第132話

 異世界1ヵ月と13日目。


 明日は王都へ出発するので、こちらも数名連れて行きたい。

 最低でもヨーコさんには同席して欲しい。

 欲を言えば、オスカーさんも・・・。


 と、朝目覚めて朝練をやりながら考える。


 朝食を終え、ヨーコさん、オスカーさんに打診してみると、

「1泊2日ならなんとかなる・・・かな?」

と言う曖昧な返事。


「うーん・・・」

と唸ってしまうが、最悪ゲートを使う?かな。


「じゃあ、これならばどう? 一度、飛行機で一緒に王都まで行って貰って、必要性が出るまでは、ゲートでトリスターに戻って貰う。

 必要性が出来たら、急遽スポット的にゲートで王都に連れて来て、またトリスターに送る。

 最後は、申し訳ないけど、ゲートで王都に来てもらって、一緒に帰る。

 これなら、王都の入場ゲートに不備は残らない。」

と提案。


 更に、

「あと、店舗と王都組とで通信出来る魔道具作るよ。各チーフと店舗、屋敷、カフェに置いて、情報のやり取りが出来れば、かなり解決しない?」

と聞くと、それであれば、安心だ! と了解を貰った。


 なので、

「明日の朝から、オスカーさん、ヨーコさんは、王都に行くつもりで、準備しておいてね。」

とお願いした。



 と言う事で、現在また地下工房に籠り、通信魔道具を作成しているところ。


 さて、元の世界では電波だったが、これは水平線に隠れると衛星を使わない限り、通信が出来なくなる。


 王都とここトリスターでは、2600kmぐらいの距離があるらしい。

 その距離でも通信出来る様にするとなると、電波では、多分厳しいだろう。


 まず、ミスリルの超薄い板にマイク用とスピーカーの穴を開け、振動を受け取る超薄いトレント極薄膜(厚さ0.01mm)貼り付ける。

 その板に0~9までのボタンと通話ボタン、通話OFFボタンを作り、その裏にに小さい魔石の台座を3つ取り付けて魔法陣を描く。

 本体の番号Xへの着信要請を感知したら着信音鳴らす。

 通話ボタンで魔力リンクを張りる。

 魔力リンクからの受信音声をスピーカー板で振動させる。

 マイクから音声を拾いそれを魔力リンクで通信先に送る。

 通話OFFボタンで魔力リンクと音声の送受信を停止して待機する。

 待機状態で通話ボタンを1回押して相手先の番号5桁を押し通話ボタンを

 押されたら、該当番号へ着信要請を送る。

 通信距離は無制限。期間は起動から停止まで


 こんな感じか?

 本体Xの番号に00001を設定する。小さいホーン・ラビットの魔石を3つ付けた。


 同じものをあと2つ作り、それぞれ00002と00003と設定し、同じく魔石を3つつける。

 3台とも裏蓋のミスリル板を嵌めこみ、通話テストの準備が出来た。


 2台を起動し、待機状態にしてみる。


 00001から00002へかけてみる。呼び出し音がなってるね。


 一度切って、フェリンシアを探し、操作を説明してから庭にでて掛けてみる。


 繋がった!


「フェリンシア、聞こえる?」


「はい、聞こえますね。」


「うん、そっちの声も聞こえる。」


「じゃあ、一度切るね。」


 今度は、コーデリア王国の南門の傍にゲートで移動して、掛けてみる。


 ふふふ・・・繋がったw


「聞こえる?」


「はい。全然さっきと同じで聞こえてますよ。」


「じゃあ、一度切るね。」

と切って、屋敷に戻る。


「フェリンシアありがとう。成功したよ!」

と増産する事にする。


『知恵子さん、これ、ミスリルだけど、やっぱりこれもTFGで作ると凄かったりする?』


『はい、魔石の持ち時間が、10倍ぐらいになります。ホーン・ラビットの魔石を3つで通話し続けて5年ぐらいでしょうか?』


『ほう、凄いね!じゃあ、TFGで量産するわ』


 と言う事で、魔力リンク通信機用のラインを作成する。


 デザインは昭和の時代の薄型携帯風。

 ボタンはミスリル。


 形状データの水晶記憶体を取り付け、ミスリルインゴット用のスロットと、TKG用のトレント繊維のマジック木箱スロットと、ガチコンブ樹脂のタンクの取り付け口と、聖水のタンクの取り付け口、

