第295話
冒険者ギルドに結構時間を食われたが、午後5時過ぎには宿舎へと戻って来て、解散となるのだが、朝の事もあったので、
「3人とも、夕食はどうするの?」
と聞くと、少女ら孤児支援組は、お給料はちゃんと貰っているんだけど、いつ何があるか判らないと言う不安の為、定休日は基本余り食べない感じらしい。
「えーーー!? それはダメだよ!!! じゃあ、他の子も朝飯~殆ど食べて無い感じなのか?」
と驚いた。
「うーーーん、これは困ったな、他の支店でもあり得る話だな。気持ちは判るんだけど、成長期にそれはダメだ。とにかく、2人は今部屋に居る、孤児支援組を大食堂に集めて来てくれ。」
とアンとサニーに頼む。
ラルク少年にも、同じようにお袋さんや他のシングル組が居れば連れて降りる様にとお願いした。
そして、海渡はヨーコさんに連絡する。
「定休日に大変申し訳ないんだけど、ちょっとだけ頼み事があって・・・。今少し話せる?」
と聞くと、普通に部屋に居るので大丈夫との事。
なので、事情を説明して、何人かで手分けして、孤児支援組が居る支店の店長クラスに連絡して、定休日の食事を出す様にお願いして廻る事にした。食事の共有型時空間倉庫にある物を出しても良いし、そうでなければ、後で商会からお金を払うので、出し代えてくれても良いとお願いした。
アニータさんには、明日にでも事情を説明し、食事の延べ人数が増えるので、調理スタッフを増やす方向で話をする事にした。
トリスターに居る孤児とシングル組が集まって来た。
ほぼ全員が揃った所で、海渡が説明を開始する。
「ご存知の通り、火曜は定休日で、基本的には食事は各自で取る事としていたが、やはり色々な心理的な事情も考慮して、来週から食事のストックを増やすので、各自3食食べる様に。
特に孤児支援組は、今までの苦労もあるだろうから、お金を使って手元が無くなる不安があり、更に正スタッフでも無いのに、良いと言われていても、ストック分を倉庫から出して食べる事に躊躇や遠慮があるようなので、ちゃんと食べる様にして下さい。
今日はこれから、ちゃんと夕食を出すので、遠慮無く食べなさい。良いですか?」
と言うと、子供らが嬉し泣きをしていた。
海渡はアイテムボックスから、ストックしていた色々な食事を並べて行き、ドンドン食べさせた。
途中から、ヨーコさんと、オスカーさんも合流し、他のスタッフも交えた宴会に突入したのだった。
「さっきは、休みの所を申し訳なかったね。ちょっと我慢出来なくてね・・・。」
とオスカーさんとヨーコさんに頭を下げる海渡。
「いえいえ、こちらこそ管理不足で申し訳ありませんでした。」
と頭を下げる2人。
「いや、ちょっと心理状態を考えれば判る事だったんだ。俺の配慮不足だった。」
と悲痛な顔をする海渡。
「で、そうなると、現在の調理スタッフの人数じゃあ、既にアップアップ状態だと思うので、調理スキルを持っている人や、持って無くてもヤル気がある人を地下の調理工房で動かすようにして行こうと思う。
悪いけど明日から、アニータさんや、他の支店とかと話して色々動いてくれる?」
とお願いしたのだった。
少し落ち込んだ海渡は早めに地下工房に降る事にした。
すると、察したフェリンシアも一緒に着いて来てくれた。
「ありがとう、フェリンシア。ちょっと反省しているだけだから、大丈夫だよ?」
と言うと、
「ふふふ、海渡は本当に優しいですね。」
とフェリンシアが、海渡の頭を撫でながら微笑んでいた。
「前に少し話したと思うけど、俺の居た元の世界の日本って国は、本当に良い国でさ、一応あちらの世界では、世界最古の国で、2700年ぐらい続いている国だったんだよ。
福祉もあって、学校には給食もあって、色々なセーフティネットとかもあったんだけどね・・・そんな良い国でも、時々酷い親が子供を虐待して殺してしまったり、食事を食べさせなくて栄養失調になってしまったり、酷い事件もあったんだよね。
で、俺が小学生・・・8歳ぐらいの頃の話だけど、1人の友達が居たんだけど、そいつがやっぱり、親に虐待されててさ、食事とか抜かれたり、少ししか食べさせて貰えなかったりでさ、何とか助けたかったんだけど、結局何も出来なかった。
