第268話

 海渡は1人になると、自重無しでスキル全開。超高速でリストの下半分をこなして行く。


 2時間程で30箇所を完了し、ついでに空港や格納庫の無い出張所121町村を、軽く見て廻る事にしたのだった。


 出張所レベルの町村だが、良くて男爵領、悪い場合は、寒村であったりする。

 寒村レベルだと、殆どの場合、城壁は無く、木製の塀であったり、柵であったりで、保安面で微妙な所が多かった。



 そして、78箇所目の村を見に行った時、マップの端に赤い点を発見した。


 マップの赤い点を確認すると、『盗賊』と出たので、急いで飛んで行くと、街道を行く馬車が、小汚い盗賊に囲まれていて、6人の護衛の内、1名が倒れ、1名は負傷して片手から血を流しながら、防戦している所だった。


 取り囲む盗賊の後ろ10mに着地して、


「馬車の方、もしかして、盗賊に襲われてますか? 手助けは必要ですか?」

と大きな声で聞くと、


 護衛の1人が、

「坊主!盗賊どもから早く逃げるんだ!!」

と叫んでいた。


 なるほど、盗賊か。


 しかし、この護衛のおじさん、生きるか死ぬかの状態で、こっちを心配してくれるのか! 素晴らしい。


 盗賊はこっちをチラリと見て、ニヤリと笑う。


「お、獲物が増えたなw おい、ガッシュ、お前あの小僧を捕まえろ!」

と手下に命令する。


「なるほど、そこの小汚い奴が頭か!?」

と海渡が言うと、


「なにをーーー!!! ○※▽¥ぅβ~」

と後半言葉にならないうめき声を叫び、ファビョっている。



 海渡はサクッと全員をロックして、体が麻痺する程度のライトニングアローを、35個発動。


「ババババシッ」

と木霊して、一瞬で盗賊を制圧完了する。



 倒れている護衛に駆け寄り、鑑定すると、辛うじて息はしているが、腹を深く切られ、大量の出血をしている。


 直ぐに、傷口に『クリーン』を掛けて、神経や内臓が細胞レベルで元通りに接合するイメージで、『ヒール』を発動した。


 倒れている護衛の体が激しく光り、光が終息した後には、傷口もなくなり、呼吸も正常になった。


 今度はハチミツ水をコップに入れ、上半身を起こし、スプーンですくって、少しずつ飲ませる。

 徐々に出血で青白くなっていた顔色に赤みがさしてきて、コップ半分ぐらい飲ませた段階で、目を開けた。


「まだ流した血が復活してないと思うので、この水を全部飲んでください。」

とハチミツ水を追加して手渡すと、状況が良く分かってないらしく、大人しく飲んでいた。


 そして、もう1人の腕を負傷している、護衛に近付き、『ヒール』をかけ、同じ様にハチミツ水のコップを手渡す。


 感電して痙攣しながら倒れている35人の盗賊を、闇魔法で簀巻きにして拘束していく。



 チラリと、他の護衛の方を見ると、その場の全員が目を見開き、フリーズしていた。

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