしまって、海渡達の背中を叩く様に砂の混じった強風が吹いてきている。


「フェリンシア、ごめん・・・ちょっと一回、階段の所まで待避しよう!」

とゲートと発動して、第4階層の階段の出口に出た。


「ふう・・・ここまでは影響なさそうだな。 いやぁ~焦ったww」

と海渡がホッとして言う。


「砂漠って、面白いですねww こんな感じで竜巻起こせるんですね! ビックリです。」

とフェリンシア。


「うん、原理は知ってたけど、すっかり忘れてたわww これの逆もやろうと思えば出来るな。」

と海渡は、砂地に絵を描きながらフェリンシアに気象現象を教えた。


「なるほど、そう言う原理だったんですね。 凄いです!!」

と目をキラキラさせていた。


「まあ、でもここが誰も居ないダンジョンの内部で良かったよ。被害者居ないし。」

と言うと、


「確かに、これがトリスターの真横だと、シャレにならないですよねw

直ぐに全国指名手配犯ですなw」

とフェリンシアが笑っていた。


うん、気を付けよう。

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