その結果、9歳ぐらいの時に、亡くなってしまったんだよ・・・。だから、どうしても食事を抜く様な事はさせたくなかったんだ。
何かね、今回の事も気持ちに気付いてやれなくて、力があっても、お金があっても、結局ダメだなぁってちょっと自己嫌悪になっちゃった。」
と心の内を吐き出した。
暫く話しをして、落ち着いた海渡は、地下トンネルを掘る事にした。
「フェリンシアのお陰で、気分が収まったから、今日の基地まで、地下トンネルを掘り始めるよ。」
と言うと、手伝ってくれるらしい。
海渡は地下5階へと降り、廊下を延長した先に空間を作った。
智恵子さん情報によると、現在地下287mらしい。
智恵子さんに空港の方向と秘密基地の方向を聞き、殆ど同じ方角だったので、まずは空港の地下まで一直線のトンネルを掘る事にした。
距離は3017m、トンネルはかまぼこの断面の様なアーチ形状として、幅を20mとした。
魔力を練って、地下工房と同じにガチガチに固めるイメージで一気に掘削。
軽く魔力を持って行かれたが、真っ暗で均一なスベスベのかまぼこ断面の穴が空いた。
「ふう~。余裕だけど、それなりに、魔力持って行かれるなぁ。」
と海渡が呟く。
海渡は、天井に照明とエアコンと空気清浄機を取り付けながら、トンネルを進んで行く。
空港の真下辺りまで辿り着くと、カープールとその先に廊下を作って、滑走路下に100m×100mの部屋を作った。
そして、今度は秘密基地に向かって、トンネルの続きを作る。
智恵子さんに、方向と距離を確認し、指示に従って長さ15581m幅20mのかまぼこ状のトンネルを掘削!
凄い勢いで魔力を消費し、膨大な魔力を持つ海渡の1/6を持って行かれた。
≪ピロリン♪ 魔法:土Lv9を取得しました。≫
≪ピロリン♪ スキル:錬金Lv8を取得しました。≫
ほう、あと1つで土魔法Maxかw なるほど、こう言う作業って錬金も関係するんだな。
「土魔法、Lvが上がって、9になったよw あと1レベルでコンプだw」
とフェリンシアに笑顔で報告。
「凄いじゃないですか! 流石海渡ですねw」
と褒めてくれた。
海渡とフェリンシアは手分けしながら、約15.5kmのトンネルの天井に、照明とエアコンと空気清浄機を取り付けていく。
実際の所、熱や排気ガスを出すエンジンでは無く、自動車もクリーンな魔動自動車なので、照明は10m置き、エアコンと空気清浄機は30m置きに設置している。
トンネルを掘るのは、一瞬なのだが、照明等を取り付ける方に時間が掛かってしまい、秘密基地まで辿り着くのに30分も掛かってしまった。
行き止まりにロータリーと、カープールを作り、廊下を作って、100m×100mの部屋の部屋を廊下を挟んで2つと、エレベーター用の縦穴を一気に地上まで開けた。
このエレベーター用の縦穴だが、下手に滑走路や格納庫や別荘の位置になってない事を、何度も智恵子さんに確認し、丁度、別荘と格納庫の中間辺りになる様に位置決めをして開けてある。
尚、エレベーターだが、管制タワーを移動して、管制タワーのエレベーターのレールを延長し、そのまま利用する形にした。
もっとも、ここに来る可能性のある人間は海渡、フェリンシア、あとはステファニーさんぐらいなので、ゲートを使えば良いと言う話もあるが、アルマーさんの手前、使わないにしてもトンネルを作る必要があった訳だ。
何かの際に、言い逃れ出来る用意を事前にしておかないとね。
作業が完了したので、部屋へとゲートで戻り、風呂に入る。
時刻は午後10時。
この時間だと流石に風呂も空いていて、自分とレイアを洗い終わると、ユックリ湯船に身を任せる。
何気に窓の外を見てみると、チラチラと白い物が降っている。
どうやら、雪のようだ。
明日明後日はもしかして、ホワイトクリスマス!?
とか少し期待しつつ、風呂から上がって早めに寝るのだった。
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