第230話
「さあ、ここだよ。」
と海渡とフェリンシアの方に振り向く。
「いや・・・ちょっと待って下さいね。ドロスさん、ここってまさか、謁見の間ですかね?」
と聞くと、
「うん、良く分かったね。そうだよ。さ、みんなが待ってるからね?
大丈夫、今日はそんなに人居ないからねw」
と素早く、海渡とフェリンシアの後方から間に回り込み、両手で海渡とフェリンシアの肩をガッシリと抱え込まれ、半ば強引に中へと連れ込まれた。
謁見の間の扉が両側へと開き、中に入ると、両側に、100人づつエルフやドワーフが並んでいた。
「マジかぁ・・・」
と呟きつつ、観念してしまう海渡。
「陛下、小さき英雄達をお連れしました。」
とドロスさんが、壇上の王座に座る見た目がドロスさんとそっくりで、若干年上に見えるエルフへと礼をした。
王座の横には、別途席が設けられていて、ワンスロット王国の王様が座り、その後ろには、大臣のワリスさんと近衛騎士団の団長のアーメイドさんが控えている。
肩をガッツリ掴まれているので、どうして良いのか判らず、困惑し、硬直している海渡とフェリンシア。
しょうがないので、頭だけでも下げる、海渡。
「おお!その方らが、噂に聞く英雄達か。ああ、別に畏まる必要はないよ? 他の国と違って、うちは割とみんなそこら辺にはあまり拘らないから、普段通りでw」
とエルフの王様。
「そうですか、ではお言葉に甘えて。初めまして。冒険者のカイトです。ドロスさんの右隣が、相棒のフェリンシアです。」
と自己紹介をし、軽く頭を下げた。
すると、珍しく自主的に、
「初めまして。フェリンシアです。」
と頭を下げていた。
「カイト君はワイバーンを10匹? フェリンシアさんは7匹やっつけたらしいね。 凄いね!! 君達。」
とご機嫌なエルフの王様。
そこで、海渡が補足する。
「私の方は、ワイバーン9匹にブラック・ワイバーンが1匹の構成でした。しかし、今回のワイバーンの事でお知らせしておかねばならない事がありまして・・・。
今ここで言っても大丈夫でしょうか?」
と言うと、
「ほう、何にそのブラック・ワイバーンって言うのは? なんか強そうな名前だね? ふむ、気になる事があるなら、この場で言って貰って構わない。」
と王様。
「ブラック・ワイバーンと言うのは、ワイバーンの亜種で、体が黒く、全体的に2周り程デカい奴でした。やっかいなのは、耐物理攻撃と耐魔法攻撃を備えていて、普通のワイバーンであれば貫通する攻撃でも打撃程度にしかならない感じでした。
体感的にはワイバーンの1.5倍から2倍程の強さかもしれません。まあ、それは兎も角、こいつらを倒した後に妙な称号・・・つまり人が関わっている事を示唆する称号が付きまして。
で、フェリンシアからの話と総合すると、どうやら自然にやってきたワイバーン達では無いらしいと言う事です。
フェリンシアの方のワイバーンは東から来たらしい・・・つまり東にあって、ワンスロット王国とコーデリア王国に敵意を持っている国が関与してる可能性が大です。」
と説明した。
「なんと!そんな魔物を奴らは操ったと言うのか!!」
と驚くエルフの王様。
そこで、海渡自身も不思議に思い、
『ねえ、智恵子さん、魔物を操ったりとか出来る物なの? 特に今回のワイバーンの様なのを。』
と聞いてみると、
『はい、今回のワイバーンはご察しの通り、ゲルハルト帝国が放った事で間違い無いようですね。方法ですが、幾つか考えられます。
1つ目は、卵から育成して親として誤認させる方法。
2つ目は、何らかの方法で忍びより、見合った魔力で隷属の印の付与を行い、従属させる方法。
3つ目は、魔道具による隷属の首輪等を使う方法。
4つ目は、魔道具によって好む音波を出して引き寄せる方法。
となりますが、今回のは2の可能性が高いかと思います。』
『なるほど、ありがとう!』
「はい、方法は幾つかありますが、可能ですね。全部を操らなくても、ボスだけ操れば、群れ全体を動かせますし。
