第257話
ステファニーさんと別れて、辞書的な物を作る為に色々考える海渡は、
『ねえ、智恵子さん、日本語の・・・しかも漢字の辞書的な物を作りたいんだけど、印刷データ作るの手伝ってくれない?』
と智恵子さんを頼るのであった。
『はい、大丈夫ですが、どの程度の辞書にするつもりですか?』
『そうだね・・・ 一応付与で使いそうな所から抜粋かなぁ?』
『広○苑みたいに凄いのは作らないんですね?ww』
『まあ、そこまでは難しいから、国語辞典と漢字辞典をミックスしたような感じのを作りたいんだけどね。ただ、膨大な原稿を作らないといけないし、どうしようかと・・・』
『ああ、なるほど。データ作りが問題なんですね? 今までは、頭の中でイメージした物を転写したりして、データを作ってましたけど、あれを直接、水晶記憶体に書き込めば良いじゃないでしょうか?』
と智恵子さん。
『え?そんな事出来るのかな?』
『ええ、媒体が換わるだけですから、大丈夫なはずですよ? 現行ですが、私がデータを作っても良いですし。』
『え?智恵子さんが直接データを作れるの?』
『ええ、だって、私は元々海渡さんのスキルですから、私=海渡さんの頭の中のイメージですよw』
と。
なるほど、言われてみれば、確かにその通りだな。
『じゃあ、判りやすい感じのデータで、一つお願いして良いかな?』
と楽出来そうで、ホクホク顔の海渡。
『はい。任せて下さい!』
じゃあ、ちょっとやってみるか・・・と水晶記憶体を1つ取り出し、転写をイメージしつつ智恵子さんに委ねる。
水晶記憶体が薄く光り、30秒程で光が収まった。
『出来ましたよ!! 製本機にデータを接続してみて下さい。』
と智恵子さんが自信満々に言って来た。
『了解』
と海渡は予備の印刷製本機を取り出して、水晶記憶体を接続し、稼働した。
そして、4分後に1冊の分厚い辞書が出来上がった。
「おお!! 出来た!! 結構分厚いね!」
『500ページぐらいですからねw』
と智恵子さん。
中身をパラパラと捲ると、縦書きではなく、横書きの辞書になっていて、内容もちゃんと分かりやすくなっていた。
『良いじゃん、これ! ありがとう!!』
と智恵子さんにお礼を言って、出来上がった辞書を持って、ステファニーさんに渡しに行った。
「ステファニーさん、辞書出来ました。 判って居るとは思うけど、これ、絶対に人には見せないでくださいね!!」
と分厚い辞書を渡す。
「え? あれから、まだ30分たってへんやん。もうできたんかいな!」
と唖然とするステファニーさん。
「そこら辺は、スキルも活用したのでw」
とお茶を濁す海渡。
ふーん・・・と疑いの目をしつつも、スルーしてくれたので、使い方を説明し始める。
「この辞書の使い方ですが、最初の説明書きに書いてある所を、簡単に説明しますね。
まず、世界共通文字で『風』の『か』の所を探すと、『かぜ』の意味が出てまして、それに対応する日本語の文字の平仮名と漢字が書かれてます。
この『風』の文字が漢字ですね。この様に1文字で表せます。
例題がその下にあると思いますが・・・これですね。『弱風』と書いてありますが、これは弱い風を表してます。
『強風』は強烈な風を表しています。言って意味判りますかね?」
と海渡が説明しながら確認すると、
「ああ、なるほどなぁ~。この例の様に、どう言う風かを漢字って言うんを2つ繋げて書く事で、説明する?形容する?訳やね?上手い事出来とるなぁ~。」
と色々読みながら感心しまくりのステファニーさん。
「どうですか? 何となく、すぐに使えそうな感じするでしょ?」
と海渡が聞くと、
「カイト君ありがとうぉ~。うち、これ一生大事にするわ! 安心しぃや! 絶対人には見せへんからな!」
と目をキラキラさせて、ご満悦のステファニーさん。
「ええ、そこら辺は信用しているので、心配してませんよ。 取りあえず、色々テストで作って見て下さい。
下の地下工房を使っても構わないですから。 そして馴れたら魔動CPUの使い方とかを説明しますので。」
「うん、ちょっと色々やってみるわ~♪」
と言い残し、颯爽と地下工房へと消えていった。
「ふふふ、その気持ちは良く分かるよw」
と後ろ姿を見送りながら呟くのだった。
考古学の道を歩んでいた(過去形)海渡であるが、元々考古学が好きでこの道に入ったのではなく、イン〇ィー・ジョーンズの大冒険映画で感化され、イン〇ィー・ジョーンズ=冒険=考古学? 的なノリだったのだが、実際にこの道に入ってみたものの、あまり大発掘や洞窟内の宮殿なんか存在せず、従って冒険も無かった。
冒険と言えば、通っていた道場のサバイバル訓練の方が、生死をかけた冒険であったのは笑える事実だ。
幼少の頃は家で遊ぶ事が多く、父の影響で、物を作るのが好きだった海渡は、道場での修練の一環で、自分で使う武器や道具の鍛冶仕事等も一通り熟せる様になっていた。
父のガレージには、旋盤やフライス盤や溶接機等の工作機械もあって、ちょっとした物なら、大抵の物は作れる環境が整っていたのも原因の1つであった。
だから、一旦作り始めると、ついつい熱中してしまい、母親がご飯の時間になっても戻って来ない息子を呼びに来る事は度々あった程だ。
学校の授業中に面白いアイディアを思いつき、学校が終わると、飛んで帰って父のガレージに籠もる事も多かった。
まあ、そう言う幼少期を経た海渡だけに、新しい日本語による魔道具製作と言う玩具を手にしたステファニーさんの気持ちは共感できる物だった。
「あ、そう言えば、俺も注文された飛行機をサクッと作らないといけないんだったな・・・。」
と地下工房の飛行機製作の部屋へと向かうのであった。
地下工房で、100機分の機体とパーツを製造ラインで作り出して行く。
ベンチシート型となるので、型を作ってデータを取り、100機分のパーツに加えてある。
前の様に20機分づつチマチマ作ろうか?とも考えたが、一気にやっちゃった方が楽かと思い、必要パーツまで全部作り、暇を見て出先で組み立てられる様にした。
まあ、地下工房に戻るのは一瞬なんだけどね。
機体とパーツのラインから完成品を取り出しつつ、合間で1機づつ組み立てをする。
機体とパーツの完成の合間作業なので、
「捗らないなぁ・・・」
とぼやきつつ、1機・・・1機・・・と完成させていく。
13機を完成させた所で、やっと100機分の機体とパーツのライン生産が終わったので、組み立てに専念する。
組み立てに専念する事で、昼食の時間までに57機を完成させる事が出来たのだった。
これは、ワイバーン襲撃の一件で、レベルが上がった事による速度アップが、予想以上に効率をアップしてくれた結果である。
「ふぅ~♪ やっと注文の半分は完成したなw この分なら、今日中に全機仕上がるよねw」
と鼻歌交じりで大食堂へと向かうのだった。
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