第175話


屋敷に戻ると10時半。

既に棟梁達は、作業場を第二地下工房へ移し、着手している。


と言う事で、第一地下工房の完成したセットと王都用の宿舎をアイテムボックスに収納し、空港のロビーを建設する。


大して凝らない予定なので、滑走路の面した部分だけをガラス張り、反対側は、窓と入り口と看板。


1階は待合室と、運賃の支払い受付、2階は事務所と待合室、エスカレーターを配備する。


あと、必要になるかもしれないので、管制タワーを高さ20mで作っておいた。


大した作りではないので、サクサク同じ物を2つ作る。


残り管制タワー1個の所で、昼食の時間となっていた。


「やっべー12時過ぎちゃってるよ・・・」

と慌てて食堂へ行くと、フェリンシアが待っててくれた。


「ごめん、遅れた・・・」

と謝ると、


「大丈夫ですよ。海渡も忙しいだから、しょうがないです。」

と笑って許してくれた。


ご飯を食べながら、

「空港のロビーと管制タワーを作ってたんだ。」

と説明する。


「何となく、ロビーは待合室的な物と理解出来ますが、管制タワーって何ですか?」

と言われ、


「うーん、そうだね。今の所は多分使わないと思うんだけど、先々で使う可能性があるので、作ったんだよ。

例えば、飛行機が滑走路に一杯いると、着陸出来ないよね。それを事前に他の飛行機に教えたり、順番を管理したりする所かな。」

と説明した。


「なるほど、整理係みたいな感じですねw」

と。


「そうだね。まだ今は魔道具が開発出来てないから、活用出来るようになるのは、まだまだ先かな・・・」



食事を終えて、フェリンシアと別れ、第一地下工房で最後の管制タワーを完成させる。


管制タワーには、取り合えず、監視用にレーダーを取り付けた。

だって、何もないと、ただの火の見櫓だもんねw


これも棟梁に仕上げして貰う感じだな。



と言う事で、飛行機を増産する事とした。


まあ、既に量産は何時でも出来る様にしてあるので、サクサク機体やエンジン、パーツ類をTFG形成マシンで機体を10機分作っていく。


コクピットや後部座席の窓ガラスも10機分、作成する。


魔動サーボや必要な部品も作成する。


シートベルトのバックルや留め具等を量産し、裁縫部隊へと製法を頼む。

更にシートのクッションも。


裁縫部隊から、

「えーー、またですか!」

と突っ込まれたんだけど、


「今度はそんなに急ぎではないから、許してね。」

と頭を下げる。


うむ。確かに裁縫部隊だけが、自動化が遅れてるんだよね。

現在、比率で言うと、スタンダードテント4、最上級トレント繊維バージョンテント1、マジックバッグ&マジックバックパック&マジックポーチ5の割合を30名で切り盛りしているらしい。


一番バックオーダーを抱え込み易いのが、この部門。


なので、特注を主な内容に変更して、ある程度テントやマジックバッグの生産を自動化する事を検討する。


これらを一応、裁縫部隊に打診すると、滅茶滅茶喜ばれた。


やはり、ミシンが出来たとは言え、手作業の連続で、自分達のチームだけが、置いてきぼりになってる感じがしていたらしい。


「あー、なんか気が回らずに、ごめんなさい。」

と頭を下げ、また地下工房へと戻る。


と言う事で、取り合えず飛行機を一時中断www



さて、自動化する時の、最大の問題は縫い付け作業となる。

そこで、生地のロールから、各パーツへ裁断し、その縫い代同士を融着出来ないか試す事にした。


魔法の最大の特徴はイメージである。つまりイメージ次第で何でも可能な筈。

融着は今までに色んな物で試して成果を上げてるから、生地同士でも出来る筈と思っている。


試しに生地を魔法で融着させてみた。


結果は、半分成功、半分失敗。


失敗は融着力が弱いので、引っ張ると切れるどちらかが・・・。

なので、生地と生地の繊維が、あたかも元々同じ繊維の様に絡まって、更に融着するイメージで、再度試してた。


今度は成功!

