第253話
現在、湯船に浸かりながら、ドロスさんと、どうやって屋敷を抜け出すか相談中。
「トリスターだと、全然平気なんですけどねぇ・・・。ここだと騒ぎになっちゃいますか・・・。」
と海渡。
しかし、これは正解ではない。
実際は軽く騒ぎにはなるのだが、海渡絡みと知ると、「ああ~なるほどw」と収束するだけである。
「トリスターって、どれだけ神経麻痺してるのwww」
と笑うドロスさん。
「ドロスさん、この国に奴隷制度ってあるんですか? 借金奴隷とか?」
と聞くと、
「あー!その手あるか。一応、ワンスロットと同じで、犯罪奴隷と借金奴隷はあるよ。」
とドロスさん。
「まだ時間あるし、ちょっと行ってみる?」
とドロスさん。
「そうですね、是非!」
と海渡。
「あとさ、開店するまでの間、ここ、少し使わせくれない? 親父を一度連れて来ると、話が早い気もするんだよねw」
とドロスさんが聞いてきた。
「綺麗に使ってくれる分には良いですけどw」
と言うと、
「うん、ちゃんと掃除させておくから!」
との事だった。
なので、ゲストキーを渡して置く事とした。
海渡は、フェリンシアに伝心で、
『フェリンシア、ちょっと、ドロスさんと先に借金奴隷を見てから9時までに空港に行くから空港に集合ね!』
と伝えた。
『ああ、なるほど!その手ありましたね。了解しました。でもどうやって屋敷を出ます?』
と聞くので、
『うーーん・・・一度ゲートを使って見せてるから、ゲートで路地裏に出るかな。そっちもそんな感じで宜しく。あ、あと屋敷の戸締まりだけ、宜しくね!!』
『了解しました!』
奴隷商会は、北門の近くにあるらしい。
と言う事で、コッソリと北門近所の路地裏に出ました。
「ほんとにこれ、便利だよねw」
とゲートを羨ましがるドロスさん。
「内緒ですからね?」
と念を押すと、ウンウンと頷いた。
ドロスさんに連れられて、奴隷商会へと入った。
「いらっしゃいませ。お、これはドロス様、お久しぶりです。」
と店主。
「久しぶりですね。今日は大事な友人を連れて来ました。カイト君です。」
と海渡を紹介する。
「初めまして。カイトです。」
と頭を下げる。
「初めまして、私は当店ハロルド商会の会長をやっております、ゲロルト・ハロルドと申します。」
と品の良い老紳士が頭を下げる。
「今日はどう言った奴隷をお捜しで?」
と聞いて来た。
「一応、当方のところで働いてくれる借金奴隷を探しておりまして。」
と海渡が言うと、
「何名かおりますが、ご予算は?」
と聞かれ、
「うーーん、特に決めてませんが、大抵はお支払い出来ると思います。」
と答えた。
「ほう、それはなかなか豪気ですねw では全員連れて参ります。」
と、面談用の大部屋に通された。
暫くすると、21名の男女がゾロゾロと部屋へと入って来る。
内訳は、エルフの男性7名、エルフの女性8名、エルフの女の子1名、ドワーフの男性2名、ドワーフの女性2名、ケモ耳女性1名!!
異世界初のケモ耳キターーーーーー!!!! わぁ、ラノベの定番通り、耳がピコピコ動いてるよ!!!
尻尾も揺れてるし・・・ うふふw
『海渡さん、ケモ耳に集中している所、申し訳ないのですが、ここにはあと2名借金奴隷が居るようですが、どうやら部位欠損をしていて、体調もかなり悪い状態のようです。
このままだと、借金が増える一方になりそうですが、最悪死ぬ可能性もあるようです。』
と智恵子さん情報が入る。
『なるほど、そこ人達は、どう言う人なの?悪い人じゃない?』
と聞くと、
『多分、元は冒険者だったようです。その2人とここに居るケモ耳の3人パーティーを組んでいたみたいですね。おそらく何らかの依頼で魔物にやられたんだと思います。』
との事。
「初めまして、カイトと申します。冒険者兼『さえじま商会』と言う商会をやっておりまして、今日はこちらの王都に出す店で真面目に働いてくれる人を探しに来ました。
店は、2つ予定しております。1つは、大衆浴場・・・つまりお風呂屋さんですね。水の精霊王ラピスが出してくれた温泉の店員と、後に作るカフェの店員を募集しております。
あと、場合によっては、航空部門で働いて貰う事もありえます。
最初の数週間は、本店の方で、接客等の訓練をして貰いますが、基本はここで働いて貰う予定です。労働条件は1日基本8時間。定休日が毎週火曜、年に数回お休みがあり、夏と冬にはボーナスが出ます。
また、こちらでは難しいですが、本店やワンスロット王国王都支店等では、託児ルームもあります。支店数は、ワンスロット王国内73支店あります。
一応、従業員宿舎も用意する予定でおります。希望の方は入れるようにします。
まずは、何かご質問あれば、何でもお聞き下さい。」
と淀みなく説明した。
すると、1名が手を上げ、
「あのぉ~、航空部門って何でしょうか?」
と質問。
「ああ、航空部門と言うのは、当方で開発した空を飛ぶ魔道具・・・飛行機と言うのがありまして、これのパイロット・・・つまり操縦をする人ですね。
ここ、コーデリア王国とワンスロット王国のトリスターやワンスロット王国王都等へ定期便を出す予定になっております。
