第176話
裁縫部隊の一件が終わり、海渡は地下工房で、飛行機の組立を再開する。
3時間かけて、10機が完成した。(内装を除く)
あとは、シートのクッションやベルトが上がればOKだな。
仕事が無くなった裁縫部隊に、ドンドンと仕事を振る海渡であった。
1階に上がって、ヨーコさん、ステーシアさんに、相談する。
「ヨーコさん達って、今、忙しいよね?」
と聞くと、
「ええ、まあやる事は多いですからね。何かありましたか?」
と聞かれたので、
「幾つかあるんだけど、1つは王都以外の都市の支店をそろそろ動かないとヤバいって話や、完全に寒くなる前に一度サルド共和国にも行きたいんだよね。」
と言うと、
「そうですね。王都以外も早急に何とかしないとダメなんですが、なかなか人材確保が追い付かないんですよね。
ところで、サルド共和国は何か新規開拓するんですか?」
と聞かれた。
「えっと・・・1つはコーヒーを仕入れに行きたいっていう理由があるんだよね。」
と答えると、
「何ですか?そのコーヒーって?」
と馴染みの無い名前で『?』が浮かぶ顔をしている。
「植物から採れる実を干して、乾燥した物を火で炒って、粉にしてお湯を通すと、滅茶滅茶ケーキや甘い物に合う、香りの高い美味しい飲み物になるんだよ。
そして、なによりも、温泉上がりには、冷やしたコーヒーミルクを飲むのが粋なんだよねww」
と答えると、
「カイト様がそこまで拘るコーヒーミルクとやらは、相当美味しいのでしょうね。」
と興味深々。
「まあコーヒーだけだと、苦みとかあるから、最初は苦手に思う人も居るんだけど、嵌まる飲み物だね。」
と力説する。
「なるほど、スイーツに合う飲み物だとすると、一考の余地有ですね。」
とヨーコさん。
「しかし、今は先に少しでも多くの都市で開店する事が重要だし、幸い店長候補は残り5名居るから、王都やトリスターからの物流に問題ある所に先に開店して塩と砂糖だけでも販売すべきだと思うんだよね。
塩と砂糖だけなら、店長を含め4人ぐらいで回せないかな? と思うんだけど。」
「そうですね、今は時空共有倉庫のお陰で、製造部門は集約出来てますし、4~5名居れば、支店の一部は回せるかと思えますね。」
とヨーコさんも同意する。
「真っ先に開けるべき都市って何処かな? もし、時間取れるなら、一緒に行かない?」
と海渡が誘う。
「都市3か所ぐらいに当たりを付けて、先にオープンする準備だけでもかなり違うんだよね。同行するしないは別として、幾つか都市をピックアップして貰える? 最悪俺とフェリンシアで行って、拠点に後でヨーコさんを呼ぶと言う手もあるし。」
と言うと、
「ああ、そうですね。その手もありましたねw まあトリスターはステーシアさんが居れば、当面は何とかなるかな?」
とニヤリ。
「まあ、連日かなりの物を作ったし、ちょっと違う所に行きたいってのもあるんだけどね。明日の朝にでも出発したと思ってるだ。」
と言うと、
「判りました。3つぐらいピックアップしてみます。少々お待ち下さい。」
と書類を出して、チェックし始めた。
「1つ目は、都市サルバドル、もう1つは都市エリンガ、3つ目は都市テリラスが良いと思います。理由は、王都、トリスターや沿岸部と離れている為、真っ先に塩が枯渇する可能性が高い所です。」
とヨーコさん。
『知恵子さん、都市サルバドル、都市エリンガ、都市テリラスの位置って大体判る?』
『都市サルバドルはここから大体、南南東に750km 都市エリンガは南南西に920km 都市テリラスは南に3800kmですね。私の判断では、都市テリラス、都市エリンガ、都市サルバドルの順番をお勧めします。』
『判った、ありがとう!』
「なるほど、じゃあ、都市テリラス、都市エリンガ、都市サルバドルの順番でやるよ。一度、フェリンシアとで先に行って、呼ぶ感じで行く? 多分片道4時間は掛からないけど、3時間40分は掛かるね。」
「じゃあ、御呼び頂ける感じでお願いして良いでしょうかね?」
「着きそうになったら連絡するから、格納庫に来ておいてくれる?」
「了解しました。じゃあ、オスカーさんにも連絡入れたり、色々準備しておきますね。」
「判った。こちらも、王様とアルマーさんに連絡入れるよ。」
とヨーコさんと別れ、アルマーさんに連絡を入れる。
「どうもカイトです。ご無沙汰しております。」
「おお、カイト君か、久しぶりだね。なんか色々忙しいみたいだね。」
「はい、お陰様でw ところで、王都以外の都市も最低、塩と砂糖だけでも何とかしようと思ってまして。都市テリラス、都市エリンガ、都市サルバドルの順で支店を開く準備で明日発とうと思ってます。
で、ご相談なんですが、今、飛行機の機体にトリスターの紋章が入ってますが、あれを消した方が良いか、消さない方が良いのかをお聞きしたかったんです。」
と聞くと、
「ああ、そうか・・・トリスター家の者が乗ってないが、君に上げたメダルあるだろ? あれはトリスター家が後ろ盾になっている と言う意味だから、取り合えず、紋章があっても、問題は無い。
寧ろ、付いていた方が、衛兵共に問題が生じにくいと思うぞ。