 あとは、マギ鉱石のタンクの取り付け口を付ける。

 下には完成品が滑り落ちて受け取るマジック木箱の取り付け口。


 動かす前に、ラインの成型部分の魔法陣に手を加え、表面に自機の番号を1台1台ナンバリングして刻印を入れる様に変更した。

 電話番号を10桁に対応する為、一々刻印を手動で行うのは、きついだろうと言う配慮だ。

 まあ、魔石嵌めと魔法陣スタンプと裏蓋締めは手動なんだけどね。


 と言う事で、通信機の魔法陣も番号を10桁に拡張し、更に通話中専用の着信音も付加し、魔法陣スタンプをミスリル板で作成した。


 ラインを動かして、300個作ってラインを止める。ラインを一度止めても、最後のナンバーはちゃんと水晶記憶体に保持されるようにしている。


 10台だけ作り、パカパカと魔法陣のスタンプをおして魔石を嵌めながら裏蓋を閉める。


 丁度昼飯になったので、上に上がり、フェリンシア、各チーフと店の1階、2回、事務所、屋敷のキッチン、メイド長、オスカーさん、ヨーコさんへと通信機を渡す。

 一応、だれがどの番号かをメモをとりつつ・・・

 失敗したな。番号登録機能欲しいな・・・。

(そうすると、水晶記憶体も必要になるから、コスト掛かるか・・・。)と開発欲に諦めをつける。


「と言う事で、これが通信機になります!」

と胸を張って使用方法の説明開始。


 遠距離でも問題無く通話できると強調して説明。


 ここで、キランとオスカーさんの目が光る。


「これ、滅茶売れますよ!」と。


「一応、それを見越して、99億台までは使える様にしました。」

と宣言。


「で・・・幾らに設定しますか?」

とワクワク顔のオスカーさん。


「これ、一応ずーーっと通話してても10年持つらしいんだよね。つまり適度に使うともっと持つと。」

と説明すると、


「素晴らしい性能じゃないですか!でも買い直しが発生しないって事ですよね・・・」

と困り顔のオスカーさん。


「性能良すぎた? 今魔石を3にしてるから、1個に減らせば、通話しっぱなしで、3年かな。

 じゃあ、魔石1個に変更して、4年~最長でも5年で買い直しが発生する設定にするのは?」

と妥協案を出す。


「ふむ、つまり中の魔石が無くなるか、最長年数を超えると買い直しですか。良いんじゃないですかね?

 であれば、金貨30枚・・・いや、金貨50枚ぐらいかな?」と。


「えーー、金貨50枚(5000万円)っすか?ですか? いや、もっと安くした方が良いと思うけどなぁ・・・

 実はね、これ1年半か2年以内ぐらいに次のバージョン出す気なんですよ。そして、その次も2年ぐらいかな・・・絶対に持っていても、買い替えたくなるようなバージョンを出すよ?」と。


「なるほど、最初は少し安くだして、虜にした上で、慣れたユーザーが飛びつく次製品・・・悪ですねw」

と黒く笑うオスカーさん。


「そうですか、それなら話は別ですね。じゃあ、金貨5枚くらいにしますかw」

とオスカーさん。


「だね。それくらいが良いと思う。

 じゃあ、これ以降の物は制限を設けるようにするよ。」

と黒い会談を終えたのだった。



 あと、昼食時に調理にお願いして、機内食用のサンドイッチを40人前お弁当でお願いしておいた。


 頼むのが、ちょっと遅すぎたかな?

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