第287話


「ところでアルマーさん、最近トリスターの門、人で溢れていますね!

相当な出入りありそうですよね?」

と話を振ると、


「いやぁ~、さえじま商会のお陰で、凄いんだよね? でも、割と南門にばかり集中しちゃっててね。

東や西はソコソコなんだけど、北門は殆ど閑古鳥が鳴いてるし。」

との事。


なので、海渡はコーデリア間の空港を北門に設置して、必ず中を通る感じにしたらどうか? と打診してみた。

そして、その効果も含めて説明する。


すると、

「おお!それは凄く良い話だね! 凄いねぇ!! 人の動線まで考えてるのか! また税収も上がりそうだし、良い事尽くめだなw」

と喜んでくれた。


なので、空路が開通したら、北門に着陸させる事にする。


あと、現在作っている大型ドローンの発着場の事で、相談してみる。


「れいの作戦時に使う、大型ドローンを作っているんですが、大型のディスプレイを搭載するので、本体もデカいんですよ。

自動運転にはする予定なんですが、空港やトリスターの本店から飛ばしたりするのが、結構厳しいんです。

なので、物は相談なんですが、その大型ドローン専用の発着場と格納庫を邪魔にならない奥地に作っちゃって良いですかね?」

と言うと、


「ああ、そこら辺は自由にしてくれて問題ないぞ?」

との事。


なので、ダメ元で図に乗ってみた。追加で許可してくれたら儲けもの。


「城壁の拡張の際には取り壊すか、移転する予定ですが、ただ問題は余り人が寄りつかない場所に発着場を作るので、そこまでの道が無く、行き難いと言う事と、この南門の混雑に巻き込まれつつメンテナンスなんかをしに行かないといけないのが難点でして。

もし、ご許可を頂けるなら、城門を通らず地下道を作って、自動車で行き来出来たりすると、便利なんですが、領主様側の保安上とかの問題もあるから、ダメですよね?(チラッ」