まあどちらでも良いんだがなw 王様から書類も貰ってるだろ? この件に関する出店と空港の件の全権委任の書類。
あれを利用すれば、王家も後ろ盾って事になるしwwww
まあ、テリラス子爵、サルバドル伯爵は問題無い。非常に出来た方が当主だから。
問題はエリンガ伯爵だな。あそこは要注意だよ。
最悪の展開だと、店を出すのを断念すべきかも知れないね・・・。」
と嫌な情報が・・・。
「なるほど、今の話だと、エリンガ伯爵はドラーツ公爵の様な印象を受けたんですが、そんな感じでしょうか?」
と聞くと、
「ああ、ドラーツ公爵をもっと小者にした感じだな、とにかく横柄で嫌な奴だよ。」
とアルマーさん。
「わぁ・・・いきなりエリンガに行きたくなくなりましたよ。ついでに空港も作りながら進もうかと思ってたんだけどなぁ・・・」
と海渡がぼやくと、
「まあ、予言するが、エリンガ伯爵は確実に飛行機取り上げようとしてくるぞ?」
と・・・。
「それ、実力行使で潰しちゃったらダメですかね?」
と聞くと、
アルマーさん、大爆笑。
「いやぁ~、それはそれで面白いなww
一応王国の法律では、無法に貴族や王族が庶民や他の貴族の持ち物を取り上げる事は違法なんだよね。
そこら辺を上手く使えば、あるいはイケるか?」
「なるほど。まあ、一応空港の事もあるので、王様にも連絡して聞いてみようとは思ってたんですが、ちょっとそこら辺の所を聞いてみますよ。」
と答えた。
「うむ。まあカイト君なら大丈夫だと思うけど、注意してね! 何かあったらすぐに連絡してくれよ?」
とアルマーさん。
「ありがとうございます。気を付けますね。では・・・」
と電話を切る。
さて、嫌な情報が来たけどよ・・・次は王様だな。
「もしもし、王様じゃよ?」
「ププーーww、カイトです。何て出方してるんですかwww 思わず笑ってしまったじゃないですかw」
「おお、カイト君か! 久しぶりだな。全然顔を見せないから、退屈しておったんじゃよ。」
「すみません、色々と店やカフェのオープンとか続いてて、バタバタしておりました。暇なら、良い物が王都支店にありますよ? 娯楽品なんですが、リバーシと言う対戦型のボードゲームと、トランプと言う、4~5人で遊べる物を先日売り出しました。」
「ほう!! それはすぐに、買いにいかせねば。」
と王様。
「で、本題なのですが、やっと王都支店も軌道に乗り出したので、他の都市でも、取り急ぎ、塩と砂糖だけでも販売を始めようかと思ってまして。」
と言うと、
「おお!そうか!! それはありがたい。民が苦しんでおるから何とか早目に頼むぞ! こちらも出来る援助は惜しまん。」
と王様。
「取り急ぎ、一番物流が届いて無さそうな、3都市をピックアップして、優先度を上げて着手しようとしています。取り合えず、都市テリラス、都市エリンガ、都市サルバドルの順で行く予定なんですがね・・・
エリンガ伯爵に関する、嫌な噂を聞きつけまして。行けば確実に、ドラーツ公爵の時の様に手を出して来るだろう・・・下手しなくとも、飛行機を取り上げようと可能性が高いと言う話がありまして。」
と言うと、
「ああ、エリンガ伯爵か、あれは本当にダメだよな・・・、何か正当な理由があれば、お取り潰しにして、他の貴族に任せるんだがねぇ。カイト君、君行って潰してきてくれない?」
と軽く言われたよwww
「そんな、子供にパンでも買いに行かせるかの様な軽さでwww
で、ヤル気はあるんですが、どの程度までやっちゃって良いでしょうか?
逆に反逆罪とか不敬罪とかになると、堪ったもんじゃないですし。」
と聞くと、
「君に、空港と塩や砂糖の販売に関する全都市への全権委任状を渡したでしょ? あれは王宮・・・いや王家が後ろ盾って意味でもあるんだよ。
だから君は、一般人でありながら、該当する件に関しては、王様の代理人な訳だよ。
だから、相当な事やっても・・・そうだね、奴の足や手の1~2本落としちゃっても平気だよw どうせ、奴から仕掛けて来るから。 そしたら、ワシに連絡してくれれば、サクっと処分するからねw」
との事。
「あ、あと空港の件ですが、今回の3都市にも、空港を城壁の外に作ろうと思ってまして、その場合って、どうなんでしょう?そこの領主にやはりお伺いを立てるべきですよね?」
と気になっている事を聞いたら、
「一応、空港の全権委任には、王国全土の何処にでも建設する事を許可してるから、本来は問題無いのだが、儀礼的には、一応声を掛けるべきだね。
だけど、奴の所は、サクッと作って、向うから絡んで来た方が面白いと思うなw」
と悪い笑みの漂う回答www
「王様ーー、悪ですねwww そう言うノリも好きですけどw」
と海渡も乗るw
「ハッハッハッハ!」と王様爆笑。
「フフフフフ」と海渡も黒く笑う。
「ありがとうございました。じゃあ、また後日、ご報告致します。ではまた・・・」
「おう、気をつけろよーww じゃあな」
と通信を切った。
これは、これで盛り上がりそうですなww と心の中でほくそ笑む悪い海渡だった。
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