しかし、来年の件を考えると、少し対策を考える必要があるかも知れませんね。
少し前に絶界の森の偵察依頼のついでに、東の端まで行ったのですが、他に比べもの凄い数の魔物がいました。
もしかすると、何か魔物を使って更なる攻撃を仕掛けて来る可能性もありますね。
あの時は、次の予定もあって、余り時間が無かったのと、東側と言う事で、逆にこちらが察知してる事を知られない為にも、間引きも何もしなかったのですが・・・。」
と説明する。
「なるほどねぇ~。しかし、話せば話すほど、君らは凄いね! 水の精霊王の加護まで持っているし、まるでお伽噺から飛び出して来た主人公の様な子達だねww ヘンリオットやドロスやサンドラやサチー達が騒ぐのも理解出来るよww」
とエルフの王様。
「で、今回の褒美と言うか、寧ろ救って頂いたお礼なんだけど、こちらのワンスロット国王陛下にもお聞きすると、爵位や領地は寧ろ足枷になって、自由を奪う事になると聞いているし、何か望みがあれば、言って貰えれば、出来る限り叶えるつもりだけど、何かあるかい?」
と王様。
おお!これはナイスなタイミングかもw
「あのぉ~、では3つ程あるのですが、宜しいでしょうか?」
と海渡が言うと、
「おお!遠慮無く、言ってみて欲しい。」
との事なので、言うだけ言ってみた。
「1つは、稲作に適した土地がありまして、稲作をワンスロット王国でも広めたいと思っております。つきましては、稲作を伝授してくれる方を何年か派遣して頂けないかと。
2つ目は、同じく醤油をワンスロット王国でも作りたいのです。しかし麹の問題等もありますので、麹とそれを伝授してくれる方を、同じく何年か派遣して頂けないかと。
最後は、私もフェリンシアも、刀や剣を使っておりますが、私のは、父の使っていた形見の物なので、この体のサイズに合わない事が問題でして。
なので、鍛冶と言えばドワーフ。ドワーフの名工に私たち2人の刀を打って頂きたくて。なので、何方かをご紹介頂ければと。」
と言うと、
「はっはっは!!!! 何だ、どれも大したことじゃないじゃないかw 欲がないなぁw 良い刀を渡せではなく、名工を紹介しろかw 稲作だって、自分と言うより他の為でもあるんだろ?」
と笑う王様。
「あ、いえいえ、欲と言えば食欲ですかねw しかし、稲作のノウハウを物にするのは大変ですよ!? 水加減一つで味も大きく変わりますし、コーデリア王国の様な美味しいお米を作るのは、大変ですよ? 味噌や醤油も麹だけでなく、かき混ぜ方や管理等も大変ですし。
どれも一朝一夕では成し得ない、大変な事ですからね。 しかも、私もフェリンシアもコーデリアの料理は大好きですからねwww」
と海渡が力説する。
「はっはっはっはっは!!!! 面白いよ! いやぁ~本当に面白いよ!カイト君ww 君本当に6歳かい? よくそこまで知ってるねぇ!?
そうなんだよね。稲作も醤油や味噌もすぐに美味しい味になる訳じゃないんだよね。
判ってるじゃないかww まあ、我が国から輸出出来れば良いんだけど、人口的な問題や作付面積の問題で、あまり増産出来る訳でも無いし、逆に天候不順とかで不作の時もあるから、そちらでも作って貰えれば、何かの際には
助けて貰えるだろう。うん、全部こちらで手配するよ!! 鍛冶職人の紹介だが、誰が良いのかな? そうか、君は刀を使うから・・・となると刀鍛冶だな。判った!これも紹介状を書くから後で渡すよ。
あと、君の願いって、余りにも成し遂げた事と見合ってないから・・・2人には『コーデリアの友』勲章を授与させて貰うよ。」
と王様が言うと、
周りに居た貴族??(エルフやドワーフ)達から一斉に「「「「うぉーーー!」」」」響めきと惜しみない拍手が鳴り響いたのだった。
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