と思案する風を装う海渡。


「ああ、なるほどな。確かに今の南門は人も多いし、街道も人通りが多いから脇道とかに逸れるのを頻繁に目撃されると、ドローン発着場がバレてしまうなぁ。

どうせ、カイト君の事だから、あの屋敷以上のセキュリティを掛ける予定だろ? うん、特例で地下道を許可するよ。でも触れ回らないようにしてくれよ? 本当に拙いから。」

と釘を刺しつつ、許可してくれた。


「本当ですか! ありがとうございます。 これで、スペース的な問題も解決しそうです!!」

と子供らしくはしゃいで見せた。


「その代わりと言っては何なのだが、前々から不思議と言うか、興味津々でなぁ、一度カイト君の本拠地を見学させてくれないかなぁ?(チラッ」


わぁ~ww チラッ返しされちゃったよwww


「まあ、大した物は無い?かも知れませんが、アルマーさんに隠す事は、それ程ないので、良いですよ! 工場とかも見ますか?」

とこちらも譲歩した。


「おお!そうか!! 嬉しいぞーー! 工場とかも見てみたいぞw」

と大乗り気。



じゃあって事で、このまま案内する事になった。



アルマーさんご一家を乗せた車3台、海渡とフェリンシア、ステファニーさんで1台、オスカーさん、ヨーコさんで1台の合計4台で大名行列。

アルマーさんは、自分で運転すると言い張ったのだが、家臣と言うか執事のケージさんに猛反対されて、あえなく撃沈。

南門は貴族用の通用門からスムーズに侵入し、町中を進む。


街の住民は異様な乗り物に一瞬驚くが、やはりカイト印をみて、「ああ~」な表情で通り過ぎる。


そんな住民を窓越しに見たステファニーさんは、

「なぁ、トリスターの住民って、カイト君に慣れすぎなんちゃう? 全然驚かへんよね? えー?コーデリアの王都が変なん? 違うやろーww」

と一人でウケてたw


フェリンシアは笑顔で、

「トリスターでの3ヶ月の成果ですw」

と言っていた。



そして、一行は程なく『さえじま商会』の敷地へと到着。

カイトらは、自動車を格納し、アルマーさん御一行の3台を入り口のロータリーへと駐車し、海渡を先頭に入り口のセキュリティゲートから案内していく。


「このセキュリティーゲートは、セキュリティーキーとなるこの腕のブレスレット等を持って居ない場合は、通れません。ロックが掛かり、警備員が飛んで来ます。」

と言いながら、ゲスト用のセキュリティペンダントを首に掛けさせ、セキュリティーゲートをくぐり抜ける。


「ここが、応接室となります。こちらが大食堂です。定休日の火曜以外は、朝、昼、晩はこちらで、全員が食事します。

仕切りの向こう側が厨房となります。」

と厨房へと案内する。


アルマーさん達は、そのスケールのデカさに驚いていた。

丁度現在厨房では、昼に向けた食事の準備で、30人以上の調理スタッフがてんてこ舞いしていたので、軽く見せるだけに止まった。


1回を見せ終わると、次は地下の工場へとエレベータで連れて行く。


「おい、カイト君、この部屋みたいなのは、何なんだ?」

と初めて見るエレベーターに興味津々のアルマーさん。


「これはエレベーターと言って、この部屋ごと、別の階へと移動します。」

と言って、扉が閉まると、直ぐに扉が開く。


「ここが地下1階の工場フロアーとなります。こちらの部屋の中に生産用の魔道具がありまして、その魔道具で殆どの物を作ってます。」

と扉を開き、中を見せる。


「うおぉーーー! 凄まじいサイズの魔道具の列だな! 圧巻だ!」

とアルマーさん。

海渡は、スタッフ達の邪魔にならない様に気を遣いながら、1つ1つの生産ラインを説明していく。


次の裁縫部隊の部屋を見せて、

「ここは、当初のテントを作成してくれていた、裁縫部隊の部屋です。今はテントも生産ラインの魔道具で作っているので、オーダーメイド品や飛行機、自動車のシート、シートベルト等を作っています。」

と説明する。


地下2階も地下1階と同じ、生産ラインの工場となっていて、各ラインの説明をする。


「え?あの上白紙もここのラインで生産してるのか!!」

と驚くアルマーさん。


アルマーさん曰く、もっと過酷な環境を想像していたらしいのだが、地下1階も2階もスタッフは和気藹々と、和やかに余裕を持って仕事をしているし、廊下に設置してある、休憩室でローテーションを組んで、優雅にお茶タイムを楽しんで居るのを見て更に驚いていた。

何よりも驚きなのは、そんなペースで仕事をしていて、全国の支店に配布している製品を、ここだけで全て作っている事らしい。


そして、今度はスイーツ部隊のキッチンを見せた。

アルマーさん達は、その初めてのエアシャワーや、クリーンルーム仕様に驚きつつ、やはりスタッフ全員がマスクはしているものの、和気藹々としているのを見て感心していた。

更に、レストランの厨房用に新規に作ったキッチン(未稼働)にも驚いていた。


次に地下工房のある地下3階へと連れて行く。

エスカレーターから降り、棟梁達が働く巨大な空間に

「うぉーー!」と驚きの声を上げていた。


すると、

「おう!坊主!久々じゃねーかwww」

と突然目の前に棟梁(身体強化+身体加速)が現れ、

「うわぁっ!」

と叫んでいた。


「あれ? 領主様?」

と棟梁も気付き、頭を下げていた。


アルマーさんは、後ろで建設されている、トリスター型の集合施設を見て、

「なるほど、ここで建設していたのか!! と言うかこの空間は本当に地下なのか?」

と明るく新鮮な空気がある事にも驚いていた。


海渡は更に別の部屋を案内し、ここでは店舗セットや格納庫、管制タワーが所狭しとある事に驚く。


更に次の部屋でも~。


「次は地下4階です!」

とエレベーターに案内し、地下4階に降りる。


ここにも王都型の集合施設が建設されていて、驚くアルマーさん~~(ry


次の部屋は海渡やステファニーさんが利用している地下工房だ。

現在、巨大な空間2つの1つでは、海渡が巨大ドローンを作成中。


作成中のドローンの大きさに驚き、何気に置いてあるトレント素材に驚き、この世界の人間なら、普通に驚く事の連続。


その離れた奥には、色々な試作用の工作魔道具もあり、広い空間なのに、広さを感じさせないと言うかw


「これが先ほど言っていた、れいの作戦で使用するドローンの試作機のモックアップですね。そこのガラスディスプレイをその機体に取り付ける予定です。強度テストは万全でしたw」

と夏休みの宿題の工作を披露する感覚の海渡。


更に、もう1つの部屋(同じサイズ)では、自動車の生産ラインが起動している所を見せた。

それとは別にサーバールーム(隠し部屋)もある。


「まあ、地下はこんな感じですね。何かご不明点やご質問ありますか?」

と海渡が言うと、


「カイト君・・・君のこの地下帝国は・・・何というか、言葉を失うなぁ。蟻さんも、ドワーフさんもビックリだよ。

何か、驚きすぎて、何から突っ込んで良いのか、頭が追いつかないな。」

と苦笑いするアルマーさん。

着いて来ている、奥様、子供達も、言葉が無い。


「ちなみに、この地下ってどれくらいの深さにあるんだい? 落盤事故とか起きないだろうな?」

とご尤もな質問。


「えっと、この地下4階で、確か250mぐらいじゃなかったかな? 強度的な問題ですが、万全です。おそらく上の部屋でも地上でも、ワイバーンが暴れても大丈夫な強度で作ってます。

多少の隕石ぐらいなら、ビクともしないかと。まあ、私も落盤事故は嫌なので、そこら辺はハッキリ言って、それこそ王宮よりも丈夫に作ってますからね。」

と自身満々に言う海渡。


「なるほど、これならさっきの地下道の話も、安心出来るなw」

と頷くアルマーさんだった。

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