第297話


朝風呂と朝食を済ませ、アニータさんを交え、定休日の食事ストックを作るべく、必要な調理スタッフの人員数をザックリ聞いて増やす事にした。


各支店でも積極的に調理スタッフの人員募集を行い、トリスターへ搬送して貰う事を依頼する。

これらは、各地に居るヨーコさん率いる秘書部隊(総務)のお仕事となる。



打ち合わせを終え、海渡とフェリンシアは教会へとやってきた。


いつものように、祭壇の前で屈み、

『女神様』


「お久しぶりです。女神様。」

と海渡が挨拶。


「こんにちは、女神様。」

とフェリンシアも挨拶。



「お待ちしておりました。毎日忙しい様ですね。色々面白い事を頑張ってくれてる様子拝見してますよ。」

と女神様が微笑む。


「そうだ、時間切れになる前に、最近作った『ぜんざい』と言う日本のスイーツです。どうぞ、食べて下さい。」

とぜんざいの器を差し出す海渡。


「あらあら、まあまあ、これ食べて見たかったんですよw ありがとうございますね。」

と喜んで貰えた。


「女神様の作った世界、とても楽しませて頂いております。私の知識の役立つ所を残して頂いてますので助かってます。」

とお礼を言う。


「それはそうと、ゲルハルト帝国ですが、まだ絶界の森の作戦が失敗する事も、こちら側が気付いている事も知りません。計画では、1月初旬に魔物が森を出て進撃し、軍の方は、1月20日に国境を越える予定だったのを、皇帝の我が儘で、5日早め、1月15日に前倒しにする様です。

だから今、ゲルハルト帝国内は、上を下への大騒ぎですよ。バカですよねぇww」

と言って笑っていた。


「なので、海渡さんは、彼らの心を折る為にも、徹底的に皇帝の宮殿と、各領主の城を潰し、住民に徹底的な力の差を見せつけて下さい。二度とバカな事を考えようとしないように。

そうして今までの常識を叩き潰し、最初こそは徹底した命令として、常識の教育を行えば、次世代に切り替わった時点で、少しはまともになるでしょう。三世代変われば、他の国同様になるでしょう。

その為にも、慈悲無く、徹底的に潰して下さい。お願いします。」

と過激な女神様。


「なるほど、嘘と虚栄で固められた権力構造をぶっ潰す!って感じですね?」

と理解してしまう。


「まあ、嫌な役目を押しつけるようで、申し訳ないのですが・・・。」


「いえ、その意味は良く判りました。長年の汚い価値観の連鎖を断ち切る為には、しょうが無いのですね。了解しました。」


「フェリンシアさんも、大変でしょうけど、海渡さんを助けて上げて下さいね。 あと、海渡さんの弟子3人、よく頑張ってますねw 十分に鍛えて、色々教えてあげて下さい。きっと将来素晴らしい人材になりますよ。」

と女神様。


「はいw その予定でおります。 あ、あと質問ですが、皇帝の宮殿は、私が直接叩き潰す予定ですが、他の都市の領主館を、一気に叩くとなると、ドローンに兵器を搭載するべきですかね?

あまり兵器を作るのは気が進まないのですが、そうしないと同時攻撃は厳しいですもんね。」

と海渡が尋ねる。


「そうですね。現状だとそれしか方法は無いでしょうね。ご無理を言って申し訳ないですが、宜しくお願いします。そろそろ時間ですね。また年明けにでも逢いにきてくださいねぇ・・・・」

