第276話


海渡は、大食堂へ行き、厨房へと入って、アニータさんに、レアと言う肉を入手したので、明日全員にステーキで食べさせてやって貰えますか?

と、肉のブロックを次々と渡す。


現在、3000名近いスタッフを抱える、さえじま商会なので、1人1kgとして、大食いが居ても、5トンあれば、大丈夫だろう。

念には念をで10トン分の肉を倉庫に入れる。


「ところで、カイト様、これって何の肉ですか? なんか凄く美味しそうな霜降りですねw」

とアニータさん。


「まあ、アニータさんに隠してもしょうがないし、えっと、これタンカー・ホエールの肉です。一応、塩こしょうだけでステーキにしてみたんですが、超絶美味いですよ。」

と報告すると、


「え!?タンカー・ホエール!!!」

と厨房中に響き渡るアニータさんの叫び。


あ・・・ダメだ・・・厨房も狂喜乱舞してる・・・。


食堂の方に戻ると・・・あ、こっちもダメだ・・・踊ってる奴や泣いてる奴、叫んでる奴が居る。


そして、今までこんな事あっただろうか?と言う程に、みんなが口々にお礼を言ったり、拍手したりしてるし。


「おい、みんな! 良く聞け!明日だからな!!明日の夕食だ!! 大人しくしない奴には食べさせない様にするからな!」

と釘を刺すと、シーンと静まり返り、踊ってた奴は、フリーズした。



やっと平常?を取り戻した大食堂で夕食を食べていると、ヨーコさんとオスカーさんがトレイを持ってやって来て、


「いやぁ~聞きましたよww 流石カイト様。話題には事欠きませんねww」

とニヤニヤ笑うオスカーさん。


「ふふふ、本当に面白い商会ですねw」

とヨーコさんも微笑んでいる。


そこで、不思議に思った海渡は2人に聞いてみた。

「確かにレアってのは判るんだが、そこまで狂喜乱舞する様な食材なの?」

と。


すると、オスカーさんが、

「あ~、カイト様だとそう思うかも知れませんね。実はあるお伽噺でタンカー・ホエールの肉ってのが出て来るですよ。

割と超有名なお伽噺なんですが、知りませんかね? で、その話の中で出て来るタンカー・ホエールの肉は味も凄いんですが、効果も凄くてね。

実際はどうなのか知りませんけど、それでみんな大興奮しているんですよ。

もし、そんな肉を市場に流したら・・・と言うかおそらくオークションになるでしょうね。100gの肉で、黒金貨10枚ぐらいになるかもですよ?」

と驚きの事実が判明。


「マジか! いや、確かに美味かったよ? 美味かったけど、黒金貨10枚はあり得ないだろ~wwww」

と信じない海渡。


「私もそれぐらいは平気で上がると思いますよ?」

とヨーコさん。


「えーーー!? 本当にそう言う感じなの?」

と半信半疑のままの海渡だった。


夕食後、こっそりと出したタンカー・ホエールの肉のブロックを鑑定すると、


*****************************

タンカー・ホエールの肉

 説明:神話級のタンカー・ホエールの肉。

    最高に美味しい霜降りの肉。

    効能が凄まじく、ステータス全体が底上げされる。

    回復効果も凄く、どんな病気でも完治する。

    どんな状態異常でも回復し、食後200日程は効果が持続し、状態異常に

    ならない。

    頭の回転が速くなり、記憶力も上がる。

    脳細胞が活性化し、より脳細胞の使用領域を増やす効果もある。

    市場には出回らない。

*****************************


と出た。


