第229話
海渡は、ゲートでコーデリア王国の飛行場の格納庫へと出た。
まだ、フェリンシアは交戦中だったが、すでに5体は反応が無かったので、残る2体だけの様だ。
格納庫から、フェリンシアの側まで気配を消して空を飛んで行く。
「フェリンシア、お待たせ!」
と声を掛けると、
「ああ、海渡。もう向こうは終わっちゃったんですね?」
と嬉々としながら2匹を相手にしているフェリンシアが答える。
1匹に向かっては、海渡が使っていたアイスホーミングミサイルを10発放ち、その間に二刀流でもう1匹に連続で斬撃の嵐をお見舞いしている。
その姿は、さながら舞姫の様で、素晴らしい。
正に、『攻めは最大の防御』を地で行く感じ。
ワイバーンはブレスを吐き出す隙さえ与えられず、爪や尻尾で応戦しようと試みるが、攻撃スピードの違いは明白で、話にならない。
そして、72撃目で首が落ちる。
向こう側ではアイスホーミングミサイルに被弾したワイバーンが墜落し、虫の息だった。
すぐに、超高速回転アイスカッターを放って、首を飛ばして、これも殲滅。
フェリンシアは、鼻歌交じりに、やっつけたワイバーンの死骸をアイテムボックスに収納している。
「ふぅ~♪ 終わりましたーーww」
とご満悦のフェリンシアが頬を少し赤らめて、息を整えていた。
可愛い顔や白いシャツの所々にワイバーンの血が飛び散っていて、軽くホラーだったりする。
美少女なのだが、やってる事はエグいなwww と内心苦笑する海渡。
「お疲れ様。フェリンシアも、ワイバーンは余裕だったみたいだね。」
と褒めると、
「ええ、海渡との朝練の成果か、割と楽勝でした。」
と胸を張っていた。
海渡はフェリンシアにクリーンをかけてさせてから、北門へと向かうと、城壁の上から兵士の歓声に迎えられた。
「「「すげーな、お嬢ちゃん!!! ありがとう!!!」」」
と興奮しながら感謝と賞賛を叫んでいた。
2人は冒険者ギルドカードを見せて、場内へと入ると、馬車がやってきて、有無を言わさず乗せられ、王城へと向かう事になってしまった。
いつもの屋台の前を通り過ぎる結果となって、海渡もフェリンシアも凄く悲しい気持ちになっていたのだった。
通り過ぎる屋台を目で追いながら、
「ところで、フェリンシア。このワイバーンなんだけどね、どうやらゲルハルト帝国が放った可能性が高いみたいだよ。」
と言うと、
「え?そうなんですか? 確かに言われてみれば、海渡の方の10匹はトリスター方面に向かってましたよね。なるほど。そういう事ですか。」
と驚きつつも、納得していた。
「何でそう思ったかと言うとね、倒した後に、変な称号が付いたんだよね。『謀略を阻む者』って言う・・・。で、謀略を立てた奴って誰って事を考えたんだけど、フェリンシアが東側から~~ って言ってたでしょ?あれでピーンと来た感じ。」
と海渡が補足した。
「なるほど、それなら辻褄が合いますね。」
とフェリンシア。
もしかすると・・・最初に倒したワイバーンも奴らが放ったのかもしれないなぁ・・・と内心思う海渡であった。
一方、2人を乗せた馬車は、コーデリア王国の王城の内門を通り、内部の庭園を通って、ロータリーの奥にある玄関の前で止まった。
馬車のドアが外から開けられ、そこには、ドロスさん(王太子)が待ち受けていた。
「おお!2人とも、久しぶり! いやぁ~今回は本当に世話になったね。ありがとう。親父も待ち構えてるから、悪いけどついて来てくれる?」
とドロスさん。
「ああ、お久しぶりですね。いやぁ~、先日は王太子殿下と聞いて、ビックリしましたよwww」
と海渡が普段と変わらず声を掛けて・・・あ。失敗した。
もっと丁寧に喋るべきだったか?と焦り、
「あ、申し訳ありません、王太子殿下に失礼な喋り方をしてしまいまして・・・。」
と頭を下げると、
「ああ、そんなのは気にしなくて良いよww なんせ、この国を滅亡から救ってくれた2人だしw」
と言ってくれた。
まあ、この際良いかw と、
「じゃあ、お言葉に甘えて、普段通りで良いでしょうかね? 何か調子が狂うのでw」
と言うと、
「うんうん、構わないよw 僕の方も急に改まれると、むず痒いし。」
と長い廊下を歩きながら、笑ってた。
コーデリア王国の王城は、白を基調にしたとても綺麗な城で、床は大理石を敷き詰められていて、照明を反射していた。
壁には肖像画や調度品が品良く飾ってあり、ギリシャの宮殿の様な彫刻をなされた石材から削り出した白い柱が一定間隔で立ち並んでいる。
「それにしても、凄く綺麗で品のあるお城ですね。柱の1本1本まで見事な彫刻が、寸分違わずになされていて、いやぁ~圧倒的で幾何学的な美しさを醸していますね。」
と感心していると、
「いやぁ~、相変わらずカイト君は5歳児とは思えない、発想と言うか発言をするよねww」
と言うので、
「あ、失礼な!! これでも先日6歳になったんですよ?」
と笑った。
「おお、そうか!それはおめでとう! なるほど、6歳かww まあ、エルフである私からすると、誤差の範疇なんだがなw」
と更に笑っていた。
やがて、衛兵2人が両脇に立つ、大きな扉の前に辿り着いたのであった。
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