と女神様の声が消え、祭壇の前に戻ってきた。


「そうか・・・兵器作らないとか・・・正直な所、気が重いな。」

と苦い顔をする海渡。


「兵器ってどんな兵器を作るんですか?」

と首を傾げるフェリンシア。


「うーーん、幾つか候補はあるけど、破壊力の調節が難しいかな・・・。近々にプロトタイプを何個か作るから、テストに付き合ってね!」

と思案しながらお願いしておいた。


「了解です!」



海渡らは、気分を切り替えて、孤児院に向かい、沢山の差し入れと、寄付金を置いて帰って来た。

そうそう、来年孤児院を卒業する子が7名居るそうだったので、

「良ければ、是非さえじま商会に就職して下さい!」

とお願いすると、卒業予定の子らは、

「本当に良いんですか? 是非お願いします!!」

と喜んでいた。

卒業予定は、年が明けた1月だそうで、じゃあ、年がかわったら、すぐにおいで! と手付けにマジックバッグ等を渡し、支度金も渡しておいた。

名前を紙に書いて貰ったので、その場でヨーコさん連絡し、準備して貰う事にした。


「流石海渡様、フラつくと直ぐに人員を集めて来てくださるww」

と微妙な褒め方をされた。



そして、今度は領主館にやって来て、これからアルマーさんと会談である。

「どうも!先日ぶりです!!」

と海渡が挨拶すると、


「いやぁ~カイト君、王様の件、本当に助かったよ。この年の瀬の忙しい時に居座られて、本当に邪魔で邪魔でww」

と散々な言い様だったw


「ところで、そんな忙しい時に恐縮なんですが、先日お願いしたドローンの基地の件、完成しました。ここから35km程離れた森の中なので、多分見つかる事は無いかと。

一応、ご許可頂いたトンネルも作りました。

あと情報が入りまして、ゲルハルト帝国ですが、絶界の森の魔物は1月初旬の襲撃予定だったようです。残りの数は少ないので、明日にでも一気に殲滅しておく予定です。

尚、作戦が既に半分失敗している事は、全く気付いてないらしく、それどころか、1月20日に開戦予定だったのを皇帝の我が儘で、5日早めたらしく、現在ゲルハルト帝国内は上を下への大騒ぎらしいですよ。

一応、後で両国の王様にも報告入れますが、そんなスケジュールになる様です。」

と報告すると、


「そうか、馬鹿な奴らだな・・・。」

と吐き捨てたように言っていた。


「で、話はガラッと変わるんですが、避難勧告の解除されたと思うんですが、まだ避難民が残ってませんか?

最近寒くなったので、そろそろテント暮らしは気分的にきついのでは無いかと思いまして。昨夜も少し雪降ってましたし。

で、ご提案なんですが、当方で前に従業員宿舎で使ってた物が結構な数ありまして。これをご提供すれば、安心して職探しとか出来るし、定住の助けになるのではないかと思いまして。

それに、後々城壁の移動の時の建設ラッシュとかで、人が増える時の臨時の宿舎や駆け出し冒険者向けの宿泊施設とかにして、安定するまでのセーフティーネットにも出来ますし、無駄にはならないと思います。