「あぁ~~これ、教えちゃダメな奴だぁ~。と言うか、お伽噺の内容知らないけど、多分それ以上だよね。」

とやらかしてしまった事を自覚してしまう海渡だった。


しかし、直ぐに立ち直り、

「まあ、良いかw 美味しいしwww」

と見なかった事にするのだった。



「さ、気分を切り替えて、地下工房で続きをやろうっと。」

と逃避モードで地下工房へと降りてきたものの、更に気になりだして、他の部位(素材)を鑑定してみると、


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タンカー・ホエールの皮

 説明:神話級のタンカー・ホエールの皮。

    通常状態では丈夫な皮だが、微力な魔力を流す事で、しなやかだが強靱な

    皮となり、表面の温度を内部に伝達しない(熱伝導率が0)になる。

    耐摩耗性、耐物理攻撃、耐魔法攻撃、耐雷撃性を備える。

    市場には出回らない。

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タンカー・ホエールの骨

 説明:神話級のタンカー・ホエールの骨。

    通常状態では丈夫な骨だが、微力な魔力を流す事で、最高強度になる。

    溶かして金属の様に鋳造したり、鍛造したりする事が可能で、加工時の熱

    による劣化は無い。

    粉末を他の金属に混ぜる事で、同様の特性を持たせる事も可能。

    魔力伝導率に優れ、魔力的超伝導の様な効果もある。

    耐摩耗性、耐物理攻撃、耐魔法攻撃、耐雷撃性を備える。

    粉末を飲食すると、強靱で魔導効率の良い肉体となる。

    また、レベルやスキルが上がり易い体質になる。

    市場には出回らない。

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「ふふぁふぁふぁ・・・ もっとダメなの出たーwwww」

と叫びつつ、もう乾いた笑いしかでない。


そして、内蔵、血管・・・そして魔石と一通り全てを鑑定したが、血管と魔石の鑑定結果が凄かった。


血管の鑑定結果から、魔動リンクに使用する事で、骨の比でない桁違いの魔力的超伝導効果で素晴らしい効率が得られる事、耐摩耗性や柔軟性が凄い事が判明。


魔石に関しては、その魔力密度の高さと内包量の多さが突出しており、智恵子さん情報だと、本店を含む全支店で使用する年間の魔石量で換算すると、300年分は優に超えるらしい。

地球の電力発電で換算しても、日本全国の使用量の約100年分相当との事。



「鯨すげーー!」

と心からの賛辞が漏れる程だった。


骨の粉末だが、TFGに3%混ぜる事で、現在の10倍以上の強度と15倍の魔導効率が出る事も判明。

それにより、同じ魔石でも高燃費となり、実用面で5倍くらいの連続運用が可能となる事が判明した。


「わぁ・・・今更判ってもねぇ。もう102機作っちゃったし・・・。金属と違って、溶かして作り直す的な事は出来ないからなぁ~」

と嘆きの声が漏れる。


「まあ、現行モデルではなく、2型を作る時に利用するか。 どうせ次は音速越えの機体を作るつもりだし。」

と無理矢理自分を納得させる海渡だった。


しかし、今回新たに作る自動車に関しては問題ないから、自重無しで行く予定。


「おっと、いけねぇ~。ショックを作るんだったな。」

と本来の目的を思い出し、ショックアブソーバーのシェルの中にタンカー・ホエールの脂肪から抽出したオイルを入れて、シャフトに填めてある蓋を閉める前に、空気中から錬金で抽出した窒素を10気圧ぐらいに圧縮して挿入する。