絶界の森の向こうのトリスターまでは、飛行機を使うと、1時間ぐらいの距離になります。」
と言うと、みんなが驚いていた。
そこで、ドロスさんも口を挟む。
「私も前に乗ったが、滅茶苦茶早くて安全だった。乗り心地も馬車と比較にならないし。」
おいおい・・・ドロスさんったらw 前にメッチャ飛行機怖がってたよね!?ww
「他にご質問は?」
と聞くと、1名が手を上げ、
「あの、カフェって何ですか?」
と聞かれた。
「ああ、馴染みが無い言葉だったかも知れませんね。お茶等の飲み物や、甘いお菓子、スイーツと呼んでますが、これを店の中で出したり、持ち帰りを販売するお店ですね。」
とスイーツの見本として、シュークリームを人数分取り出して渡し、食べさせてみた。
「「「「美味しい!!!」」」」
と全員が絶叫w
「これがシュークリームと言う名前のスイーツです。他にも色々な種類があります。」
1名が手を上げたので、質問を聞くと、
「あの、私は、この子の母親なのですが、2人一緒に働く事は可能でしょうか?」
と7歳ぐらいエルフの女の子の両肩に手を置き、聞いてきた。
「はい、親子は勿論一緒の場所に居られる様にしてます。但し、12歳未満は、託児ルームで預かったり、就業支援プログラムに参加して貰ったりする感じですね。お子さんの歳はおいくつですか?」
と聞くと、8歳らしい。なるほど、エルフの成長って、遅いのかな?
「なるほど、では直ぐに店舗等で働くのではなく、必要な文字や計算を学習したりして、他の小さい子の面倒を見たりする感じでの労働になるかもです。親子用の施設はここに現在ないので、そちらに差し支え無ければ、その子が12歳になるまでは、トリスターの方で働いて貰う感じなるかと思いますが、問題ないでしょうか?」
と聞くと、親子一緒に暮らせるのであれば、大丈夫との事だった。
「他に何でも良いです、ご質問ありませんか?」
と聞くと、誰も居なかった。
「では、こちらから、全員に2つ質問します。銘々答えて下さい。1つは、何故借金を負ったか? 2つ目は、当方の商会で働く気はあるか? です。特に強制して働かせる気はありませんので。」
と言うと、端から順に回答していく。
約半数が、自分又は家族が病気や怪我をした際の治療費の為。あとは事業に失敗したり騙されたりしたのが3名、働き口が見つからず借金が出来たのが3名、冒険者だったが、依頼を続けて失敗して罰則金の為が2名。
ケモ耳は、討伐任務の失敗とその際のパーティーメンバーの治療費の為だった。
そして全員、働きたいと言って居た。
「えっと、ケモ耳の方・・・あ、獣人の方のパーティーメンバーが2名、ここに居ますよね?
部位欠損している様でかなり病状が悪化しているようですが、その2名も一緒に引き取れますか?」
とゲロルトの方を向いて聞いた。
「え?良くご存知で・・・。
しかし、ここに出さなかったのは、とても働ける様な状態でなく、欠損部分が手や足や容姿等でして・・・」
と表情を曇らせるゲロルトさん。
「でも、そのまま放って置くと、このままじゃあ、亡くなってしまいますよ?
うちで面倒をみさせて貰えませんかね?」
と海渡が言うと、悲しげな顔をしていたケモ耳が尻尾をブンブン振って目をキラキラさせて喜んでいた。
パーティーメンバー想いな人なんだろう。
「確かに仰る通りですな・・・。一応お見苦しいかと想いますが、こちらに連れて参ります。」
とゲロルトさんが従業員に指示を出した。
そうして連れて来られた2人は、本当に悲惨な状況だった。
1人は右手が肘の先から無くなっていて、片目も抉られたように無くなっていて、顔に鋭い爪の後が3本走っていた。左手は指が3本無くなっている。尻尾は途中で千切れていた。
顔色も悪く、痩せていて、変な咳をしている。
もう1人はもっと酷い。
片腕、片足が無くなっていて、顔も肉をえぐられていて、引き攣っている。
こちらも変な咳をしている。
『智恵子さん、この2人の病状って何?』
と聞くと、毒と怪我からの感染症による物との事。
『毒は魔物の毒?感染症と言う事はばい菌とかウィルス性かな?』
『はい、スパイダー系の毒にやられたみたいですね。更に体力の落ちた所で、ばい菌が骨に入り、内臓にも損傷が残ってます。かなり生きているのがギリギリに近い状態ですね。元々体力のある獣人だから保ってる状態ですね。』
との事だった。
『俺だったら、治せる?』
と聞くと、
『ええ。海渡さんなら、バッチリ大丈夫ですねw でも早めに治療しないと、かなり危険な状態です。』
との事だった。
そこで、海渡は2人に軽く商会の仕事内容等を説明し、もし働ける状態になったら、働く気があるかを聞いた。
2人とも、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、動ける様になれば、一生懸命働きます!と弱々しく返事をしていた。
かなり諦めている様子。最初のケモ耳も目に涙を溜めていた。
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