土地さえあれば、サクッと設置しますが、如何ですか?」

と提案すると、


「おお!それはかなり良い話だ。いやぁ~、俺も結構その件で頭を痛めてたんだよね。」

と問題解決の糸口になりそうだと喜んでいた。


「いつ設置出来そう?」

と聞くので、

「いや、今すぐにでもOKですが?」

と言うと、善は急げと言う事で、このまま早速設置しに行く事となった。


アルマーさん自ら来るらしい。

「え? お忙しいのでは? 誰か部下の方に指示して貰えば十分ですよ?」

と心配して聞くと、


「いや、やはり領主自ら行くと言う方が、領民としても安心するだろうし。」

と言う事らしい。


で、ゲージさんを連れて、アルマーさんに着いて行くと、アルマーさんが、自ら運転席に座り、

「ささ、カイト君達も乗って乗ってww」

と嬉し気に急かす。


「もしかして、運転したいだけじゃないですよね?」

と聞くと、横向いて口笛吹いていた。


マジかwww まあ新しい玩具を持つと、なかなか我慢出来ないよねw



アルマーさんの運転する魔動自動車で何とか犠牲者も出さずに避難民キャンプへとやって来た。

なんか、態々狭い裏路地を選んで疾走し、

「ラリー~ ラリー~ ラリー~♪」

とか鼻歌歌いながら、鋭角な40°ぐらいの交差点でサイドブレーキ切っ掛けのドリフトを噛ましやがった・・・。


同乗しているゲージさんは、頭を抱えてらっしゃる。


そして、

「なぁ~、カイト君、これさ、もうちょっと後ろのトルク配分強く出来ない? 立ち上がりで綺麗に流れない感じなんだけどさ?」

とか抜かしてやがる。


「おいコラ、おっさん!これSUV、そんなドリフト噛まして喜ぶんで遊ぶ車種じゃないから!」

と思わず突っ込む海渡。


「わっはっはっは!!」

と馬鹿笑いしてるし・・・。


ヤベェ、何の疑問も持たずに言われるがままに同乗してしまった、5分前の自分を呪いたい・・・orz

フェリンシアは、無邪気にキャッキャと喜んでいるけどね。




そして現在、やっと避難民キャンプに到着した。

地面に降りた後、正にorz状態で、復帰に3分要してしまった。



このキャンプには約200名が居て、残ってる人をここ一箇所に集めたらしい。

つまり、230名ぐらいを収容出来る分の宿舎があれば良いのか。

まあ、1つの宿舎で最大100名強収容出来るんだが、性別別や、家族単位とかも考慮すると、5つぐらい設置すれば余裕かな?


まずは、建設場所を空けて貰わないとだな。


『海渡さん、怪我人や病人が34名程居るようです。』

とマップに▲マークが表示された。


向こうでアルマーさんと、キャンプの管理人みたいな人が話をしている。


「アルマーさん! 怪我人や病人がいるようなので、先に治療してから、移動して貰いましょう!!」

と声をかけ、管理人に案内して貰う。

テントは一応、男女別になっているので、フェリンシアと分担した。


今回は部位欠損や、重篤患者も居なくて、骨折や、火傷、風邪や風疹とかなので、気が楽である。

淡々とテントに入り、全員にクリーンをかけ、1人1人の症状に合わせ、ヒールを掛けていく気楽なお仕事。


海渡もフェリンシアも全員を治療完了し、テントを出ると、元患者らも集まって来て、口々に何度もお礼を言われたのだった。


アルマーさんは、管理人に声をかけ、現在残っている住民全員を集めさせた。


「領主のアルマー・フォン・トリスターだ。急に集まって貰って申し訳ないが、宿舎をここに建てる事にしたので、テントを撤収する事になる。」

とアルマーさんが言うと、避難民は青い顔をして動揺している。

あー、勘違いしているよね。言い方悪いし。


そこで、海渡はアルマーさんに、

「アルマーさん、言い方が悪いから真意が伝わってませんよ! ちゃんと冬に備えて宿舎に移って貰う事を伝えないと!!」

と伝えると、


「あれ?伝わってない?」

と首を傾げ、


「あぁー、言い方が悪くて勘違いさせたかも知れないが、追い出す話ではなく、冬で寒くなるから、テントから、ちゃんとした建物の宿舎に移って貰う と言う話なので、安心してくれ!」

と言い直した。


すると、住民達に安堵の声が流れた。


「と言う事で、ここに宿舎をこのさえじま商会のカイト君が設置するので、テントを撤収して、スペースを空けてほしい。

時間は、多分1日掛からないと思うぞ?」

とこちらをチラリとみて、ニヤッと笑ってる。


「あー、さえじま商会の海渡です。30分ぐらいあれば、完了しますのでご安心下さい。あと、仕事を探している方で、真面目に働く気のある方は、当方の商会でも募集しておりますので、後ほど集まって下さい。」

と言って、撤収作業が完了するのを待つ。

30分ぐらいで、撤収完了し、結局アルマーさんの要望を聞いて、10棟の宿舎を次々と設置していった。5分も掛からずに、宿舎10棟が建ち並び、避難民が驚きの声を上げていた。


「相変わらず、想像を超える便利さだなwww」

とアルマーさんが、ニヤリと笑っている。



ここトリスターで、さえじま商会を知らない者は既に居ない。

6歳の子供がさえじま商会のトップで有る事も知れ渡っている。


そのお陰か、さえじま商会で働きたいと言う人45名が名乗り出て、そのまま採用する事になった。

下は16歳~42歳までの男女だった。

その45名には、このままさえじま商会の宿舎に入って貰う事にして、ヨーコさんに連絡し、秘書を2名程迎えに来て貰う事にした。


避難民キャンプに、食料の支援物資を提供して、アルマーさんと別れ、一足先にキャンプを後にしたのだった。

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