封入する方法は色々試行錯誤したが、最終的にシェルの中のオイル以外の領域を時空間魔法で別空間指定し、そこに10気圧の窒素を貯めて、蓋を締め込む事で成功した。


後で考えたのだが、これはオイル封入段階でショックシェル全体を別空間に置いて、その空間を10気圧の窒素で満たして蓋を閉めれば良かった気がした。


出来上がったショックを手で押して見ると、狙い通りにユックリとシャフトが上がって来る。


「よっしゃー!いけたなw」

とガッツポーズ。


とそこへ、ヨーコさんから連絡。

「カイト様、お約束の料理スキル講習会、忘れてませんか? みんな既に集まっているのですが?」

とお怒りモード。


「あ、わ、忘れてないよ? うん、今行く所だからね?」

と慌てて、新しい調理工房へと向かう。



「いやぁ~、お待たせー! 大丈夫だよ!忘れてなんかないよ?」

とみんなに挨拶して、早速始める。

が、集まっている78名の視線が痛いww


いつもの手順で、調理実習を開始し、一人一人アドバイスや味見をしながら74人を廻る。

78人分の味見は正直厳しい。


メニューを変えたりしながら、3回ぐらい講習した段階で、全員にスキルが生えた。

「よし、全員揃ったようだなw 後は各自で練習あるのみ! 仲間とかと味比べとかしながら切磋琢磨するように!」

と最後の締めをして早々に立ち去る海渡。



やっと、地下工房に戻って来て、作業を再開。

先ほどの続きで、同じ手順でショックを3本作り、1台分のショックが完成。

ちょっと合間が1時間程空いてしまって、不安だったが、智恵子さん曰く、減衰力に差異は無いとの事だったので、良しとした。


コイルスプリングだが、智恵子さん情報に従い、ばね鋼の素材を鉱石から抽出し、インゴットをライン生産する。


そのインゴットをベースに、コイルスプリングを作成。

取りあえず、初っぱなからコイルスプリング生産ラインを2個作り、1つはフロント用でバネレートは8kg、もう1つがリヤ用でバネレート10kgに設定した。

これは実際に乗ってみて調節する予定。


前後のハブと魔導モーターがだ、インホイールにする予定なので、魔導モーターの出力シャフトにバックプレートとスタッドボルトをミスリルとタンカー・ホエールの骨の合金で作成し、魔導モーター本体及び駆動ブレーとは強化TFG(タンカー・ホエールの骨3%配合)で作成した。

シャフトの軸受けには光シールドベアリングとしている。


次はフレームだが、ここで少し悩む。

「やっぱり、鋼管スペースフレームというか、バードゲージと言うか、そう言う感じにするべきかなぁ? それともモノコックボディフレーム?」


悩んだ結果、スペースフレームで行く事にした。

理由は幾つかあるが、フレームがあれば、ボディーデザインの変更で色んな車種に流用出来る。

本気の理由はバードゲージフレームが好きだし、作ってみたかったと言うのと、ボディーレスでも走れそうだし、テスト走行向けに良いんじゃないかと思った訳だ。


と言う事で、前後のダブルウィッシュボーンアームとメインフレームのモックアップをトレントで作成していく。

足回りの取り付け位置等は念入りに補強を入れ、これだけでも走れそうな物を作成した。

そうそう、こんな世界だから、ひっくり返った際の事や、デカい魔物に踏まれる事も想定し、居住空間を守るロールバーも入れておいた。


これを強化TFG製造ラインで作成。


完成したフレームと、アーム類、サスペンションを組み付ける。


次はラックアンドピニオンだが、ギアとか作るのも面倒なので、魔導サーボを使った、パワーアシストにして解決した。

一応、路面状況をステアリングにフィードバックするように、ステアリングシャフト側にも魔導サーボを応用した機構を取り付けた。

あとは、ボディーとインテリア類。


フレームに被せる、ボディーの切断面を作成し、トレント薄皮を貼り付けて、チータ風に作り紺で行く。

実際にエンジンは無いので、エンジンルームやトランクルームは、全部トランクとなる。

まあ、気が向いたら、ボンドカーの様な秘密兵器満載も面白いかなw


ドアやボンネット・フードやトランク・フードのモックアップも強化TFG製造ラインで作成し、ヒンジ類とドアやフードのロック機構はミスリル合金で作成した。


フロント、リヤ、左右の窓ガラスの3Dデータから各ガラスを作成し、先にボディにガラスを填め込み、溶着。


ドアノブ、ロック機構、パワーウィンドー機構をドアに組み込み、ボディーに装着。

ボディー側にゴムのパッキンを取り付け、防水性と機密性を高めた。


バードゲージ状のフレームだが、フロアはフラットな状態にし、リアに向けてディフューザーの様な形状にして、ダウンフォースを稼ぐ形状に一体型でデザインされているが、フロント側が弱いかな?

と、フロントにチン・スポイラーを後付けした。


フロントライト、テールライト、バックフォグをボディーに取り付け、フレームに載せる。


内装は、タンカー・ホエールの皮を貼り付けて、運転席と助手席は、飛行機用のバケットシート(アジャスタブル)、ペダルもアジャスタブルで取り付けた。


メーター類は、ガラスディスプレイを使った物とし、エアコン、空気清浄機、そしてECUならぬ、魔動CPUで、4輪駆動制御、ステアリングサーボの制御とフィードバック制御、ブレーキは魔導モーターの制動力を使ったABSとした。


プログラムこれらのプログラムを水晶記憶体に書き込んで、最後の仕上げは、タンカー・ホエールの血管を切り出して作った、魔力的超伝導リンクを4輪の魔導モーターや魔導サーボに接続した。


「うん・・・完成した? 忘れ箇所無いか?」


一応、2回全ての部分をチェックし、サスペンションやホイールナット等、全て緩んで無い事を確認した。

ライトの点灯も確認。ブレーキランプも確認。ステアリング操作も確認。ボディーの軋み等も無い事は確認した。


「うん、完全じゃねぇ?」

と一頻り見回し、取り付け忘れのパーツやボルトが無い事も確認して・・・


「やったーーー!!!」

と小躍りする海渡だった。

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