ガッチリ絡みあって、少々引っ張っても破けない。


よしっと。これで方向性が決まった。

筐体は多少大きくなるが、まあ良いだろう。


魔動CPUから指定したサイズに生地をカットする裁断処理をするパーツを魔動リンクで接続。


魔動CPUから指定された位置にパーツを並べ、繊維専門の溶着を行うパーツを魔動リンクで接続。


魔動CPUから指定されたバックル等の指定部品に紐を通すパーツを魔動リンクで接続。


魔動CPUから指定されたバックル等が付いた紐を指定された場所に、繊維専門の溶着を行うパーツを魔動リンクで接続。


魔動CPUから指定された場所へ、スタンプを押すパーツを魔動リンクで接続。


魔動CPUから指定された部分(又は全体)へ、魔法陣スタンプを魔力を込めて押すパーツを魔動リンクで接続。


魔動CPUから指定されたように、畳むパーツを魔動リンクで接続。


魔動CPUにプログラムやデータを読み込む水晶記憶体を接続。



これを30機同じ様に作成した。

名付けて自動裁断縫製機かな。


水晶記憶体にそれぞれ、スタンダードテント用、最上級トレント繊維バージョンテント、マジックバッグ、マジックバックパック、マジックポーチのプログラムとデータを入れる。


色々入れ替えれるように、各水晶記憶体は20個づつコピーしておいた。


プログラムの指定通りに各スロットへ生地やパーツ類が入ったマジック木箱をセットする必要があるので、そこは各種類ごとに説明書を書いた。


後は受け用のマジック木箱を取り付け、各ラインの動作チェック。


「よし、実験開始!」

とラインをそれぞれ起動する。


「うーん・・・手縫いに比べ、早いな・・・」

工程の多いテントでも10分で1個完成する。


マジックバッグとマジックバックパックは約3分、マジックポーチに至っては・・・1分だよ。


「これ・・・喜ばれる反面、恨み言を言われそうな気配が・・・」

と少し冷や汗を流す海渡。


ついでに、魔動ミシンの別バージョンで魔動溶着ミシンを作成してみる。


針の代わりに、上と下で挟んだ部分に、先ほどの繊維用の溶着を施すパーツに置き換える。


テストすると、完璧に成功している。

スピードも可動部部が無いので、早く出来る。

特注にはこの魔動溶着ミシンを使ってもらおう。


と言う事で、この魔動溶着ミシンも30台作成。


予定した物以上が完成したので、縫製部隊に完成したラインを持って行く。

内心、若干ビクビクする・・・。


裁縫部隊の全員を前に、取説を配り、各スロットに取り付ける素材を間違えないように、注意を促し、動作を見て貰う。


サクサク出来上がるテントやマジックバック等をみて・・・泣いてた・・・喜びながらも。


「あー・・・何かごめんなさい。もっと早く出来れば良かったんだけど、良い訳じゃないけど、これが作れるようになったのが、数日前なんだよ。だから許してね。」

すると、1人がおずおずと手を上げ、聞いて来た。


「もう全自動で出来ると言う事は、我々は要らないと言う事なんでしょうか?・・・クビなんでしょうか?」

と青褪めつつ聞いて来た。


「ああ、そんな事はないよ? 全部が全部これで出来る訳じゃないし、裁縫部隊は必須だよ。それに同じ様に作れるミシンも作ったから、特注品とかはこの魔動溶着ミシンを使ってくれればいいので。

但し、繊維物にしか使えないので注意してね。」


と魔動溶着ミシン30台も出した。

すると、ホッとした顔をされた。


「どうしようか、これ、製造部隊でラインの管理して貰って、こっちは特注品や少量生産の物を専門でやって貰った方が効率良いし、今までハードだった裁縫部隊も、少しは楽出来るよね?」

と聞くと、どちらでも良いとの事なので、


「じゃあ、ダスティンさんと話しあって決めてるよ。本当に今まで、作業を軽減出来ずに申し訳なかったです。」



この後、ダスティンさんと話し合って、自動裁断縫製機も製造部隊の管理下となった。




余談だが、後にこの縫い目のないシームレスなテントやバッグ等は、裁縫業界に衝撃と波紋を呼んだ。


手縫いしかありえなかった物が、ミシンの登場で、綺麗で丈夫な製法、仕上がり速度も格段に早いと、驚愕していたのだが、今度はシームレスである。


もう、手縫いでは勝てない・・・商売にならないと感じ、多くの裁縫に従事している者達は、『さえじま商会』へ魔動溶着ミシンの問い合わせを行う事になる。


結果、魔動溶着ミシンの製造ラインも作って、販売する事となるのだが、それはまた先の話である。

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